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第56話 強くなる余地

 ************************


「アハハハハハ……マジかよ……もう指一本動かせない」

 死んだと思われたレオナルド。

 自らの極大魔法を跳ね返し、その瞬間、自分の異空間に(のが)れていた。


(やばかったな……コンマ1秒早ければ、地上が吹き飛び、

 コンマ1秒遅かったら、俺が吹き飛んでたな……

 どうする?……今戻ってベリアルの隙をつくか?……

 無理だな……もう体が動かない……

 悪魔も大勢居たしな……まいったな……)


「……レオナルド……」

「……ん?声がした?まさかな……

 俺の異空間に声を届かせる事なんて誰にも……」

「レオナルド」

「……気のせいじゃない……誰?」

「アナスタシアと言います」

「アナスタシア?教会に(まつ)られている女神様と同じ名前?

 えっ?まさか女神様?」

 異空間が、キラキラした光の粒で満たされていく。

 その光が、静かにレオナルドに入っていく。

「はァァァァ〜暖かくて気持ち良い……」

 レオナルドの身体は、徐々に回復していった。


「ありがとう!女神、アナスタシア様……

 よ〜し!これなら、もう一度戦える」

「お待ちなさい。今の貴方で、ベリアル率いる悪魔達に勝てますか?」

「……でも、家族が……友が……皆んなを守らなくては……」

「急がなくても大丈夫です。貴方の跳ね返した大魔法の爆発で、

 あそこに居た悪魔族の大半も消滅しました。

 ベリアルは、体制を整えるべく、一旦帰っていきましたよ?

 いずれまた来るでしょうが、体制を整えるには1年は掛かるでしょう。

 時間ならあります。貴方は、しばらくここで修行なさい」

「俺、今以上強くなれるでしょうか?

 最近、ここ異空間で、いくら訓練しても、

 自分より強い相手がイメージできなくて……

 頭打ちというか……」

「確かに、剣ではもう神を超えていましたね」

「神?ベリアルの事ですか?奴は本当に神なのですか?」

「ええ、神と言えなくはないですね……ベリアルは元々天使……

 力を付ければ、神となりうる存在でした」

「つまり、神になり得る条件は満たしていた?そういう事ですか?」

「その力を得たものが、神界に集い、神となる……

 神とは、誰かが認定するものでもありませんから……

 ベリアルが神……まあ、そう言えなくもないですね……」

「魔法は使えず、剣では奴を超えているにも拘らず斬る事が出来ず……

 俺はどうやったら、奴に勝てるのですか?

 どうやったら、今の自分を超えられるのですか?」

「神界に来ますか?そこには貴方より、魔法に長けた神……

 剣に長けた神……神々に教えを乞うては、どうでしょう?」


「そんな時間が有るでしょうか?

 この中でしたら、地上に比べて時間が経つのが遅いのですが、神界は?」

「時間の流れは地上と同じです。

 そうでなければ、地上を見守る事は出来ません」

「ここでは、10年訓練しても、地上の数日。

 神界に行って、間に合うのでしょうか?

 次にベリアルが仕掛けてくるのはいつ頃か分かりますか?」

「1年は掛かると言いましたが、

 実際、半年後か……一年後か……正確な時期は私にも分かりません。

 ですが、自らの能力が頭打ちだと思っているのでしたら、

 神界で修行する方が良いのでは?

 私には、貴方には、まだまだ伸び代がある様に思えますが……」


 女神の助言を受け入れたレオナルドは、神界に来ていた。

 白で統一された石造りの建物……着ている物も白く、

 (けが)れが一切ない世界に、レオナルドは居た。


「俺が剣神だな」

「じいちゃんと同じ〝剣神〟……称号ではなく、本当の剣の神……」

「おう、サウザー・キャンベの事か?あいつは、俺が加護を与えたんだよ?

 人間にしては、なかなか大したもんだったな」

「俺にも加護を頂けませんか?」

「俺が加護を与えたサウザーを、遥かに越しているお前に、

 俺の加護は必要ないだろ?……なんてな……

 お前は既に、神々の加護をたくさん持ってるぜ?

 だから、俺と鍛錬し、更に剣を極めたら良いんじゃないか?」

「未だ強くなる余地が?」

「どうかな?ちょっと手合わせしてみるか……」



「いきます……」

 〝ドンッ!〟〝スパッ!〟

「な……斬ったはず?」

 剣神は、一歩も動いていない様に見えた。

 神剣だから斬れなかった訳じゃない。剣が届いてない様だった。

「ほら、どうした?休んでないで、どんどんこい」

「イヤ〜!」


「ハアハアハア……かわしているのですか?それとも……」

「もちろんかわしているぞ?見えんか?見えなくて当たり前。

 目などで追わずに、全身で感じるんだ」

「〝感じる〟……その事は、分かっていたつもりだったのに……」

「まだまだだな……魔力との融合も未だ足りていないと見た」

「それは?」

「身体強化みたいなのはやってるんだろ?」

「ええ」

「俺は避けているって言ったよな?あの動き、お前に出来るか?」

「無理です」

「だろ?もっと完璧に……そして自然に融合出来れば、お前にも可能だぞ?」

「どうすれば良いのですか?」

「毎日俺と手合わせして、俺のスピードについてくる鍛錬をするしかないな。

 少し動きを遅くして、徐々に上げていってやるか……」

「どれくらい鍛錬すれば?」

「まあ、普通なら早くて1000年?」

「それでは到底……」

「普通ならと言ったはずだ。お前、どう見ても普通じゃないだろ?

 ただの人間が、剣の神と、手合わせ出来ると思うか?」



 想像を絶する訓練が、連日続いた。

「お前、変態だろ?

 〝汗と涙で顔を汚し、それでも歯を食いしばり……〟

 って言う、きつ〜い訓練だぞ。何、笑ってんだよ?」

「……笑ってます?そうですね……楽しくて楽しくて……」

「やっぱ、変態じゃね〜か……」

数ある作品の中から見つけ出し、お読みいただき、ありがとうございます。

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