悪魔はいた。本当に
着いた場所は―――心霊スポットとして有名な廃墟のホテル。
「何でこんな気味悪い場所に・・・・・・」
「レミィさん。隠れましょう」
疫病神に腕を引かれ、崩れた壁の中に隠れた。
「は?何で急に」
「来ましたよ」
疫病神の指さした先を見る。
そこにいたのは―――悪魔だった。
なんていうか、もう悪魔としか言いようがない。
黒い体で口は嘴みたいで、角生えててさ、翼や尻尾もあって―――。
えっと、つまり。
皆がイメージするような?世間一般で伝えられるような?とにかくそんな悪魔!!
最初の一体目はね。
後のはキモいのばっかり。
首だけのやつとか、腕が六本あるのとか、髪長すぎるやつとか―――んて貞○(髪長い悪魔。顔隠れてるからそう呼ぶことにした)こっち見てない?
危機を感じて姿勢を低くする。
「うわ。マジじゃん。キモ」
「さすがレミィさん。悪魔相手にも正直ですね」
クックッと疫病神が笑う。っておい!!
「やめろ笑うな。バレるだろ」
小声で注意。さらに足を踏む。
「痛ぁい・・・・・・」
子供みたいな反応した。やっぱりキモいこいつ。
まぁいいや。こいつのことは放っておこう。
それよりも今は悪魔達の方が気になる。
見ると、首だけの悪魔以外は服着てる。
The悪魔って奴と貞○は全身、腕六本は下半身だけ。
そして今、悪魔達は輪になって何やら話し合ってる。
「何してんのこいつら」
「世界征服のために作戦でも練っているのではないですかね」
「世界征服?そんなありきたりな悪事してんの?」
「世界征服がありきたりですか」
「そうでしょ。ロ○ット団も鷹の○も世界征服企んでるわけだし」
「フィクションですけどね」
「こっちは本気な訳?」
疫病神は真剣な表情で答えた。
こんな顔できるんだ、こいつ。
「はい。悪魔の王・サタンを指導者として世界征服を企んでいるのですよ。悪魔達は」
「ふーん。ソロモン72柱ってやつ?」
「そんなのただの作り話ですよ」
「へー。そうなんだ」
「レミィさん、ソロモン72柱知ってるんですか」
「んーと。それが悪魔のことだってのは分かる。どんなのがいるかは知らん」
「そうですか。まぁ知る必要もありませんが。それらの方がよっぽど賢くて強いと思います」
「そうなの?」
「この現実にいる悪魔達は、ほとんど欲と快楽の塊みたいなものですから。あまり頭は賢くないんです」
「サタンも?」
「うーん。どうでしょうかね・・・・・・」
疫病神は珍しく難しい表情になった。
「私、300年も眠っていまして。今のサタンが私の知っているサタンかどうか―――」
はあ!?
奴の口から衝撃的すぎる言葉が出てきた。
「ちょっと待って!今何て言った!?」
「え?ですから私、300年も眠っていて―――」
「そこだよ、そこ!」
「そこ?」
「300年も眠ってたってとこ!」
初耳なんだけど!?
「え?それってさ、封印されてたってこと?」
「まぁ、はい。そうですね」
「そうですねって。誰に封印されてたの?」
「私が知っている300年前のサタンです」
「え。何それ、めちゃくちゃ強いじゃんサタン」
「ええ。彼は魔法使いとしての才覚があったと思います」
「魔法使いって・・・・・・ククッ。ブハッ!」
「レミィさん?」
思わず吹き出しちゃった。
魔法使いってファンタジーかよ。そんでそんな夢みたいなことを真剣に言うおっさん疫病神―――
傑作!ほんと傑作!
「お前達、さっきからそこで何をしてるんだ?」
ヒッ!?
嫌な予感がした。いや、それしかあり得ない。
そ〜っと後ろを振り返ると―――
悪魔のうちの一人がいた。
あの“The悪魔“って見た目した悪魔。テンプレ悪魔って呼ぼうかな。
って!今はそれよりも。この状況を何とかしなきゃ。
「ええっと。それはぁ―――」
「肝試しです。ここは本当に出る場所だと聞きまして。興味が湧いて、ね」
疫病神がそれらしい理由を言ってくれた。
意外とやるじゃん。
「二人だけで?」
「はい」
「そうか―――」
テンプレ悪魔はくるりと背を向けて去っていった。
だけど。ただ悪魔の輪に戻るんじゃなくて―――
もとはドアがはまっていた穴から、そのまま歩いて行っちゃった。
他の悪魔達はあたし達をちらちら見ながら話し合ってるのに。
「は?なんであいつ」
「彼は他の悪魔と違って賢明なようです。私が人知を超えた存在だと悟ったようですね」
疫病神が耳元で囁いてきた。
そういやこいつ“神“だった。
え?それじゃあ他の悪魔達、バカじゃない?
本当に知能が低いのかも。
「お〜じょ〜うちゃんっ!な〜にして〜んのかな?」
首だけの悪魔が話しかけてきた。逆デュラハン悪魔って呼ぼう。
変なとこ伸ばす、変な喋り方。キモさが増したわ。
「だから肝試しよ、肝試し」
「おうおう。肝試しだろうが何だろうが、俺等の縄張りに入ってきた奴らを、見逃してやると思うなよ?」
腕六本の悪魔が近づいてくる。
って、こっちくんなアシュラ悪魔!
「・・・・・・」
そして貞○は何も喋らない。てか口あるのかな?
いや!今はそんなことよりも!
近づいてくるアシュラ悪魔を何とかしないと!
「っ―――!何とかしてよ疫病神!」
「皆さん、先ほどの悪魔は仲間ではないのですか?」
っておいぃぃぃ!!
関係ないこと聞いてんじゃねーよ!
「はぁ!?何聞いて―――」
「ああ〜。グレッムか〜。あ〜いつは〜、ちょ〜っと変わって〜るから〜ね」
逆デュラハン悪魔が答えた。
グレッム。
それがあいつの名前。なんか、飛行機のエンジン壊すっていう「グレムリン」に似た名前。
「変わってるとは?」
疫病神はまだ続ける。
「ん〜。な〜んていうか〜、かた〜ぶつっていうか〜。賭けと〜か、あそ〜びとかに興味な〜いみたいな〜んだ〜よ、ね」
「ああ!もう!ニコラスてめぇ間延びしすぎなんだよ!俺が説明する!」
アシュラ悪魔が怒って横から入ってきた。
案外、短気なのかも。
「グレッムはつまんねー奴だ。いっつも本読んでてな。俺等が遊びに誘っても乗らねえ。それに―――ちょっと頭がおかしい。時々、黒魔術の研究だとか神がいた時代の調査だとか、意味不明なことやってんだよ。あいつ」
アシュラ悪魔はため息をついて、右斜め上の腕で頭をかいた。
なんかイライラしてんのかな。
「オーセキは〜相変わら〜ずお〜こり〜っぽいね〜」
逆デュラハン悪魔改め、ニコラスはケタケタ笑った。笑うと転がるから、キモさがさらに増す。
「・・・・・・」コク…
貞○は何も言わず頷いた。いい加減喋れよ。
「ふむふむ。そんなことを・・・・・・」
疫病神は顎に手を当てて、なんか考えてるみたい。
「って!うおい!!」
アシュラ悪魔改め、オーセキが声を張り上げた。
何こいつ。いきなり声上げて。
「うるさい。何?急に」
「何じゃねーよ!てめぇら、俺等の縄張りに入ってきた侵入者だったわ!危うく忘れるところだったぜ」
奴は三つの拳を鳴らす。
「へへへ。てめぇらが悪いんだぜ〜?勝手に俺等の縄張りに入ってきたんだからよぉ」
ヤバい。こっち来る。
思わずあたしは後ずさる。
「何、する気・・・・・・?」
「何って、殺すに決まってんだろ〜?しかもただ殺すんじゃねぇ。俺の自慢の腕力で、お前の腕と脚を引きちぎって、逃げられなくなったところで次は首を―――ガッ」
やっぱりこいつ、バカだ。
あたしは話してる隙を狙って、奴の金的めがけて蹴りを入れた。見事に入ってオーセキは倒れ込む。
「ぐっ・・・・・・うぅ、いてぇよぉ」
苦しそうに声を上げる。さっきまでの気迫が嘘みたいに、今はなんとも情けない醜態を晒してる。
「ブフッ」
思わず吹き出しちゃった。
「!っざけんなよぉぉぉ!クソガキィィィ!!」
そんなカッコ悪い捨て台詞を吐く奴をおいて、あたしは逃げ出した。
△ △ △
「はぁ、はぁ、はぁ・・・・・・」
どれだけ走ったんだろう。
あたしは階段を全力で駆け上がった。
今居るのは多分三階か、四階。
膝を押さえて、少し休憩。
ってか。疫病神の奴、一体どこに―――
「レミィさん♡」
「ひゃあ!!」
耳元で名前を囁いてきた。それもなんか楽しげに。
「何すんだよ!」
「わっ」
思わず回し蹴り。それくらい驚いたんだよ、こっちは!
「危ないなぁ。いきなり何するんです?」
「そっちが先に驚かせてきたんでしょーが!」
ほんと冗談じゃない。心臓が出てくるかと思った。
「で、これからどうするの。あいつら、簡単には諦めないよ。隙見つけて逃げる?」
「そうですねぇ。出口から出るならまだしも、レミィさんは階段を上ってしまった訳ですから。これじゃ逃げられませんね」
そう言ったら、またクックと笑いやがった。
何その言い方。あたしが悪いみたいじゃん。
まぁ確かに。よく考えもせずに上ったのは、良くないと思うけど。
でも、逃げられないんじゃどうしようもない。
「じゃあ、どうすんの」
「逃げられないのなら―――」
疫病神はあたしに近づいて、手を握った。
「戦うのです。あなたが」
「は?」
戦う?あたしが?
そんなの―――
「ムリだろ!?」
「いえいえ。あなたなら出来ます」
「どうしたらできんのよ、あたしに。さっきみたいにケンカっ早いところはあるけど、スポーツやってないから実力は無いけど?」
「あなたの心を体現した怪物“エクスポーズ“になるのです」
エクスポーズ?
「何それ」
「エクスポーズとは、対象の本性を肉体自身に投影する魔法で、変身した怪物です。変身すれば、驚異的な身体能力が手に入りますよ」
じゃあそれになったら―――
「あの悪魔達と対等に戦えるの?」
「ええ。じゃ、魔法かけますね」
「は!?」
いやまだ変身するとも、戦うとも言ってな―――
「貴殿の心を現し、その影を身体に映せ。【二ヘスィー・エクスポーズ!】」
疫病神は止まることもなく、呪文を唱えた。
小生は疫病神とレミィのやり取りが好きです。




