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間接キス

翌日。

オレは、服に困っていた。

この前と同じって訳にもいかないし…。

はぁー。

どうしたら…。

時間も迫ってきてるし…。

とりあえず、カッターシャツにトレーナーを着て、ジーパンに皮ジャン。

もう、これでいいか。

後は、このプレゼント持って、待ち合わせの場所まで急いだ。



時間前には、駅に着く事が出来た、が…。

詩織の姿は、まだ見えない。

よかった。

と言うべきか…。

一息ついてると。

「玉城くん、発見」

と、またしてもちひろだった。

だが、今回は一人だ。

「ねぇ、どっか行こ」

ちひろが、オレの腕を引っ張る。

「悪い。オレ、待ち合わせ中」

オレの言葉にちひろの顔が強張る。

「水沢さん、事故に遭ったみたいだよ。だから、行かないと…」

何?

事故だって…。

そんな、まさか…。

オレの足が、動いた。

と同時に、詩織がこっち見てる事に気が付いた。

視線が会うとちひろの腕を振り払って、オレは詩織の方に近付いて行く。

だが、詩織は、その場から逃げ出したのだ。

エッ…。

何で、詩織は逃げ出すんだ。

オレは、さっきまで詩織が居た場所に行くと、鞄と紙袋が落ちていた。

オレは、紙袋の中を見て驚いた。

時間の限られてるなかで、手編みのマフラーを作っていたんだ。

オレは、詩織が編んだマフラーを取り出して、首に巻く。

暖かい。

詩織の想いが詰まったマフラーは、オレの心をくすぐっていた。

あんなに忙しかった中で、オレの為に一生懸命に編んでる詩織に姿が、浮かびあがる。

ヤバイ。

嬉しすぎる…。

オレは、詩織が逃げていって方へ、全速力で走った。



あっちこっち走り回り、ある公園のベンチに詩織が座っていた。

オレは、ゆっくりと息を整えてから、詩織が座ってるベンチに向かう。

そして、詩織に手を差し伸べた。

下を向いていた詩織が、ゆっくりと顔をあげる。

詩織が、驚いた顔をした。

「あっ…」

詩織が、オレがしていたマフラーに釘つけになった。

「詩織。これ、ありがとうな。忙しい中で編んでたんだな。嬉しいよ」

オレは、笑顔で詩織に伝える。

「全く。また、オレから逃げ出すなんて…」

ちょっとだけ、呆れたように言い。

「お前は、何回オレの前から逃げ出せば気が済むんだ。あっちこっち探し回ったぞ…」

オレは、苦笑しながら言う。

「ごめんなさい。私、てっきりちひろさんと何処か行ってしまうんだって思い込んで…」

詩織が、落ち込みぎみに言う。

「うん。だから、逃げ出したんだろう。オレは、詩織を待ってる間に何かあったんじゃないかって、心配してたら、ちひろが、水沢さんが事故に遭ったって言うから、言うがままに足が動いたんだ。そんな時に視線を感じて、振り向くと、詩織がこっちを見てたから、ちひろの腕を振り払って、お前を追い駆けようとしたら、鞄と紙袋を落としていったから、紙袋の方だけ、覗いたら、手編みのマフラーが入ってて、オレ、嬉しくて、そして詩織を見つけないとって探し回ってた」

オレは、一気に喋った。

オレが、どれだけ心配してたかを知って欲しくて…。

「ほら、水族館行くぞ。オレも、楽しみにしてたんだからな」

「うん!」

詩織の元気な返事。

今のうちに渡しておくか…。

「そうだ。オレからは、これをやるよ」

ポケットから箱を取り出す。

初めて、デザインしたネックレス。

気に入ってくれるかな?

詩織は、恐る恐るそれを手に取る。

「開けていい?」

詩織が、オレの顔を伺ってきた。

「いいよ。気に入ってくれるといいんだが…」

自信がないわけじゃない。

詩織に似合うようにって、考えたデザインなんだから…。

詩織が、蓋を開ける。

「嬉しい。ありがとう」

詩織の笑顔が、満開になる。

よかった。

気に入ってくれたみたいだな。

「着けてやるよ。詩織、髪あげて」

詩織が、髪を持ち上げる。

オレは、詩織の後ろに回りネックレスを着けた。

その時に詩織の首筋を触ったみたいで。

「くっ…」

詩織が、身を捩った。

「動くなって…」

「だって、くすぐったいよ」

詩織が、オレを挑発し出す。

って言うか、詩織はそんなこと思っていないんだろうけど…。

オレは、詩織のうなじに唇を這わせた。

「つっ…。やめてよ」

詩織が、甘い声音で言う。

「そんな声出すなよ。襲いたくなる」

詩織の耳元で言う。

詩織が、顔を真っ赤にして俯く。

「詩織。顔、真っ赤だな」

オレは、からかうように言うと詩織が、オレに胸を軽く叩く。

そんな詩織を抱き締めた。

「今日の服に合ってるな」

「本当?」

詩織が、オレの顔を覗き込んできた。

「詩織には、シンプルなのが似合うな」

詩織を抱き締めながら、我ながらいい出来だと思った。

「じゃあ、行くか」

「うん」

「ほら、鞄」

詩織に鞄を差し出す。

詩織は、鞄を受けとる。

そして、手を繋いで駅まで走り出した。



フー。

なんだかんだ言って、戻ってきた。

詩織が、肩で息をしてる。

やっぱり、きついよな。

女の子だし…。

手を放すとオレは、自販機に向かって歩き出す。

水分補給しとかないとな。

スポーツドリンクを購入して、詩織のところに戻る。

「ほら、スポーツドリンク」

オレは、そのまま詩織に渡す。

「エッ…」

詩織が、驚いた顔をする。

「公園から、ここまで走り続けてきたから、喉が渇いただろ? だから、水分補給」

「ありがとう」

詩織が、ペットボトルの蓋を開けて、飲み出した。

そんな詩織に。

「詩織、それもらうぞ」

ペットボトルを奪って、そもまま飲み出した。

詩織の頬が少し、染まっていた。

ん?

なんかあったか?

……あ、間接キスの事、気にしてるんだ。

「熱い。久し振りに走ったから、疲れた」

オレは、ごまかすように皮ジャンを脱いだ。

何で、オレここで意地張ってるんだろう…。

「残り、飲む?」

詩織は、首を横に振る。

「でも、一口しか飲んでないじゃんか。飲んでおきな」

オレは、もう一度詩織の手に戻した。

詩織が、何か考えてるのが伺える。

じっと見てると、徐々に顔が赤くなっていく。

「どうした? 顔が赤いぞ」

詩織の顔を覗き込む。

「何でもないよ」

詩織が、ごまかす。

大抵、把握できてるけどな。

「ならいいが…」

あえて、突っ込むことをやめた。

「そろそろ来るな。ホームに行くぞ」

オレが歩き出したら、詩織がペットボトルを鞄に仕舞い込み、追い駆けてきた。

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