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感謝
今回は、かなり短めです。
帰り道。
親父と二人で家に向かう。
「護。良い家族だったな」
ポツリ、親父が呟いた。
オレは、隣を歩く親父の顔を盗み見た。
「兄弟が居たら、あんなんだったんだろうな」
親父が、遠い目をして言う。
何だか、少し寂しそうだ。
「親父。オレは、今のままでも十分だと思ってる。親父が居てくれたから、ここまでこれたんだし、寂しいなんて今まで一度も思ったこと無いよ」
オレは、真面目でそう伝えた。
「護…」
親父が、何か言いたそうにしていたが。
「親父には、感謝してるんだ。ありがとう」
オレは、自分でも驚くぐらい素直に言葉が出てきた。
「俺こそ、ありがとう。お前にそう言ってもらえることが、一番だ」
親父が、照れ隠しをするようにオレの背中をバシバシと叩く。
「痛い…」
「後は、お前の頑張り次第だぞ。彼女を自分のものにしたいならな」
親父が、茶目っ気たっぷりな笑顔を見せる。
滅多に見せない顔だ。
「わかってるよ。本番まで、気を抜かずに頑張るよ」
オレは、親父の期待を受けながら、答えていた。