プレゼント
期末テストも終わり、一段落してた頃。
「おい、玉城。今年のクリスマスパーティーも参加するだろ」
と、当たり前のようにクラスの奴が聞いてきた。
クリスマスパーティー?
そういや、そんなもんもあったなぁ…。
確か、生徒会主催…。
あっ…。
それって、詩織完全に一日潰れるんじゃ…。
ハァ…。
これは、デート一日遅れだよな。
まぁ、仕方ないか…。
「玉城?」
「あぁ、悪い。もちろん参加するさ」
オレは、素直に答える。
「じゃあさ、クラスの女子を何人か誘って、エスコートしようぜ」
その提案には、乗れないが…。
「玉城は、嫁が居るからいいよな」
「それは、違うから…」
オレの言葉に。
「何が違うんだよ。ちひろ誘っといてくれよな」
と、当たり前のように言う。
ハァ…。
「だから、ちひろとは何でもないんだって…」
「今更何照れてるんだよ。クラス公認の癖に…」
って、肘でオレの脇腹を小突いてくる。
もう、いい加減にしてくれ。
この話…。
「おい、護。そろそろ、終わる頃じゃないか?」
優基が、オレに声をかけてきた。
時計を見る。
「そうだな」
オレも、そう返事を返す。
「何が?」
クラスの奴が、オレ達の会話に入ってくる。
「エッ。俺達のお姫様の仕事が終わる時間」
優基が意味深な言葉を告げる。
「何?水沢、彼女いるの?」
と、突っ込まれてる。
「居るよ。メチャ、可愛いんだよ。多分皆知ってると思うけどね」
優基は、笑顔で言う。
「教えろよ」
「生徒会副会長の桜里沙ちゃんだよ」
優基が、嬉しそうな顔をして言う。
「確かに可愛いけど。俺は、やっぱ、会長の詩織ちゃんかな」
そいつが、真顔で言う。
マジか。
「彼女と付き合えるなら、何だってするぜ」
こんな間近に居たのか…。
「おっと、地雷踏んだ。俺の妹に手を出す奴は、後でキツイお咎めがあるぜ」
優基が、楽しそうに言いやがる。
「なんだよ、いいじゃんか。詩織ちゃんメチャ可愛いし、あの笑顔が最高に良い」
鼻の下を伸ばして言う。
なっ…。
何だと!
「旦那さん。あんま怒るなよ」
優基が俺の肩に手を置く。
何だか、腹が立ってきた。
優基が、あまりにも茶化すから。
「詩織は、オレの女だよ。手、出すな!」
って、つい言ってしまった。
別にいいんだけどさ。
本当の事だし…。
優基にのせられなきゃ、こんなこと言わなかっただろうが…。
「はっ。玉城、まさか二股…」
「そんな事あるかよ。オレは、詩織一筋だ!」
頭にきて、そう叫んでた。
「護、落ち着け」
落ち着けるかよ。
「ちょっと待て。水沢、こいつ可笑しいのか?」
そいつは、オレを指を指す。
「可笑しくなんてないぜ。だって、護は詩織の彼氏だし、婚約までこぎつけるほど、詩織一筋だって…。それにこいつ、詩織の事をずっと探してたんだよ。一年前から、諦めずにずっとな」
優基が、いらん事をペラペラ話す。
「文化祭前に告白して、オッケーもらってるんだよね」
優基、頼むからそれ以上話すな。
「なっ…。それって…」
何だよ。
「そう、正真正銘、妹の彼氏は、護なんだよ。誰も、こいつらの間に入ることなんて出来ない。妹も護一筋だから」
優基が、真顔になる。
「そうなんだ…」
奴は、肩を落として、去っていった。
「優基。お前、余計なことを…」
オレは、優基を睨み付ける。
「そうか?こういうのは、はっきり言っておいた方がいいって。それより、迎えに行くぞ」
優基が、他人事のように言う。
こいつには、叶わない。
オレは、そう思った。
生徒会室の入り口で、二人が出てくるのを待つ。
「あれ、二人で待っててくれたんだ」
里沙ちゃんが、オレ達を交互に見る。
詩織は、一度たりとオレを見ようとはしない。
部屋の鍵をかけてる。
「ああ。他のメンバーが出て行ったのを見たから、終わったのかと思って、来てみた。」
優基が、里沙ちゃんの頭を軽く叩いてる。
「じゃあ。私、鍵を返しに職員室に行くから」
詩織が、そう言って行こうとする。
「こら、待て。オレも一緒に行くから…」
オレは、慌てて詩織の後を追いかけた。
帰り道。
詩織が、何か言いたそうにしてる。
だが、敢えてオレからは言わないでいた。
詩織から、話してくれるのを待っていた。
「護、ごめんなさい。クリスマスイブのデートなんだけど、出来なくなっちゃった」
と、申し訳なさそうに言う。
待ったかい、あったかな。
「うん。何となくわかってた」
オレは、笑顔を向ける。
って、さっき思い出したんだが…。
「詩織は、知らなかったみたいだけどな。オレ、毎年誘われてたから、クリスマスパーティーに出てた。生徒会企画だから、詩織は、一日中準備で追われるのもわかってるから…。でも、クリスマスはデートしような」
詩織の頭を抱き寄せる。
「うん」
詩織が、嬉しそうな笑顔をオレに見せてくれる。
「…で、今年は、何するんだ?」
オレは、詩織に聞く。
「エッと…。ダンスパーティーだよ。音楽は、軽音部に任せようと思ってっるの。私も歌う羽目になったけど…」
詩織が苦笑する。
「マジかよ。オレも出ないといけないじゃん」
って言うか、行く気満々だけどな。
「心配?」
詩織が、オレの顔を覗き込んできた。
「そりゃあ、心配だよ。詩織が歌うとなると、結構な人数が集まるんだろうな。告知してるのか?」
詩織が、首を振る。
「それは、してない。そんな事したら、私が楽しめないじゃん」
苦笑しながら言う。
そうだよな。
企画してる奴等が、楽しめなきゃ、意味ないもんな。
「じゃあ。詩織が歌ってる間は、オレ壁際にでも居るか…」
オレが、ボソッと言うと。
詩織が、その言葉を聞いて、一瞬戸惑った顔をした。
「可愛い彼女が、頑張ってる姿を見ないとな」
オレが、笑って言うと、詩織が抱きついてきた。
どうしたんだ?
「オレにとっては、高校最後のパーティーだしな」
詩織を抱き締めながら、オレは言う。
「それに、心配なんだ。詩織にここぞって寄ってくる奴が居るからな」
オレは、小声で言う。
さっきのやり取りを思い出す。
アイツ等には、絶対触らせたくない。
「その日は、朝から準備なのか?」
「そうなると思う」
詩織の顔が、少し曇る。
そうか、詩織は初めてなんだ。
だから、余計な事を考えてしまってるんだな。
「詩織。気合い入れすぎて、倒れるなよ。それだけが、心配だ」
頑張りすぎる所があるからな…。
「うん。気を付ける」
「本当か?前みたいなことになるなよ」
オレが、釘を指すと。
「アハハハ…」
詩織が、から笑いしだす。
「じゃあな」
オレは、軽く唇を合わせて家に帰った。
ダンスパーティーか…。
まぁ、詩織らしいって言えばそうなのかな。
皆が、楽しんでくれたらそれで良いって、ことなんだろうけど…。
詩織自信が、楽しんでくれるなら良いんだが…。
それと、変な虫がつかない事を祈らないと…。
って、オレ、詩織の事ばかり考えてる。
おっと、クリスマスプレゼントどうするかなぁ…。
まだ、ジュエリーショップ開いてるよな。
よし、このまま行ってしまうか…。
制服じゃ、無理か…。
一旦帰って、着替えていってもば間に合うか。
よし、そうしよう。
オレは、家まで走って帰ると、着替えてジュエリーショップまで急いだ。
ショップには、色とりどりの品物が揃っていた。
「おや、護?」
って、声がかかる。
振り返ると親戚のお兄さんが居た。
「ご無沙汰してます」
オレは、思わず挨拶してた。
「ほんとだな。で、今日は彼女にあげるプレゼントでも探しに来たのか?」
エッと…。
オレが言い淀んでると。
「オレ、ここでデザイナーしてるんだよ。もしよかったら、オレが作ってやるよ」
との申し出に。
「本当ですか?」
つい、身を乗り出して聞き返した。
「おっ、食いついてきたな。じゃあ、裏で話そう」
そう言って、悟兄さんが店の奥に入っていく。
オレは、その後についていった。
「そこに座って」
差し出された椅子に座る。
「で、どんなのにしたいの?」
悟兄さんが、スケッチブックを取り出しながら言う。
「キュートな感じのネックレスが良いんですけど…」
「キュートか…」
「ハートの形で、中をくりぬいたものにスワロスキーを二三個並べるみたいな」
オレがイメージしたことを悟兄さんは、イラストに起こす。
「こんな感じか?」
それをみて。
「そうです。ハートの頭のところを少し平ぺったくしてって言うか、伸ばすて言うか…」
「こんな感じか。ここの石さぁ、一個だけ、ピンクダイヤにしようか?」
との提案に。
「それ、いいですね。それにしてもらっても良いですか?入れる場所は、真ん中にしてください」
オレも、すかさずに言う。
「護。これ、店に出しても良いか?」
エッ…。
「別に構わないですよ。石の位置や色はお客さんに決めてもらえば良いことだし、同じのなんて、そうできないだろうし…」
オレの言葉に…。
「なるほど。石の組み合わせは、自由にきくって訳か…。ちょうど良い。ありがとな、護」
考える仕草をしながらお礼を言われた。
「いいえ。オレは、案を言ったまでですから…。で、お代は?」
「護から、代金をとるわけにはいかないな。今度、店の物を何か一つ買ってくれれば良いよ。それから、これ、クリスマス前には、仕上げておくから…」
悟兄さんが言う。
「ですが…」
「実は、俺、スランプ中だったんだよ。お前のお陰で、新しい案が浮かんだんだ。これで、チャラってことで…。な」
って、苦笑しながら言う。
「そういう事なら、お言葉に甘えて、お願いします」
お礼を言うオレに。
「こっちこそ、ありがとな」
笑顔で言う。
オレはお辞儀して、店を出た。
まさか、クリスマスプレゼントが、ただになるとは…。
こんなのって、ありなのだろうか?
一人で、考えてしまう。
彼に感謝しないといけないだろうな…。
たまたま入った店に、たまたまデザイナーとしていた彼。
偶然とはいえ、末恐ろしい…。
後で、請求されたりして…。
それも、怖いかも…。
何て思いながら、出来上がりが楽しみだった。