参拝
神社の中に入っていくと参拝客で、ごった返していた。
「お前ら、はぐれるなよ」
「はい」
詩織が、隆弥さんに向かって返事をする。
オレは、詩織と手を繋ぎながら歩く。
詩織のペースで歩いていると、いつの間にかはぐれてしまった。
言ってるそばから…。
まぁ、オレにとっては役得かも……。
「はぐれちゃったね」
詩織が、呑気に言う。
「そうだな」
まぁ、参拝が終われば、どこかで待っててくれてると思うが…。
「参拝して、くじでも引いたら、会えるだろ」
オレは、冷静に言う。
「それも、そっか」
オレの言葉に詩織が安心しきっていた。
オレたち、二人で列に並んだ。
後ろからの圧力が、凄いな。
オレが、そう思ってたとき。
「…っ…」
詩織が、言葉にならない声を出していた。
「どうした?」
オレが聞くと。
「お尻触られた」
って、恥ずかしそうに小声で言う。
なんだと!
かといって、ここで揉め事を起こすわけにもいかず、オレは詩織を守るように後ろから抱きすくめるようにした。
すると。
「ッチ…」
どこかで、小さく舌打ちする音がした。
オレは、辺りを見渡すと、いかにもって男がその場から離れていくのが見えた。
「もう、大丈夫だと思うが、何かあったら言えよ」
オレは、詩織の耳元で言う。
詩織は、コクりと頷いた。
顔を覗き込むと、赤くなって俯いている。
「詩織。下を向いてたら、ぶつかって危ないよ」
オレは、詩織に顔を上げるように言う。
「だって、こんな格好で歩くとは、思わなかったから…」
ああ、そう言うことか。
「じゃあ、やめようか?」
オレが聞くと、詩織は首を横に振る。
「このままでいい。また、触られるの嫌だし…」
安心した顔をオレに向ける。
可愛いな。
オレを頼ってるって、分かりやすい。
そうこうしてるうちに、順番が回ってきた。
オレは、お賽銭を入れると祈った。
第一志望校に受かりますように…。
それから、詩織と一緒に居られますように…。
お祈りをしてたら、視線を感じて、目を開けた。
詩織が、オレを見つめていた。
「どうしたんだ?」
オレは、不思議に思いながら詩織に聞く。
「ううん。何でもない」
詩織が、首を横に振る。
何でもない動作だが、その一つ一つが、可愛く映る。
「くじ、引くんだろ?行こう」
オレは、詩織の手を握ると歩き出した。
「護は、何をお願いしたの?」
詩織が、興味津々で聞いてきた。
今、それを聞くのは反則じゃ…。
「それを今聞くのか?」
「だって、熱心にお願いしてたから…」
詩織が、上目使いでオレを見る。
止めろ、
そんな目でオレを見るな。
「秘密だ」
オレは、そう言って視線をそらした。
お前との事だなんて、流石に言えるかよ。
顔が熱を持ち出す。
「詩織こそ、何をお願いしたんだよ」
オレは、詩織の顔を覗き込む。
「えっとね。私は、内緒だよ」
って、笑顔でごまかしてきた。
ったく、この笑顔がオレを虜にしたんだよなぁ。
「護。絵馬書こうよ」
詩織が、突然言い出した。
「エッ…。くじは?」
オレの質問に。
「それも、後で…ね」
って、嬉しそうに言われてしまえば。
「しょうがねぇなぁ」
オレは、従うしかない。
なんか、顔合わせっていうより、デートになってないか?
それは、それでオレは構わないんだけど…。
こういうのもいいかも…。
こんな、まったりデートって、以外と好きかも…。
オレたちは、絵馬を買い、それぞれに書き込む。
何を書こうか?
受験の事も願いたいが……。
やっぱりここは…。
そう思い、書いたのは。
“詩織と何時までも一緒に居られますように…“
だった。
「書けたよ。護は?」
詩織が聞いてきた。
「オレも書けた」
それぞれ書いた絵馬を持って、お供えに行く。
詩織は、何て書いたんだ?
オレは、詩織が書いた絵馬を覗き込む。
そこには。
“護の大学受験が上手くいきますように…“
可愛らしい文字が並んでた。
うわー。
何か、照れる…。
彼女が、自分のために書いてくれてるんだと思うと嬉しい。
そして、詩織の視線が、オレの絵馬に向いてることに気付き。
「こら。勝手に見るな」
オレは、少し恥ずかしくなる。
「エヘッ。ありがとう。嬉しいよ」
詩織が、笑顔でオレの腕に自分の腕を絡めてきた。
「さっさと、おみくじ引きに行くぞ」
オレは、照れ隠しで言う。
「はーい」
詩織が、元気のいい返事を返してきた。
おみくじ売り場で、くじを引く。
オレは大吉で、詩織が末吉を引いた。
「いいなぁ。大吉なんて…」
って言うか、じゃないと困るんだが…。
「大丈夫。こうして二つを纏めて、一緒に結ぼう」
オレは、おみくじを纏めて結びやすいように細くした。
そして、一番高いところにおみくじを結んだ。
「これでよし」
オレは、結び終えて、詩織の方に振り返る。
「お前、一人なのか?」
アイツ…佐久間が、詩織に声をかけていた。
「ううん、家族と来てるの」
詩織が、ちょっと困った感じで言う。
「その家族は、どうした?」
怪訝そうな顔の佐久間。
「途中で、はぐれた」
それでも詩織は、正直に話してる。
「大丈夫なのか」
心配顔のやつの顔と同時に、このまま連れ出そうとしている顔が、見え隠れしてる。
オレは、詩織の後ろから。
「大丈夫だ」
と声をかけた。
「なんだ。そいつも一緒なのか?」
見るからに邪魔そうな顔をする。
「何だって、オレもこいつの家族みたいなもんだし」
オレは、詩織の肩を抱き寄せた。
詩織が、俯く。
「どういうことだよ!」
佐久間は、あからさまに動揺してた。
「今日は、うちの家族と護の家族で、初詣に来てるんだ」
詩織が、嬉しそうに弾んだ声で言う。
「まさか、家族ぐるみで…」
絶句しだす、佐久間。
「そのまさかだよ」
佐久間の後ろから、隆弥さんが現れた。
「隆弥さん」
オレは、声を上げていた。
「お前ら、遅い。昼食食べに行くって。入り口で待ってるから、早く来いよ」
そう言うと、踵を返して戻っていく。
「隆弥兄。ちょっと待ってよ」
詩織が、慌てて隆弥さんを追い駆けようとする。
「ごめん。また、学校で…」
詩織は、ヤツにそう言葉をかけていた。
オレは、詩織を追いその手を引いて歩いた。
アクセス数1万件突破しました。
って、護の方は作者が、至らないからだろうと思ってます。
う~ん。
もっと勉強せねば。
と、反省しております。
読んでいただいてる方、これからもよろしくお願いします。m(__)m




