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隆弥さんの存在

「そろそろ、おいとまします」

オレはそう言って立ち上がる。

「じゃあ、俺、送ってたるよ」

隆弥さんが言う。

「悪いですよ」

オレは、遠慮がちに言う。

「俺も用事があるんだよ」

隆弥さんは、そう言って立ち上がる。

「じゃあ、お願いします」

オレは鞄を掴む。

「早くしろよ」

隆弥さんが、鍵をジャラジャラ鳴らしながら、玄関に向かう。

オレは、慌てて後を追う。

玄関で、靴を履き終えると。

「今日は、ご馳走様でした。長々とお邪魔してすみません」

オレは、軽く頭を下げた。

「いや…。こちらこそ、引き留めて、悪かった」

詩織のお父さんが、頭を下げてきた。

エーっと、どうしたらいいんだろ?

取り合えず。

「お休みなさい」

と挨拶する。

「お休み」

と挨拶が返ってきた。

「じゃあ、また明日」

「うん、お休み」

詩織が手を振って、見送ってくれる。

玄関を出ると隆弥さんが、車で待っててくれた。

オレは、自ずと助手席に座った。

「今日は、すみませんでした」

オレは、隆弥さんに頭を下げた。

「嫌、こっちも、迷惑かけたな。俺は、お前の事を認めてるわけだが、このままで良いとも思ってないんだ」

隆弥さんが、意味深な言葉を言ってきた。

「今は良いかもしれないが、そのうちすれ違うかもしれない思いをどういう風に伝えあうかを考える必要が出てくるだろう。その時は、距離を置くことを進めるがな…」

隆弥さんが、もっともらしいことを言う。

「そうだ。お前、教師目指してるんだろ。目標が同じだから、何かわからない事があったら、オレが相談に乗ってやるから」

エッ…。

「詩織に聞いてないか?俺は、一様教育学部に進学してるんだよ。元々詩織に勉強を教えてたのがきっかけで、教師になろうって思ったんだがな」

「そうなんですか。詩織さんからは、何も聞いてないです」

俺は、驚いた。

まさか、隆弥さんが同じ目標だとは…。

「じゃあ、優基からも聞いてないか?俺等の噂ぐらいは知ってるだろ」

隆弥さんが聞いてきた。

噂?

「なんだ、それも知らないのか…」

隆弥さんが、呆れてた。

「知らないならそれでいいよ。ただ、優基はその事を話たがらないから、聞かないでやってな」

隆弥さんが、苦笑いしながら言う。

一体、何があったんだろう?

「護は、詩織の何処に惚れたんだ?」

なんか、隠し事しない方がいいのかな?

「ひた向きさです。何に対しても一生懸命で、打ち負かそうとしてる姿が、心に残ってて」

オレは、思った事をそのまま口にする。

「そうか…。見た目で選んだ訳じゃないんだな」

「オレは、詩織が頑張ってる姿に惚れたんです。芯が強そうなのに以外と弱かったり、人の事を思って行動できるし、そんな詩織が、好きなんです」

オレは、堂々と口にした。

「ありがとうな。そう言ってくれて…。あいつは、見た目も可愛い方だから、そこしか見てない奴ばかりが寄ってくる。だから、俺等が見守ってたんだ。変な虫がつかないように…。詩織は、自分でちゃんと見つけたんだな。自分を受け止めてくれる奴を…」

隆弥さんが、寂しそうに言う。

「詩織が、今日フリーズしたのって、お前のせいだろ?」

確信を突かれて。

「そうです。オレが、はっきりしなかったせいで、詩織が…」

「アハハ…。良いって。詩織もメンタルを鍛えるためには、ちょうどよかったのかもな」

エッ…。

「怒ってないんですか?」

「怒る?そんな事ないぞ。これでも、冷や冷やしてたんだ。詩織が、元に戻らなかったらどうしようかと…な。原因が、わからなきゃ対処できないしな」

って、隆弥さんが苦笑する。

「今日は、色々あったが、いい経験になっただろ?」

「はい」

「今後とも詩織の事、頼むな」

「はい。こちらこそお願いします。お休みなさい」

そう言って、オレは隆弥さんの車から降りた。

詩織が言ってたより、優しいじゃん。

オレは、隆弥さんの車を見送ってからマンションに入った。


自分の部屋に入ると、携帯を取り出した。

゛詩織、今日は本当にごめんな。

オレの不注意で、心配させてばかりで…。

でも、不謹慎かもしれないが、お前がそこまでオレの事を愛してくれてた事、嬉しかった。

それにお前の親父さんにも認めてもらえたみたいだし…。

オレには、お前しか居ないんで、宜しく。

お休み 護゛

と打つと送信した。

すると、直ぐに返信がきた。

゛護。今日は、心配掛けてごめんなさい。

私、自身がこんなにも嫉妬深いとは、思わなかった。

愛しい人とずっと一緒に居たい気持ちばかりが、先走ってた。

護と婚約できるだけでも嬉しい。

お休みなさい 詩織゛

詩織…。

素直な気持ちがかかれてて、オレはその気持ちを受け止めてやりたいと思った。



翌朝。

オレは、何時ものように詩織の家の前で待っていた。

「行ってきます」

詩織の元気な声。

「おはよう」

「おはよう。行こうか?」

オレ達は、並んで学校に向かう。

「護。腕、組んでもいい?」

詩織が、聞いてきた。

「いいよ」

オレは、即答してた。

詩織は、嬉そうにオレの腕に自分の腕を絡めた。

「詩織。今日は、ご機嫌だね」

オレが聞くと。

「護と一緒に居てもいいんだって思ったら、嬉しくて」

って、ニコニコ笑顔の詩織。

そんな詩織が可愛くって、つい微笑んでしまった。

「オレも、嬉しいよ。その代わり、条件を必ずクリアするから、待っててくれるか?」

オレは、詩織の顔を覗き込むように聞くと。

「うん。護の事信じて待ってる。でも、その前にクリスマスイブのデート、無しにする?」

詩織が、寂しそうに言う。

「それは、ダメ。息抜きのデートなんだから、ちゃんとさせてください。って言うか、絶対するんだからな」

オレが、真顔で言うから、詩織の顔が綻んでいく。

「本当に…。嬉しいな。護と一日一緒に居られるんだね」

花が咲いたような笑顔を見せる詩織。

そんな詩織にオレは。

「そんな笑顔見せるなよ。オレ、我慢できなくなるじゃんか…」

って、耳元で囁く。

「今日は、一緒に帰ろうな。昨日みたいな事は、無いから…」

「そうだね。じゃあ、生徒会の仕事が終わったら、メールするね」

「ああ。その間、優基と一緒に図書室に居るから…」

オレは、詩織の頭を軽く叩いた。


詩織と別れて、教室に向かう。

昨日は、色々ありすぎて、疲れた。

でも、嬉しいこともあった。

って言うか、あんなサプライズがあるとは思わなかった。

自然と頬が緩む。

「おはよ、護。何にやけてるんだ」

そんな時に限って、優基が声を掛けてくる。

「おはよう。何でもねーよ」

オレは、慌てて否定したが。

「よかったな。婚約できる事になって」

小声だが、どこで誰が聞いてるかわからない。

「嬉しかったぜ。絶対、条件をクリアするしかないだろ」

オレは、自分が知らないうちに声が大きくなってた。

「護。興奮しすぎ」

優基が、苦笑する。

あっ…。

クラス中が、オレを見ていた。

「なぁ、玉城。お前の家で勉強会してもいいか?」

突然の申し出だ。

そいつの後ろには、ちひろ達も居た。

まぁ、親父は帰ってくるかわからんし…。

でも、後ろの奴まではなぁ…。

「オレ、わからないところがあるんだよ。お前、教え方上手じゃんか。頼むよ」

昨日、詩織と約束してるしなぁ。

他の女と引っ付かないように…。

悩んでると。

「あ、俺も混ぜて」

優基が、言ってきた。

「わかった。いいよ」

オレは、渋々了承する。

「やったー」

って、ちひろ達の方が、喜んでるんじゃないか?

そうなると、今のうちに詩織のところに行って、話してこないと…。

「優基、付き合え」

オレは、優基の襟首を掴んだ。

「護、苦しい…」

優基は、思いの外、感がきくらしい。

廊下に出ると。

「ありがとな。詩織が昨日みたいになるにはゴメンだったから…」

オレが言うと。

「やっぱ、ちひろが原因だったか…」

優基が、呟いた。

何で、知ってるんだ?

「今、何で知ってるんだって思っただろ?」

優基の質問に頷いた。

「昨日、お前が帰った後、詩織が話してくれた。って言うか、ちひろの事聞きにきた」

そうだったんだ。

「だから、さっきの勉強会もちひろ達の後ろ楯があるんだろうと思ったんだよ。あわよくば、護に接近ってな。それに、俺も詩織と約束したんだよな。ちひろを護に近付けないように見張る役」

優基が、苦笑する。

「悪いな」

「いえいえ。うちの妹を泣かすヤツは、兄貴達に怒られるんでね。そっちの方が、可哀想だろ」

優基が、おどけて言う。

アハハ…。

隆弥さん、怒ると怖そうだもんな。


詩織の教室に着くと。

「詩織、里沙ちゃん。ちょっと良いか?」

オレ達は、二人を呼び出した。

二人は、顔を見合わせてからこっちに来た。

「どうしたの?二人揃って…」

不思議そうな顔をしてる。

「詩織、ごめん。オレ等、勉強会をする事になって、一緒に帰れなくなった。本当にごめん」

オレは、胸の前で手を合わせて頭を下げる。

「勉強会ならしょうがないよね。受験頑張ってもらわないといけないしね」

詩織が、寂しそうに言うが。

「女の子、居ないよね?」

里沙ちゃんが問い詰めてきた。

「居ない。男ばっかりでやるから…」

核心を突かれて、焦る。

「護の家で、男女入り乱れて勉強会するんだね」

詩織が、オレに向かって言い放った。

「やっぱり、隠せないな…。ごめん。クラスメートの奴等が、勉強を教えてくれっと言い出して、オレの家、親が帰ってくるの遅いのも知ってる奴ばかりで…」

オレは、言い訳がましく言う。

「そうですか…。いいですよだ。私は、一人で帰りますから、頑張ってくださいね」

詩織は、そう言うと教室に戻っていった。

あから様に拗ねやがって…。

勉強会するだけで、そんなに拗ねることないだろうが。

だが、嘘をついたオレも悪い。

あーあ。

もう。

どうすればいいんだ。

「おい、護。取り合えず、教室に戻るぞ」

優基に言われて、教室に戻る事にした。


オレは、自分の席に座ると頭を抱えた。

いくらなんでも、あそこまで拗ねられると、可愛すぎる。

って、ちがーーーーう。

一人ツッコミしてる場合じゃないぞ。

どうしたらいい。

何か、解決法はないのか?

オレは、一昨日の事を思いだした。

゛図書室の個室で、勉強してた゛

って、忍ちゃんだっけ?言ってたよな。

個室って、貸してもらえるんだっけ…。

一時間目が終わってから、優基に聞いてみるか…。

オレは、大人しく授業を受ける事にした。


「優基。一つ聞きたいんだが?」

「何だよ?」

「図書室に個室ってあったか?」

オレが聞くと。

「あるよ」

優基が即答した。

「じゃあ、今日は図書室の個室で、勉強会しようぜ」

オレが言うと。

「あそこって、確か予約しないといけないんじゃ…」

優基が、あやふやなことを言う。

「そうなのか?」

「じゃあ、今から確認しに…」

「無理だよ。図書室空いてる時間じゃねえよ。昼放課にでも確認しに行こ」

優基が、冷静に答える。

「わかったよ」

オレは、昼放課が待ちどうしくなった。




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