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家族団欒の中に…

「ただいま」

詩織が玄関を開けて、大きな声で言う。

その後に続くように。

「お邪魔します」

オレは、声をかける。

すると。

「早速来たな」

リビングから顔を出した勝弥さんが言う。

「勝弥兄、隆弥兄は?」

詩織がすかさず聞いてくれる。

「部屋に居るはずだぜ」

勝弥さんは、今は行かない方がいいって顔をしてるが…。

「ありがとう」

詩織は、お礼を言うと二階に上がっていく。

いいのか?

そう思いながら、詩織の後に着いていく。

そして。

コンコン。

詩織が、部屋のドアをノックする。

「誰?」

部屋から、隆弥さんの声。

なんか警戒してるっぽいけど…。

そんなのお構いなしに詩織が。

「詩織だよ。護が、隆弥兄に教えて欲しいことがあるんだって」

ドア越しで話す。

「入れば」

そっけない言葉が、返ってきた。

部屋のドアを開けると、隆弥さんが机に向かって、何やらニラメッコしてるみたいだった。

「お邪魔します」

そう、まさに今のオレは、邪魔じゃないかと思うのだが…。

「そこ、座れば」

隆弥さんが、振り返りもせずに言う。

そこって……。

とりあえず、テーブルの前に座った。

「私が居ても邪魔だろうから、部屋に行くね」

詩織はそう言うと、戸を閉めて行ってしまった。


「…で、俺に教えて欲しい事とは?」

未だに、こっちを見ない隆弥さんに。

「実は、詩織の事なんです」

オレが言うと、隆弥さんがやっと顔を上げこっちを向いた。

「詩織が、どうかしたのか?」

隆弥さんが、怪訝そうな顔をする。

「詩織って、臆病なんでしょうか?いつも自分の事より他人を優先してるような気がしてならないんですが…」

オレの言葉に。

「確かにそんな節はあるな。人一倍独占欲が強いくせに、それを態度に見せないところもあるな」

隆弥さんの言葉に、益々困惑する。

どういうことだ?

「それが、どうかしたか?」

オレは、思いきって聞いてみる事にした。

「昨日、今日と続けざまに逃げてたから、気になって…」

オレの言葉に。

「アイツは、自分に自信がないんだよ。人前に出てする事は平気なんだが、恋愛となると別みたいでな。相手の気持ちを先に考えてしまって、前に出られないんだよ。だから、俺はそんな詩織を見守ってたんだ」

隆弥さんの言葉で、やっと納得がいった。

あの行動は、自信がなかったからなのか…。

「護、詩織に自信をつけさせてやってくれ。それが出来るのは、お前だけなんだ」

隆弥さんが、オレにお願いするなんて…。

「オレで、出来る事ならやりたいと思います」

オレは、思わずそう答えていた。

「頼むな。あいつ、お前には完全に心許してる部分があるから」

隆弥さんが、寂しそうな顔をする。

「はい。…で、隆弥さんはさっきから何に悩んでるんですか?」

オレは、机のものを見た。

「ああ。明日の塾用の小テストをだな、作ってて…」

隆弥さんが、慌てて言う。

「テスト?」

「これ、親にも言ってないんだが、塾の講師もしてるんだよ。だから、ちょっと悩んでるっと言うか…」

隆弥さんが、苦笑いする。

将来に為に、頑張ってるんだ。

「見てもいいですか?」

オレも見てみたかった。

どういう風に隆弥さんが、作ってるのかを…。

「いいよ」

オレは、隆弥さんの了解を得て、その用紙を手に取る。

そこには、丁寧に書かれた問題文があった。

「何処か、変なところないか?」

隆弥さんが恥ずかしそうに言う。

「ありませんよ。って言うか、逆に丁寧すぎて、分かりにくくなってる部分もあると思うんですが…」

オレは、そう答えていた。

「そうか?」

隆弥さんがもう一度、問題文を読み返していた。


隆弥さんと試験問題を確認してたら。

コンコン。

ドアがノックされる。

「隆弥兄、護。ご飯だよ」

詩織がドアから顔を出して言う。

「おう、今行く」

隆弥さんが、そう答える。

「護、ありがとう。なんとか形になった」

隆弥さんがお礼を言ってきた。

「いいえ。オレは何もしてませんから…」

そう答えるしかなかった。


ダイニングに行くと空いてる席に着く。

「いただきます」

詩織のお父さんだけが居なかったが、全員でご飯を食べる。

大勢で食べるのって、やっぱいい。

そう思ってると。

「お兄ちゃん達知ってた?詩織が、生徒会長に選ばれたの」

って、嬉しそうに話すお母さん。

「そんなの知ってるよ」

と、三人同時に冷たくあしらってるのが、可哀想に思える。

「そんなぁ…。詩織。お兄ちゃん達が冷たいよ…」

そんなお母さんを優しく微笑んでる詩織が。

「お母さん。兄達は、ほっといて、一緒に食べよう」

って、言ってる。

「やっぱり、娘が一番だね。詩織も、女の子を産んだ方がいいよ。男の子なんか、直ぐに保されるから」

そんなやり取りを聞いて、つい噴き出した。

「護、汚い」

「プレッシャーかけちゃった?」

詩織とお母さんがニコニコ笑ってる。

「護、気にするな。母さんのやっかみだ」

優基の言葉に、隆弥さんも勝弥さんも頷く。

そうなんだろうか?

「護君。今度は、誰にもわからない所に着けようね」

うっ…。

それを言われるとは、思わなかった…。

オレの体温が、一気に上昇する。

まだ、隆弥さん達に気づかれてない事だけが、救いか…。

その横で、詩織がクスクス笑っていた。


夕食後。

リビングで寛いでいた。

って、人様の家で寛ぎすぎか?

「護。勉強教えて」

優基が、何気に言ってきた。

「って言うか、お前隆弥さん居るんだから、聞けばいいじゃん」

オレは、不思議に思いながら優基に言った。

あんな頼りになる兄が居るのに、頼らないなんて…。

「隆兄は、詩織にしか教えてくれないんだよ。俺が頼むと断られてばかりでさぁ…」

と言い出した。

そうなんだ。

オレは、てっきり誰にでも教えてるもんだと思ってた。

「しゃあねぇなぁ。何処だよ」

オレは、そう言って問題集を覗き込んだのだった。


「遅くなって悪いな」

優基が、オレに言ってきた。

「いいよ、気にするな。自分の復習にもなった」

オレは、玄関先で靴を履きながら言う。

「護。送っててやるよ」

隆弥さんが、鍵を持って現れた。

「毎回送ってもらうなんて、悪いです」

オレが、遠慮がちに言うと。

「受験生なんだから、早く帰って勉強しな」

隆弥さんが、笑顔で言う。

「ありがとうございます」

オレは、言葉に甘える事にした。

「ご馳走さまでした。お休みなさい」

オレは、お母さんに向かって言う。

「お休み」

オレが玄関を出ると隆弥さんが詩織に向かって。

「詩織、何か居るもんあるか?」

って聞いていた。

「ううん、今は、ないかな」

詩織が即答する。

それから、玄関を出て車に向かう。

「乗れよ」

隆弥さんが鍵を開けるとそういった。

「はい」

オレは、この間と同じ助手席に座リ、シートベルトをする。

「出すぞ」

「はい」

隆弥さんは、ゆっくりと車をスタートさせた。

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