表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/8

薄情な悪魔

「―――ん。―――ちゃん。レミィちゃん起きて」

「ん?うん・・・・・・」

体を起こすと、傍に霞がいた。起こしてくれたみたい。

「ありがと。霞」

「うん」

制服に着替えて、食卓に向かう。

その最中。

「ねぇ。レミィちゃん聞いた?」

「何を」

「昨日速報で入ったニュース」

速報で?そんなんあったっけ。

昨日はメディアに全く触れずに寝たから知らない。

「いや聞いてない」


答えると、霞は耳元で囁くように話した。

「あのね。ここらで有名な心霊スポットになってる、廃墟のホテルあるじゃない?そことその周辺の森が焼け焦げたってニュース」

「あ・・・・・・」

ああ。じゃあやっぱり昨日のは―――

「現実なんだ―――」

「え?レミィちゃん、どうしたの?大丈夫?」

霞の気遣いにも応えず、あたしは落胆していた。


朝食を終え、支度をしてると。

「ん?何これ」

机の上に、変な付箋があることに気づいた。

付箋なんて使ってないのに。

そこには『放課後、学校の屋上に来てください』というメッセージがあった。

筆跡は霞じゃない。より子さんのでもない。

じゃあ他の子?でもこの字、なんかヨレヨレ。

子供の字っていうより、大人の字って感じ。

一体誰が―――

「なにしてるのレミィちゃん!遅刻するわよ!」

はっとした。そうだ今から学校行かなきゃ。

付箋のことはとりま置いといて。

急いで施設を出た。


 △ △ △


放課後。

てか時飛ばしすぎでしょ。この間色々あったのに。

あたしは屋上に向かった。

何となーく書いた奴が分かったから。授業中に。

屋上のドアを開けると―――

やっぱり()がいた。

「お疲れ様です、レミィさん」

「やっぱり。疫病神だったんだ」

昨日と変わらない姿の疫病神がそこにいた。

「あたしをここに呼んだ理由は?」

「我々の新たな仲間を紹介しようと思いまして」

「仲間?」

え?仲間?いつの間に入ったの?

「いいですよー」


疫病神が合図を出すと―――

少し離れたところに何者かが現れた。

黒い翼を持った、全身黒い悪魔。

って!こいつは―――!

「テンプレ悪魔!」

「何だよその呼び名!?あのバカ三人組から名前聞いてないのか?」

「いや聞いてる。確か、グレッムだっけ」

「ああ。俺はグレッム。よろしくな」

腕を伸ばしてきた。あたしはちょっと離れる。

「ただの握手だぞ?」

「いやだって。悪魔は敵だし。てか何でこっちに来たわけ?どういう風の吹き回し?」

悪魔達は頭が悪い。でも嘘はつける。演技もできる。

だから信用しない。


あたしに離れられてグレッムは。

「確かに信用ならんかもな。じゃあ疫病神、()()出してくれ」

アレ?アレとは?

「了解しました。アレですね」

すると懐から一枚の巻紙を出した。

紐を解いて、紙を広げる。

そこには―――何かが書かれていた。

いや読めないわよ!日本語でも簡単な英語でもないんだから!

「何それ」

「これは契約書です」

「契約書?」

そんな物、なんで今見せてきたんだろう。


「内容としては『グレッムが協力する代わりに、疫病神は神や魔術の知識を与える。ただしグレッムが人を殺した場合は死を持って償う』ってことが書かれてる」

「はあ!?」

驚いた。そんな契約結んでたなんて。

てかそれで得られる物って―――

「あんた、神と魔術の知識が欲しくて協力したの?それを得て何がしたいの?」

聞くと、グレッムはきょとんとした表情になった。

「別に何かがしたいって訳じゃないが」

「え?じゃあ何でそれらが必要なの」

急に俯いて肩を震わせた。


「どうした?」

「必要?そういうんじゃねーよ!俺はぁ!ただ知りたいんだよぉぉ!!」

「へっ」

いきなり大声出したからびっくりした。

グレッムの勢いは止まらない。

「俺はな、昔から知識欲が旺盛だった。新しいことを知れるのが最大の喜びでな。よく本を読んで、知識を蓄えていた。いつからか神と魔術に興味を持ち始めて。様々な本を読み漁り、仮定づけ、ついには実験や発明も始めた」

「グレッム?」

なんか一人語り始まったんだけど。

「実験すればするほどに知識欲は強くなっていった。成功しても失敗してもだ。でも、そのうち資料は集め終えてしまった。もう情報源は無くなったんだ・・・・・・」

ため息をついてうなだれた。そんな悲しむこと?


「しかし!」

急に顔と声を上げた。

「奇跡が起きた!疫病神が長い眠りから覚め、再び悪魔狩りを始めたぁ!俺はあんた達を見て思った。こりゃもう仲間になるしかないと。そして!さらに知識を深めたいと!」

「ハーッハッハッハッハ!!」と大笑いするグレッム。

悪魔って変なやつしかいないのかな。


「仲間を裏切ることになってもですか?」

疫病神の質問に大きく頷いた。

「さらに神や魔術について知れるなら、あんな馬鹿どもの命なんてどうでもいい!」

何こいつ、薄情すぎるでしょ。

自分の知識欲のために仲間を裏切るなんて。

「サタン王は恐ろしくないのですか?」

「あんな、不良グループのイキってるリーダー的なやつ尊敬も信頼もしてねーよ。あいつの命なんざどーでもいい」

「薄情だなほんとに!?」

ついに口から出た。


「と。そんな理由だ。改めてよろしく」

勝手にまとめて、また握手を求めてきた。

「それだけで信用すると思う?」

あたしはまだ信用しない。

「レミィさん。そんな警戒しなくても」

「うるさい。てかあんたは何ですんなり信用したわけ!?」

全く警戒しない疫病神が不思議で仕方ない。

「素敵な物を作ってくれましたからね」

「は?」

素敵な物?

「あー。そういえば言ってなかったな。ちょっと待っててくれ」

そう言うと屋上の柵に近づいていった。

「グレッム?」


そして―――飛び降りた。

「え?は!?ちょ―――」

慌てて柵まで駆け寄る。

だって目の前で人―――いや悪魔が飛び降りたんだもん。

そりゃ誰だって焦る。

見下ろすと、グレッムは翼を風に乗せて滑空してた。

「は?」

無事だったのかよ!死んだかと思ったわ!

「あ〜あ。心配して損した」

「心配してあげてたんですねぇ。レミィさん、お優しい」

なっ―――!

「別に仲間って認めたわけじゃないから!飛び降りたら全然知らない人でも心配するでしょ、普通!」

「はいはい」

こいつ、ほんとムカつくぅぅぅ・・・・・・!


するとグレッ厶が突然現れた。

「それ、どうやってんの?」

「それ?ああ、瞬間移動のことか。フツーに魔法」

「フツーに魔法って・・・・・・」

あたし達にとって魔法って非日常なんですけど。

さっきと違って、今度はリュックを背負ってた。

「何持ってきたの」

グレッムは答える代わりに、リュックを下ろして中を漁り始めた。


「んーと。確かここに―――お。あった」

取り出したのは―――黒猫のストラップ?

「何それ」

「お手軽にエクスポーズに変身できる道具だ」

「え」

驚いた。まさかそんな物だったとは。

てか『お手軽に』って。変身と家事は違うわよ。


「これを使えば、長ったらしい詠唱を唱える必要が無くなる!それに加え、2秒で変身できる!」

「2秒!?」

短っ!?この前のなんて30秒くらいあったのに。

「さあさあ。このすごい変身アイテム、受け取らないわけないだろう?」

なんか通販の人みたいな宣伝してきたんだけど。

「ま、まあ。それで本当に2秒で変身できるなら」

「じゃあ使ってみるか?」

「まあ、とりあえずね」

グレッムから手渡され、まじまじとそれを見つめる。


モフモフの体の黒猫は、キラキラと瞳が輝いてた。

デコストーンかな、これ。

「目に魔石を埋め込んで変身の魔法を刻んだ。あとは発動のきっかけとなる言葉を決めるだけだ」

あ。これ魔石なんだ。

「てか、きっかけとなる言葉って。言う必要ある?」

「触るだけで変身できるようにしたら、生活しづらいだろ」

「あ。確かに。でもどんな言葉にすれば―――」

「別に何でもいい。『変身!』でも。その道具に『あ。これを言ったら発動すればいいのか』って覚えさせればいいんだ」

「ふうん。じゃあ―――」


あたしは二人から少し離れた。

そのストラップを左手に持って、天高く上げた。

じゃあここはシンプルに―――

【エクスポーズ!】

そう声を張って唱えた瞬間、またあの光に包まれた。

でもそれは一瞬で終わって。

光が消えたとき、あたしは変身してた。

え!?すごっ!

「な?すぐ終わったろ」

グレッムがニヤニヤ笑いながら、話してきた。

「マジでヤバいわ、これ」

あたしはじっくり感動を噛み締める。

そうしているうちに、変身が解けた。


「レミィさん。感動してる所、悪いと思いますけど。私の話も聞いてくれませんかね」

ここまで黙ってた疫病神が、話しかけてきた。

「ん?何?話って」

「グレッムくんは、私のためにも道具を作ってきてくれたのです」

「へー。どんなの?」

答える代わりに片手を伸ばし、手の平を立てた。

すると、手の平に小さな闇?が渦巻いた。

その中から現れたは―――鎌!?

デカい鎌。死神が持ってるようなやつだ。

全体が現れると闇が消え、疫病神は鎌の柄を持った。

「それがあんたの道具?」

「ええ。魔力を調節できない私に、武器を作ってくれました」

「へー」


「新たな仲間への手土産にってことで。徹夜で作ったんだぜ?」

フフンと得意げなグレッム。

「まあ。ここまでやったなら、ちょっとは信用してもいいかもね?」

ほんとはかなり信用してるけど。

徹夜で手土産を作って、持ってきてくれた訳だし。

「じゃ。三度目の正直。改めてよろしく!」

「こちらこそ」

今度こそ、ちゃんと握手した。

こうして、あたし達に新しい仲間が増えた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ