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モノカミ殺し  作者: 骨々
1/4

毛玉は姉の頭部を噛み千切る

短編・中篇・長編で構成されているファンタジー、欲者シリーズのフレイ編。欲者の登場人物、フレイを主人公にしたもので、フレイの人間性や世界設定に関して書いた短編。フレイ編のヒロインとフレイが邂逅する話でもある。

一応、この話しから読み始めても話が分かる仕様になっています。細かい設定などは意味不なところもあると思いますが、後々、別の話で説明されて行くので、目を瞑ってくれるとありがたいです。


以下、作中の台詞や文章の抜粋。作品のイメージを掴む判断材料にして下さい。

・「朕茲ニ戦ヲ宣ス」

・「まるで俺たちが犯罪者のような言い草だな」

・「だが気にしない」

・「しろよ。もう一度言う。気にしろよ」

・俺テラ賢人。

・人が人として、当たり前に就く寝床にありつきたい。

・「そんなに寝床が欲しけりゃ、とっととママのお腹に帰りな!」

・人工知能のくせに、人間様を言い負かすとは何事だ。

 その大陸西部の山間には、木々の海が広がっていた。地面から露出した樹の根に苔が生えるほど、人が立ち寄らない森の深く。その海が途端に開けた空間に、縄を張られた大樹が聳える。

 大樹は、大人が数人で囲っても余りある太さを持ち、空の鳥でさえも、見上げれば首を痛めるほどの高さだ。その大樹の下に、その森では見慣れぬものがあった。

 人の子だ。浅黒い肌の子供たち。それも一人や二人ではない。一見で五指に余ると分かる数だ。そして、最も歳の行った子でも、十に届かないのが一目で分かる。

 その子供らは例外なく、聳える大樹に胴を括りつけられている。その面持ちは何かを悟ったように暗いものや、先の分からない恐怖に泣き出すものをあった。一様に泣き出しているのは、幼い子たちだ。

 しかし、それに比べて歳のいく者が、あやし、制する様子は全く見られない。唯々、地を見詰め、押し黙るだけだ。



 揺れた。

 まずは空気が揺れて、鳥が飛び、そして何かが地を擦る響きが、彼女の肌にも伝わった。その突然の変化に、異様さを感じた彼女は目を見開き、顔を上げて身を縮める。

 離れた所に縛られた姉や、同年の者達も同様だった。泣き出していた幼い子らも、それらの変化に少し遅れて反応する。嗚咽は漏らすが、涙は枯れたとばかりに、その流れを止めていた。

 見開いた目に何かが飛び込んでくる。開けた空間の先、木々の海から何かが這いよってくる。ガサガサと奇怪な、そして決して小さくはない、幾重にも重なった跫音きょうおんを立てている。

 それは毛玉だ。空間に毛玉が割って入ってきた。

 大きさは分からない。なにせ、彼女はそれ以上に大きいものを、自分が縛りつけられている大樹以外に見たことがなかったからだ。脚の数も分からない。それは先の大きさと同じで、彼女が両手の指よりも多くの数を知らなかったからだ。

 こちらに近付いてくる毛玉に対する恐怖から、自然と涙が溜まる。

 そして彼女が思い出すのは、大人たちの言葉だった。

「あなたは村のために、モノカミ様の許へ逝くのです」

「村の飢饉をモノカミ様に、お救い頂くのじゃ」

「これは、とても名誉あることなんだぞ」

「村のため」

「村のため」

「村のために……!」

 双子の姉は、頭部を毛玉に噛み千切られた。

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