初☆変☆身
疫病神が呪文を唱えると、あたしの体が光り始めた。そして光の空間に包まれた。
光の空間の中で変身ってプ○キュアかよ。
すると急に―――服が消えた。
「!!ギャアアアアア!!!」
どデカい悲鳴をあげた。
だってあたし、全裸の状態なんだよ!?しかもおっさん疫病神の前で!!
例え光の空間で隔てられていても!意識しちゃうと羞恥心が湧いてくるわよ!!
(うぅ・・・・・・もうお嫁にいけない・・・・・・)
絶望している間に、あたしに服が着せられてく。
赤いワンピースに黒いタイツ。靴は黒ハイヒール。
首には首輪みたいに紺のチョーカーが巻かれる。
さらに髪も光り始めて、長かった金髪は銀髪のボブになった。
頭には猫耳が、お尻から尻尾も生えた。
でもなんか、どこか変わってる気がする。
どこかな?何か大事なことが変わって―――
光の空間から出ると、疫病神が笑顔で迎えてきた。
「おかえりなさい。どうでした?初変身は?」
「どうもこうもな―――」
そこで違和感を覚えた。
疫病神の奴、さっきよりデカくなってない?
微妙な差だけど、ちょっと背が高くなったような―――
「あんた、ちょっとデカくなって―――」
「いいえ。レミィさんが小さくなったんです。12歳くらいでしょうか?」
「え?」
言われて全身を見渡す。
確かに、変身前より胸が小さくなってる。
「は?何これ」
「それがあなたの本性なんですよ。“子猫エクスポーズ“といったところでしょうか?」
また、クックと気味悪い笑い声を出す。
「エクスポーズって、動物に寄るの?」
「まぁ大体は。変人と呼ばれる人は異形の存在になると言われていますが」
「ふぅん」
「レミィさんの本性は子猫のように、幼くてワガママといったところですかね」
「あ?」
何か、バカにされてるみたい。
「何?ナメてんの?」
「ふふっ」
その最後の笑いに。ついに堪忍袋の尾が切れた。
一気に奴との距離を詰める。殴ろうと思ったけど―――気づいたら、引っ掻いてた。
奴の頬から滴り落ちる紅を見つめて、やっと落ち着いた。
そうして思い返すと―――
「あれ?あたし、さっきすごい速さで走ってたよね!?」
いつもより、ずっと速く走ってた。
「そうでしょう?今のレミィさんは猫のように、俊敏で柔軟で可愛らしい」
疫病神は自分の頬を拭った。すると傷が消えてた。
「へー。傷、すぐ治るんだ」
「傷をつけたこと謝らないんですね。あと可愛いって言っても反応なし・・・・・・」
「あたしが可愛いのは当たり前だし。バカにした方が悪いし」
「そうですか」
「てか!それよりも!文句つけたいことがあるんだけど!?」
「はい。何でしょう」
どうしてもこれだけは言いたい!!
「変身の時、あたし裸になったんだけど!?何あの変身!?」
「はい?何か問題あります?」
こいつ・・・・・・相手の立場に立って考えられないの!?
「15の女の子が、あんたみたいなおっさんの前で裸にされる。その時に感じる羞恥がどれほどのものか、想像つかないでしょうねぇ、あんたには!!」
あたしは顔を真っ赤にして激昂した。
「まぁ確かに。そこは配慮が足りていなかったのかもしれません。申し訳ございません」
意外にも。疫病神はすんなり謝って深く頭を下げた。
「ですけど。それはそういうものですから。改善しようにもできません」
はあ!?
何こいつ、ケロリとしてんだよ!?
「はああ!?ざっけんな!!あたしは―――」
「レミィさん。今は両目で私を捉えられるのでは」
「え?」
疫病神に言われて思い返すと―――。
確かに。今は両目が見える。右もちゃんと。
え?それじゃあ―――
焦って顔の右側に触れる。
でもあの感触は無かった。
あたしがその部分を隠す原因となった、あれの感触が。
「うっそ。無くなってる・・・・・・?」
「エクスポーズはあなたの本性ですから。外側にある傷やタトゥーなんかは消えますよ。もちろん古い火傷痕も例外なく―――おわっ」
また頭にきて、奴に回し蹴り。
でも今度は静かに。何も言わずに。
「知ってたのかよ」
避けられて、あたしは疫病神は睨む。
それでも奴は余裕そうにニコニコ。ほんと、ムカつく。
「ええ。あなたが轢死したときに、バッチリ見えてましたから」
「クッソ」
舌打ちして足を下ろす。
その時。
鼓膜を破るような、破裂音が響いた。
「うおらああ!!クソガキィ!覚悟しろおおおお!!」
扉を蹴破って、オーセキが入ってきたみたい。
「うわっ」
「てめぇら、ここから無事で帰れると思うなよ?」
奴の顔を見ると、血管が浮き上がってて、右眉がヒクヒク震えてた。
こうして見ると、なんか剛沢に似てる。
「うっさいんだよ。今のあたしをナメんなよ」
オーセキが襲いかかってくる―――と思ったら。
奴は首を傾げて不思議そうにしてる。
「誰だお前」
「は?」
一瞬、何言われたか分からなかったけど。
少しして理解した。
(こいつ。変身前のあたしと、今のあたしが一緒だって気づいてない)
正直呆れた。声とか主語で分かるしょ。
「ほら。あたしよあたし」
「あたしって誰だよ」
「さっきの金髪の」
「うん」
「片目隠してた」
「うんうん」
「可愛い女の子」
「う?うん」
「これで分かったでしょ」
オーセキは腕を組んでうんうん頷いた。
顔をバッと上げて、一言。
「分からん!やっぱり誰だお前」
「はああ!?」
何であんなにヒントあげて分かんないの?
疫病神が奴に近づいて、何か耳打ちした。
すると、みるみるうちにオーセキの表情が変わっていく。
「お前・・・・・さっきのあの女かああああ!!」
それは怒りのこもった声だった。
言うやいなや、オーセキは拳をかためて迫ってきた。
「わ!!」
身を翻して避ける。
奴の拳はそのまま直進し、壁を突き破った。
「うっわ。めちゃ怪力じゃん」
「ぶっ殺すううう!!」
すぐに振り返って、また迫ってくる。
今度は姿勢が低い。
(できるかな?)
あたしは思いっきり足に力を込めた。
奴が迫りくる刹那。一気に解放し、跳び上がる。
やった!上手くいった。
あたしは奴を跳び越えた。
「っと。すげー。超人みたい」
「っ―――!ナメんなよクソガキィィィ!!」
素直に感動してたら、また怒らせたみたい。
懲りもせずまた全力パンチ。
さっきのように翻して避ける。
あたしだって、避けてるばかりじゃいられない。
爪を立て、奴の横っ腹を裂いた。
肉を抉る。異常で、でもどこか心地よい感覚があった。
「ぐわああああ!!!」
オーセキは倒れ込んだ。
裂かれた腹からは黒い液体が止まることなく流れ出てる。
「キッショ。血、黒いんだ」
「ううう、ひぃ・・・・・・ひぃ・・・・・・」
もはや瀕死の状態。
てか一発でこんなになるの?弱すぎじゃない?
「止めてくださぁい・・・・・・俺が悪いですぅぅ。もう、攻撃しませんから、許して―――」
手のひら返したように態度変わった。
さっきまでの闘志も、今はゼロ。
なんか可哀想。
悪魔とはいえ、さすがにここまできたら攻撃はしない。
「その言葉、本当?」
「は、はいぃぃぃ・・・・・」
「ならゆる―――」
「レミィさん。彼らは世界征服を企んでいるのですよ?」
横から疫病神が割って入ってきた。
奴に言われて思い出した。
そういえばそうだった。種族一丸となって企んでるんだった。
「はあ!?何言ってんだあんた!?世界征服なんて、誰も考えてねぇよ!!」
え・・・・・・?
オーセキの言葉に耳を疑う。
え?いやだって疫病神はそう言って
・・・・・・
「あ!!」
「何!?何ですかぁぁ!?」
「レミィさん?」
そういやこいつって―――
「あんた300年封印されてたって言ったわよね?」
「はい」
「あんたが言ってるのって、300年前の悪魔達の話じゃない?」
「あ・・・・・・」
疫病神はやっちまったって感じに額を抱えた。
ほらやっぱり!
勘違いでこんな目に遭わせちゃって、オーセキに申し訳ないな。
「ええっと。なんか、ごめん」
とりあえず謝ろ。
でもその後。あたしは衝撃の言葉を耳にする。
「サタン王は、悪魔みんなに『好き勝手やればいい』って言っただけ!だから俺達は!人間の世界で好きに遊んで、好きに暴れて、好きに殺してんの!それだけ!」
「は・・・・・・?」
オーセキは『俺達は世界征服なんてしてない』って言いたいんだろうけど―――
今奴が言ったことは見過ごせない。
「あんた、今自分が何言ったか分かってんの?」
「え・・・・・・?」
さっきの奴の言葉は、事実は―――
「あんたさっき、『俺は悪者です』って自分で言ったのよ?それ分かってる?」
「でも世界征服はしてな―――」
「いつ、誰が。悪いのは世界征服だけって言った?好き勝手に暴れるのも、殺すのも十分“悪“だけど?」
さっきの謝罪は取り消す。こんな極悪ヤローに申し訳なさなんて微塵もない。
「やっぱり殺すわ、悪魔共」
「あ、ああ・・・・・・」
オーセキは絶望してるのか、逃げもしない。
あたしは容赦なく爪で、縦に大きく切り裂いた。
黒い血が吹き出し流れ出て、やがて止まった。
「世界征服なんてしてなくても。悪者に変わりはなかったね」
ゆっくり静かに、血が流れ出てる死体を見て。
あたしは一言呟いた。
「そうでしょう?ですから、これからも躊躇なく。悪魔狩りをしてくださいね」
疫病神はこんな時もニコニコ。
人の心無いの?こいつ。
「オ〜〜〜〜セキ〜〜〜」
ゴロンゴロンと変な音を立てながら、ニコラスが上ってきた。




