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合格と再告白

月日が流れ、合格発表の日。

オレは、自分の受験票を持って大学に向かう。


大学の門に見知った顔があった。

「よう、護」

そこに居たのは、隆弥さんだった。

そう、オレの第一志望校は、隆弥さんが通ってる大学。

「こんにちは。隆弥さん」

オレは、頭を下げる。

「受かってるといいな」

隆弥さんが、オレに声をかけてきた。

「はい」

「掲示板は、こっち」

隆弥さんが、案内をしてくれる。

オレは、隆弥さんの後を着いていく。


掲示板の前には、すでに凄い人混みだった。

オレは、掲示板を順に見ていく。

1069…1069……。

すると、目の前に1069の番号が飛び込んできた。

やった。

オレの顔は、徐々に綻ぶ。

「護、有ったのか?」

隆弥さんが、オレに聞いてきた。

「はい。これから、よろしくお願いします。先輩」

隆弥さんに向かって、頭を下げた。

「やめろ。俺等、そんな関係じゃないだろうが…。それより、詩織に連絡しなくていいのかよ」

そうだった。

オレは、携帯を取り出した。


“詩織へ

無事に合格した。

もう一度、告白したいから、授業が終わったら、校舎裏に来てくれ 護”


それだけ打って、送信した。

暫くすると、詩織からのメールが届いた。


“護へ

合格おめでとう。

授業が終わったら、すぐに行くね。

詩織”


と簡潔な言葉が並んでいた。

あいつ、今、授業中のはずだが……。

「詩織、喜んでただろう?」

オレの横に居る隆弥さんが言う。

「はい」

オレの返事に納得いったのか。

「じゃあ、俺いくな」

隆弥さんは、そう言って、校舎の方に向かって歩き出した。

授業中のはずの詩織が、教師の目を盗んでメールしてくるとは、思いもよらなかった。

オレは、大学の事務局に向かって歩き出した。



学校に戻って、担任に報告する。

「流石だな。水沢以来だからなぁ。まぁ、頑張れよ」

水沢って……。

「先生、その水沢って……」

聞き返すと。

「ああ、水沢隆弥と勝弥以来なんだよ。あの学校に行く奴は…。優基の兄貴達だがな。当の優基は、全然違うとこだが……」

やっぱり、そうなんだ。

隆弥さん達の事だったんだ。

「何だ、玉城。水沢の事知ってるんか?」

逆に聞き返され。

「知ってますよ。優基の家には、よく遊びに行ってましたから……」

優基をだしにして、誤魔化した。

そう、だって近い未来のお兄さん達とは、言えなかった。

「報告ご苦労さん。今日は、もう帰っていい」

担任が、片手を上げて、出ていけとばかりに手を振る。

「はい。失礼します」

オレは、そう言って職員室を出た。

時計を見ると丁度いい時間だった。

オレは、約束の場所へ向かった。



校舎裏に行くとまだ、詩織の姿は、無かった。

オレは、校舎に寄りかかりながら、詩織が来るのを待っていた。


これで、第一関門突破だ。

後は、卒業だけ。

出席日数が足らない事はないし、成績が悪いわけでもない。

どこにも落ち度はない。

このままいけば、普通に卒業できる。

そして……。

何て、考えていたら。


「護ー」

詩織が、駆け寄ってきた。

「詩織」

詩織に会えたことで、頬が緩むのがわかる。

「護。合格おめでとう」

詩織が、笑顔で言う。

顔を見て言われると余計実感する。

「ありがとう」

オレは、その笑顔を見つめた。

暫く、沈黙が訪れた。

そんな中、オレは口を開いた。

「詩織…」

オレは、気持ちを引き締め、真顔になる。

「うん…」

詩織も、オレにつられて、真顔になる。

「もう一度、告白させてくれるか?」

「…うん…」

詩織が、照れ臭そうに頷く。

「約一年前に君に一目惚れして、告白してから五ヶ月が過ぎたけど、詩織と居るだけで、オレは、幸せだ。これからも、オレの傍に居てください」

一言一言に想いを込めて言う。

「うん。こんな私だけど、傍に居させてください」

詩織が、笑顔で答えてくれた。

オレは、そのまま詩織を抱き締めた。

やっぱり、詩織が好きだ。

それが、オレの本心なんだ。

「もう、絶対に話さないから…」

オレは、詩織の耳元で囁く。

「私も…」

オレは、そっと詩織の唇に自分の唇を重ねた。

詩織が、オレの背中に腕を回してくる。


愛しい詩織。

こんなに誰かを好きになるなんて、思わなかった。

ずっと、こうしていたいが……。

「護。私、そろそろ行かないといけないから」

詩織が、遠慮がちに言う。

詩織もオレと同じ思いなんだろう。

「そっか。じゃあ、オレ、待ってるから終わったら、メールして」

「うん」

詩織が、名残惜しそうにオレの腕の中から、出ていく。

そんな詩織の後ろ姿を見送った。

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