表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/62

学年の違い

翌朝。

オレは、朝練の為に家を出る。

昨日の今日で、オレの足は浮き足立ってる。

とうとう告白して、晴れて彼女になってくれた。

それが嬉しくて、つい顔がにやける。

そこに、オレの前を愛しの彼女の姿が目にはいった。

「おはよう、詩織」

オレは、大声で言う。

「おはようございます、護さん」

丁寧に返されてしまった。

ウーン。

オレとしてはもっと、気軽にして欲しいんだが…。

「こら、敬語無しって言っただろ」

真顔で言うと。

「ですが、学校では先輩ですから、敬語で話します」

彼女も強気で言う。

「しょうがないな…」

オレは、呟いた。

「二人だけの時は、敬語は無しだぞ」

笑顔で彼女に言う。

「わかりました」

「それ、敬語!」

オレは、すかさず突っ込む。

彼女が、笑い出す。

「やっぱり、笑うと可愛いな」

オレは、彼女を見つめる。

「それにしても、今日はやけに早いな」

詩織ちゃんが、不思議そうな顔をする。

「いつもは、八時ぐらいじゃなかったっけ…」

「いつも見ていたんですか?」

オレは、恥ずかしくなって、頭を掻く。

「そうだよ。大体、朝練が終わる頃に来るじゃん」

彼女が、困ったように。

「そうですよ。でも、昨日、護さんが家まで送ってくれたので、双子の兄達が煩くて、起きて来る前に出て来ました」

って、説明する。

「ごめんな。そんな事、全然気にしてなかった」

オレは、申し訳なく思った。

「いいですよ。どうせ、いつか気付くなら、最初っから知られてた方が楽ですから…」

って、詩織ちゃんが、苦笑いする。

「本当に、ゴメン。オレ…」

って言いかけて。

「大丈夫ですよ。優兄も応援してくれてるし…」

付け足すように言う彼女。

「優基が…」

「それより、朝練はいいんですか?」

詩織ちゃんの言葉に、オレは。

「ヤベー。じゃあ、先に行くわ!」

そう言い残し、学校までダッシュした。


「おはよう」

オレは、部室のドアを開けて挨拶する。

「おはよう。遅いじゃん、玉城」

同級生に声を掛けられる。

「ちょっとな…」

何て、ごまかす。

オレは、トレーニングウェアに着替えて、グランドに出る。

柔軟体操を済ませると時間まで筋トレをした。


朝練を終わらせて、教室に向かう。

「おはよう。玉城君」

同じクラスのちひろが、声を掛けてきた。

「あぁ、おはよう」

ちひろは、クラスの中では綺麗系なのだが、オレは興味ない。

それでも彼女は、オレの周りでうろうろしてる。

気が付いたら、腕に絡み付いてるし…。

「やめろよ」

オレは無理矢理その手をほどく。

「いいじゃんか。私達、付き合ってるんだし…」

ちひろが、口を尖らせて言う。

ハァー。

オレは、怒りを覚える。

「オレは、お前と付き合った覚えはない!」

はっきりと言ってやった。

「エッ…。だって、クラス公認だよ。私と玉城君が付き合ってるって…」

なんだよそれ。

オレは、こいつに告白なんてしてないし、されてない。

って言うか、こいつオレのタイプじゃないんだが…。

「ワケわからん。オレは、お前の事なんとも思ってねぇよ」

それだけ言って、さっさと教室に入る。

ちょうどそこに優基が入ってきた。

ちひろが言ってた事を聞きたいと思った。

「おはよう、優基」

「おはよう、どうした?」

「実はな、ちひろがさっき変な事言ってたんだかが、お前知ってるか?」

「あぁ、お前とちひろが付き合ってるってやつ?」

やっぱり、知ってたんだ。

知らなかったのは、オレだけ?

「まぁ、それは、ちひろが取り巻きを使って、流したデマなのは、知ってたからな。って言うか、今さらだぞ。その時期は、お前から妹の事ばかり聞かれてるしな」

優基が、小声で言う。

アハハ……。

そっか……。

そんな前から言われてたんか…。

オレ、全然知らなかった。

その頃は、ずーっと、詩織ちゃんの事を探してたから、気にしてなかったからなぁ…。

「オーイ。玉城、席に着け」

「あっ…はい」

オレは、自分の席に座る。

「これから、文化祭の出し物を決めるぞ」

委員長が、言い出した。


「…って事で、今年の出し物は、執事&メイドカフェに決定しました。準備は、各自で行ってください。入る時間帯は、後日発表します。その時に都合が悪い奴は、申し出るように…」

何が楽しくて、執事やらないかんのだ。

裏方だけなら、いくらでもやってやるのに…。

詩織ちゃんは、何やるんだろう?

オレは、自分の事よりも詩織ちゃんの事が気になった。

彼女の事だから、大役をやるんだろうなぁー。

となると、また、彼女のファンが増える。

って事は……。

オレ、うかうかしてらんねぇー。

他の奴に取られて仕舞うんじゃないか……。

不安がよぎる。

「護…。おーい、護」

オレが頭を抱え込んでると、声が掛かる。

「あっ…」

「何やってるんだ。次、移動だぞ」

優基に言われて、我に返る。

「そうだった」

オレは、教科書を持って、席に立つ。

「何、考えてたんだ?」

優基に聞かれて。

「詩織ちゃんの事…」

「やっぱり……。少しは、自分の事を考えろよ。執事の格好をするとお前も人気出るからな」

優基が、釘を刺してくる。

「そんなのわかってるさ」

「本当かよ……」

優基が、呆れたように言う。

「玉城くん」

背後から声が掛かる。

振り向くとそこには、ちひろとその取り巻きだった。

「なんだよ」

面倒臭いな。

「さっき、ちひろに酷いこと言ったんだって」

酷い事って…。

オレが、戸惑ってると。

「おい、やめろよ。そもそも、護とちひろは、付き合ってなんか居ない。って言うか、ちひろの早とちりだぞ。護は、他の事付き合ってるんだからな」

優基が言う。

「馬鹿。そんな事行ったら…」

オレは、小声で優基に言う。

「誰よ!」

言わんこっちゃない。

詩織ちゃんに迷惑が…。

「オレの妹。コイツ、メチャクチャ惚れ込んでるんだぜ」

優基が、含み笑いする。

「水沢君の妹?だったら、ちひろの方が可愛いじゃんか。何で、ちひろじゃダメなのよ」

取り巻き達が、煩い。

「ちひろは、オレのタイプでは無いんだよ」

ったく……。

女共は、つるまないと何も出来ない。

その点、詩織ちゃんは、そういうタイプじゃない。

「ちょっと、何それ!もっと、明確な説明ないの?」

「うるせえな!オレは、そいつから告白されてない!」

オレは、大声で言いきる。

それだけ言って、優基と教室に向かった。


部活を終えて、詩織ちゃんが居るであろう教室に行く。

でも、そこには、詩織ちゃんの姿がなかった。

しまった。

一緒に帰る約束しておくんだった。

オレは、下駄箱に戻る。

詩織ちゃんの靴箱を探す。

あった。

まだ、帰っていない。

ここで待っていれば、一緒に帰れるかなぁ…。


オレの頭の中は、詩織ちゃんの事で一杯だ。

彼女にどうしたら、喜んでもらえるのか…。

あーでもない、こーでもないって考えていたら。

下駄箱の向こうから、声が聞こえてきた。

オレは、ゆっくりとその方を向く。

「あれ、護じゃん。どうしたんだよ」

優基が、声を掛けてきた。

「詩織ちゃんを待ってるんだが…」

優基の後ろから、ひょっこり顔を出す詩織ちゃん。

その仕草が、可愛らしい。

「詩織ちゃん…。余りにも遅いから、先に帰ったかと思った」

はにかみながら言うオレ。

「あのー。本当に待っててくれたんですか?」

おどおどした声で言う。

「そうだよ。一緒に帰りたくてさぁ。学年違うから、ゆっくり話せないしな」

オレは、笑顔でそう言う。

「じゃあ、詩織。俺、先に帰るな。兄貴達なだめとくから」

そう言って、優基は帰って行った。


「待っててくれて、ありがとう」

学校からの帰り道。

突然詩織ちゃんが言う。

「お礼はいいよ。オレは、詩織ちゃんと帰りたかったから、待ってたんだ」

顔が緩むのがわかった。

「私も、護さんと帰りたいと思ってた。でも、ごめんなさい。明日から、待ってもらわなくて良いです。私、凄く遅くなってしまうから。護さんに迷惑掛けたくない」

詩織ちゃんが、落ち込んでる。

「気にしなくていいよ。オレは、自分がそうしたいから待ってるだけだから」

オレは、笑顔で言う。

「だって、護さん。これから、大事な試合が控えてるのに…」

彼女は、知っててくれたんだ。

試合が、近いことを…。

「気にしてくれてるんだ…。待ってる間に練習できるから、大丈夫だよ」

オレは、微笑んで見せる。

「でも…」

まだ、彼女は迷ってるみたいだ。

「ありがとう。詩織の気持ち、届いてるからな」

それを聞いた詩織ちゃんの顔が明るくなった。

「その代わり、ちゃんと試合には、応援に来てくれよ。詩織の応援が、一番なんだからな」

オレは、満面の笑みを向ける。

「はい」

彼女が、素直に頷いた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ