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顔合わせ

翌日。

オレは、親父を連れて駅で待っていた。


親父は、顔合わせってことで、一番いい背広を着込んでいた。

「護。これ、大丈夫か?」

何度目の問いかけだろう?

「大丈夫だよ。ったく、そんなに畏まることかよ…」

オレが、苦笑してると。

「護―」

優基が、オレに声をかけてきた。

「優基。おめでとう」

「おめでとう。今年もよろしくな」

優基が屈託のない笑顔で言う。

「明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします」

優基は、親父に向かって挨拶をする。

「優基君。おめでとう。こっちこそよろしくな」

親父は、いつものように優基に接している。

「優基君もなのか?」

親父が、耳打ちしてきた。

「そうだよ。詩織の兄だからな」

オレが、言うと納得する親父。

優基と親父は、何度も顔を会わせてるから、緊張してないみたいだ。

優基の後ろから、両親が現れた。

「どうも、始めまして。詩織の父です」

詩織の親父さんが挨拶をする。

「母です」

「玉城です。今日は、よろしくお願いします」

親父が、頭を下げた。

それを横目で見ながら、詩織の姿を探す。

すると、隆弥さんと一緒に詩織が現れた。


エッ……。

詩織が、着物を……。

オレがその姿に見いっていると。

隆弥さんが、詩織の背中を押していた。

その拍子に、詩織の足がもつれて、倒れそうになる。

「あわわわ…」

オレは、慌てて駆け寄り、抱き止めた。

「大丈夫か?」

「ごめん。着なれてないから、足がもつれちゃって…」

詩織が、照れ隠しをする。

本当は、隆弥さんに押されたんだろうが…。

オレは、そこを突っ込むことをやめた。

「ほんと。さっきから、釘付けになってた」

オレは、詩織の耳元で告げた。

すると、何かを思い出したように。

「そうだ」

詩織が、オレから距離をとって。

「あけましておめでとうございます」

詩織が、頭を下げて、挨拶してきた。

「おめでとう。今年もよろしくな」

オレも、詩織に挨拶を返す。

「こちらこそ、よろしくお願いします」

オレらは、笑顔を交わす。

「詩織、護。行くってさ」

優基が、声をかけてくる。

「はーい」

詩織が、返事を返している。

「ほら、逸れるといけないから、手を繋ごう」

オレは、詩織に手を差しのべる。

本当は、オレの彼女だって主張したいだけなのかもしれない。

詩織は、オレの手に自分の手を重ねてきた。

指を絡ませ、恋人繋ぎにする。

「歩きなれてないから、ゆっくり歩いてね」

詩織が、恥ずかしそうに言う。

その仕草が、愛しい。

「わかってるって…。また、つまづかれても困る」

オレは、笑いながら言う。

「今日の着物、似合ってる」

オレは、詩織の耳元でボソッと呟いた。

すると、詩織の顔が赤くなっていく。

と同時に、嬉しそうな顔を見せてきた。

それ、反則だぞ。

「なに、照れてるんだよ」

オレは、詩織をからかうように言う。


「髪、伸びたな。このまま伸ばすのか?」

オレは、詩織の髪を弄びながら、聞いてみた。

「春になったら切るよ。それまでは、このまま」

詩織が、淡々と答える。

「もったいないな。綺麗なのに」

「そうかな」

「そうだよ」

「うーん。でも、やっぱり、切るよ」

詩織は、一瞬躊躇したみたいだが、きっぱりと答えた。

「アイツ、佐久間だっけ…。勘違いされないか?」

オレが、不安気に言ったのに気付いたのか、詩織が。

「大丈夫だと思う。ちゃんと説明するから」

って、考えながら言う。

「そっか」

本当にそうならいいんだが……。


「私ね。護と離れてる間に、色々と考えたんだ。私って、恵まれてるなって。だって、私たち、同じ学校に通ってはいるけど、学年は違うでしょ。だから、こうやって、一緒にいること事態が、不思議なんだって…。なんにも接点無いのにさ」

詩織が、真顔で言う。

「オレも、それは思った。優基が居なかったら、接点ないんだよな。それと、お前が、文化祭でステージに立たなければ、一目惚れもなかったんだなって」

「そうだね。私も、告白されることもなかったんだよね」

詩織が、考え深く言う。

「本当に偶然が、必然になった瞬間なのかもな」

オレは、詩織が歩きやすいペースで横を歩く。


「おーい。詩織、護。早く来いよ。母さんたち、待ちくたびれてる」

「そう言われても、私走れないよ」

詩織が、優基に言い返していた。

オレは、そんなやり取りを見ていた。


「しょうがない」

そう言うと、繋いでた手を離すと、詩織を抱き上げた。

「キャッ……」

詩織が小さな悲鳴をあげて、驚いた顔をする。

「しっかり掴まっておけよ」

詩織に伝えると、走り出した。

「きゃーー」

詩織が、慌ててオレの首に腕を回してきた。

「詩織。お前、痩せた?」

オレは、この間抱き上げたときよりも若干軽い気がして、詩織に聞いてみた。

「そうかなぁ?変わらないと思うけど…」

詩織はそんなことないよって顔をしながら答える。

「前よりも、軽くなってる」

前って言っても、体育祭の時だから…。

「それは、護が逞しくなったからじゃないの?」

詩織が、逆に聞き返してきた。

そうなのか?

最近は、トレーニングしてないんだが…。

待ってる皆の前で、詩織を下ろした。

「護。それは、やりすぎだろう」

勝弥さんがオレの肩を叩く。

「アハハハ…」

オレは、笑ってごまかした。

「…ったく、お前は…」

隆弥さんも、呆れたように笑っていた。

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