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初デート

今日は、初めてのデートだ。

もしかして、オレ、初の私服デート。

うわー。

やべー。

何着てきゃいいんだ。

自分の中で、テンパってる。

エーッと。

これでもないし…。

あんま気取ったものもなぁ…。

どうしよう。

悩んでるうちに、時間が迫ってくる。

やば。

オレは、Tシャツにジーパン、皮ジャンを羽織って、家を出た。

待ち合わせまで、余り時間がない。

オレは、走って駅に向かった。


駅に着くと、詩織の姿を探した。

まだ、来てないか…。

オレは、駅舎の柱に凭れて、詩織が来るのを待っていた。

少しぐらい遅れたって、待っていられる。

詩織の事を考えてたら、何時間でも待っていられる。

「あれー。玉城君じゃん」

オレは、声がした方に振り返る。

やべー。

振り返るんじゃなかった。

会いたくもない奴等が、来やがった。

「ねぇ。暇してるなら、遊びに行こうよ」

取り巻きが、甘えた声で言ってきた。

「暇じゃねーよ」

オレは、嫌々ながら言う。

「ねぇ、玉城君。一緒にどっか行こうよ」

甘えた声で言い出す。

何だ?

「一緒に遊ぼうよ」

いい加減にして欲しい。

「悪いな。オレ、これでも待ち合わせしてるから…」

いい加減、どっか行って欲しい。

「そんな事言わないで。一緒に行こうよ」

って、諦めず腕を引っ張ってくる。

そんなに引っ張ったら、痛いだろうが…。

とは、あえて言わずに。

「いい加減にしてくれ!」

と口にしようと思った時だった。

視線を感じてそっちを振り返ると、詩織と視線が交わった。

「悪い、そこ退いて」

オレは、詩織が座ってるベンチまで行く。

「詩織。お前、何時の間にそんなところに…」

オレが、驚いてると。

「えーっと…。十分ぐらい前からかな」

詩織が、俯きながら言う。

「声掛けてくれればよかったのに…」

オレは、詩織が恐れてるのが伺えたから、優しい声音で言う。

すると、ゆっ<リと詩織かが顔を上げた。

「何時までたっても来ないから、何か遭ったんじゃないかって、心配してたんだぞ」

そう言いながら、オレは詩織の額を軽くつついた。

詩織は、つついた場所を軽く擦ってる。

「だって、私の今日の格好、シンプルすぎるし、それに護が、楽しそうに話してたから、邪魔なのかなって…」

寂しそうに言う詩織。

おいおい…。

「また、そんなところで、遠慮しやがって…。ほら、行こうぜ!」

オレは、笑顔で詩織に手を差し出す。

詩織が、オレの手をとろうと伸ばしてきたところに。

「待ってよ、玉城君。私達と遊ぶんじゃなかったの!」

と、ちひろの声が飛んできた。

その瞬間、詩織が手を引っ込めてしまった。

オレは、ちひろ達に振り返り、見据えると。

「ちょっと待て。オレ、そんな事一言も言ってない。それに、今日は、彼女と前から約束してたことだから、諦めな」

オレは、はっきりと断った。

今日は、オレだって楽しみにしてたんだ。

それをお前らに邪魔されてたまるかよ。

オレが、ちひろ達と向き合ってる間に、詩織が逃げ出そうとしてるのが眼に入った。

オレは、とっさに詩織の手首を掴んで、引き戻した。

そのまま、自分の胸の中に収め。

「逃げるな。オレは、お前と居たいんだから!」

声を荒げて言う。

「じゃあな」

オレは、ちひろ達に言い捨てると、詩織の手を引っ張って、改札口へ向かった。


オレは、詩織の手を握ったままホームで、電車を待つ。

「ごめんなさい」

突然、詩織がポツリと呟いた。

「何のごめんなさい?」

オレは、意地悪な言い方をする。

「何のって…」

詩織が、戸惑い出す。

「待たせた事に対してのごめんなさい?それとも逃げ出そうとしてのごめんなさい?」

オレ、こんなにも意地悪だったか?

「……」

詩織は、黙り込んでしまった。

「詩織。オレ、前にも言ったよな。オレにとっては、お前が一番大事だって伝えたはずだ!何で、逃げ出す。堂々としてればいいんだよ。それに、今日の服だって、行く場所に合わせただけだろ、恥ずかしがらなくてもいいだろ」

言葉は乱暴だったかもしれないが、なるべく優しい声で伝える。

「それに、昨日も言ったけど。オレは、お前が弱点だ。お前に何かあったらオレ、何も出来なくなる」

オレは、自分の胸の内をしっかりと伝える。

「護…」

詩織の消え入りそうな声。

「今度は、ちゃんと声掛けろよ」

「…うん…」

浮かないままの返事。

まだ、納得してないのか?

「この話は、これで終わりな。」

オレは、そう言って詩織の手を繋ぎ直す。

その時、ジャラっと小さな音がして目をやると、オレがあげたブレスレットだった。

「着けてくれてるんだな」

オレが、ボソッと言うと。

「うん。私のお守りだから…」

って、はにかんだ笑顔が、可愛い。

ったく。

大事にしてもらえてよかったよ。



遊園地に着くと。

「さぁて、何から乗る?」

オレは、パンフレットを広げて、詩織に聞く。

「やっぱり、最初はジェットコースターからでしょ」

と詩織がはしゃぎながら言う。

エッ……。

マジで……。

顔に出さないようにしてたんだが…。

「どうしたの?もしかして、苦手?」

って、詩織がオレの顔を覗き込んできた。

「違うよ。じゃあ、そうしようか…」

オレは、慌てて否定する。

そして、詩織がオレの腕に自分の腕を絡めてきた。

そのまま、ジェットッコースター乗り場へ…。


順番が来て、ジェットコースターに乗り込む。

うわー。

やばい。

顔が、引きつってきた。

「大丈夫?」

詩織の心配そうな声に。

「大丈夫だよ」

苦笑いを浮かべながら言う。

そうこうしてるうちに、ジェットコースターが動き出した。


乗り終えたオレは、グロッキー状態。

「…っ…」

近くにあったベンチに座り込む。

なんか、格好悪いところを見せちまってる。

「本当に大丈夫?」

詩織が、心配そうに聞いてきた。

「う…ん。カッコ悪いところ見せたなぁ…」

オレが、項垂れるように言う。

「いいよ。誰だって苦手なものあるから、気にしなくていいよ。それにカッコ悪いなんて思ってないよ」

詩織が、真顔で言ってくれた事に感謝した。

普通なら、からかわれる事なんだが…。

オレは、詩織に笑顔を見せる。

「次、何乗る?」

オレは、改めて聞く。

「じゃあ、バキクング!!」

詩織が、張り切って声を上げる。

おいおい…。

それも、絶叫系じゃねぇか。

まぁ、いいか。

詩織の笑顔が見れるなら、今日は我慢して付き合うか…。


楽しい一時は、あっという間に過ぎていく。

「最後にあれ乗ろう?」

オレは、観覧車を指して言う。

「うん」

詩織も、頷いてくれた。

そして、観覧車乗り場の列に並んだ。

陽が、傾いてきている。

辺りには、夜の帳が漂い始める。

陽が当たらなくなってっきて、少し冷えてきた。

「詩織、大丈夫か?」

オレは、少しでも寒さがしのげればと思い、詩織の肩を抱き締める。

詩織は、軽く頷く。

「順番だな」

オレは、詩織の肩を抱きながら、一緒に乗り込んだ。

観覧車が、ゆっくりと頂上に向かっていく。

詩織が、窓の外に釘付けになっていた。

「どうした?」

オレは、そんな詩織に声を掛ける。

「…ん。綺麗だなって思って」

詩織が、窓の外を指で指す。

街の明かりが、瞬き輝いている。

「ホントだな」

オレも、窓の方に向けた。

「詩織。オレ、頑張ってお前を守るから、ずっと一緒に居てくれるか?」

オレは、真顔で問う。

「うん」

詩織が、頬を染めながら、ゆっくりと頷く。

オレは、その返事を聞いて、嬉しくて口元が緩む。

それにつられるように詩織が、笑顔になる。

「お前、可愛すぎ」

オレは、その一言を言うと詩織の唇に自分のを重ね合わせる。

ヤバイ…。

詩織が、可愛すぎて、どうにかなって仕舞いそうだ。

「大好き」

突然詩織が口にしたかと思ったら、頬にキスされる。

うわー。

オレは、みるみる顔が熱くなってくる。

「不意打ちは、ダメだろ」

オレは、詩織を軽く睨む。

もう、こんなんじゃ、心臓がもたん。

詩織の行動にこうも振り回されてるんだもんな…。

でも、そんな詩織だからこそ、好きになったんだ。

改めて、自覚した。


観覧車が、地上に着き、オレ達は、お互いに手を繋いでおりた。

「そろそろ、帰ろか…」

名残惜しいけど、仕方がない。

「そうだね」

詩織も、なんだか寂しそうだ。

「ねぇ、護?」

詩織が、突然聞いてきた。

「うん?」

「これから、受験一色だよね」

何が言いたいんだろう?

「ああ、そうだなぁ。頑張らないとな」

オレは、自分に言い聞かせるように言う。

そして、詩織の方に目を向けると、なんだか落ち込んでるみたいだ。

「どうした、急に?」

オレは、心配になって聞いてみた。

「ううん、何でもない」

って、首を横に振る詩織。

何か、考えてるっぽいんだが…。

顔も、曇ってるし…。

何か、あるなら言って欲しいんだが…。

詩織が、言えるわけないか…。

「何?急に黙って…」

オレは、詩織が言いやすい様に話を持っていこうと、模索する。

「今日は、楽しかったなって…」

楽しかったって言ってる割には、寂しそうな顔を見せる詩織。

何だ、そういうことか…。

「本当だな。詩織の笑顔、沢山見れた」

オレは、詩織に笑顔を見せる。

そして。

「また、デートしような」

と、詩織に聞こえるように言う。

詩織が、一瞬戸惑う。

「今度は、どこがいい?」

オレは、詩織に笑顔のまま聞く。

「デートしてもいいの?」

詩織が、躊躇しながら聞いてきた。

やっぱりか。

「したくないの?」

オレは、逆に聞き返した。

詩織は、勢いよく首を横に振る。

「でも、勉強は?」

詩織が、心配そうに聞いてくるから。

「もちろんするさ。でも、息抜きも必要だろうが…」

オレは、詩織の頭を撫でる。

すると、詩織に笑顔が戻ってくる。

「じゃあ、クリスマスイブに水族館は?」

詩織が、上目遣いで聞いてくる。

「いいねぇ。じゃあ、水族館に決定だ!」

オレは、詩織を見つめる。

詩織が、満面な笑顔を見せる。

今日、一番の笑顔。

この笑顔、誰にも見せたくない。

何て、オレの中で一枚の記憶とかした。


だが、この後思わぬ事が起きたのだ。

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