第56話 強くなる余地
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「アハハハハハ……マジかよ……もう指一本動かせない」
死んだと思われたレオナルド。
自らの極大魔法を跳ね返し、その瞬間、自分の異空間に逃れていた。
(やばかったな……コンマ1秒早ければ、地上が吹き飛び、
コンマ1秒遅かったら、俺が吹き飛んでたな……
どうする?……今戻ってベリアルの隙をつくか?……
無理だな……もう体が動かない……
悪魔も大勢居たしな……まいったな……)
「……レオナルド……」
「……ん?声がした?まさかな……
俺の異空間に声を届かせる事なんて誰にも……」
「レオナルド」
「……気のせいじゃない……誰?」
「アナスタシアと言います」
「アナスタシア?教会に祀られている女神様と同じ名前?
えっ?まさか女神様?」
異空間が、キラキラした光の粒で満たされていく。
その光が、静かにレオナルドに入っていく。
「はァァァァ〜暖かくて気持ち良い……」
レオナルドの身体は、徐々に回復していった。
「ありがとう!女神、アナスタシア様……
よ〜し!これなら、もう一度戦える」
「お待ちなさい。今の貴方で、ベリアル率いる悪魔達に勝てますか?」
「……でも、家族が……友が……皆んなを守らなくては……」
「急がなくても大丈夫です。貴方の跳ね返した大魔法の爆発で、
あそこに居た悪魔族の大半も消滅しました。
ベリアルは、体制を整えるべく、一旦帰っていきましたよ?
いずれまた来るでしょうが、体制を整えるには1年は掛かるでしょう。
時間ならあります。貴方は、しばらくここで修行なさい」
「俺、今以上強くなれるでしょうか?
最近、ここ異空間で、いくら訓練しても、
自分より強い相手がイメージできなくて……
頭打ちというか……」
「確かに、剣ではもう神を超えていましたね」
「神?ベリアルの事ですか?奴は本当に神なのですか?」
「ええ、神と言えなくはないですね……ベリアルは元々天使……
力を付ければ、神となりうる存在でした」
「つまり、神になり得る条件は満たしていた?そういう事ですか?」
「その力を得たものが、神界に集い、神となる……
神とは、誰かが認定するものでもありませんから……
ベリアルが神……まあ、そう言えなくもないですね……」
「魔法は使えず、剣では奴を超えているにも拘らず斬る事が出来ず……
俺はどうやったら、奴に勝てるのですか?
どうやったら、今の自分を超えられるのですか?」
「神界に来ますか?そこには貴方より、魔法に長けた神……
剣に長けた神……神々に教えを乞うては、どうでしょう?」
「そんな時間が有るでしょうか?
この中でしたら、地上に比べて時間が経つのが遅いのですが、神界は?」
「時間の流れは地上と同じです。
そうでなければ、地上を見守る事は出来ません」
「ここでは、10年訓練しても、地上の数日。
神界に行って、間に合うのでしょうか?
次にベリアルが仕掛けてくるのはいつ頃か分かりますか?」
「1年は掛かると言いましたが、
実際、半年後か……一年後か……正確な時期は私にも分かりません。
ですが、自らの能力が頭打ちだと思っているのでしたら、
神界で修行する方が良いのでは?
私には、貴方には、まだまだ伸び代がある様に思えますが……」
女神の助言を受け入れたレオナルドは、神界に来ていた。
白で統一された石造りの建物……着ている物も白く、
汚れが一切ない世界に、レオナルドは居た。
「俺が剣神だな」
「じいちゃんと同じ〝剣神〟……称号ではなく、本当の剣の神……」
「おう、サウザー・キャンベの事か?あいつは、俺が加護を与えたんだよ?
人間にしては、なかなか大したもんだったな」
「俺にも加護を頂けませんか?」
「俺が加護を与えたサウザーを、遥かに越しているお前に、
俺の加護は必要ないだろ?……なんてな……
お前は既に、神々の加護をたくさん持ってるぜ?
だから、俺と鍛錬し、更に剣を極めたら良いんじゃないか?」
「未だ強くなる余地が?」
「どうかな?ちょっと手合わせしてみるか……」
「いきます……」
〝ドンッ!〟〝スパッ!〟
「な……斬ったはず?」
剣神は、一歩も動いていない様に見えた。
神剣だから斬れなかった訳じゃない。剣が届いてない様だった。
「ほら、どうした?休んでないで、どんどんこい」
「イヤ〜!」
「ハアハアハア……かわしているのですか?それとも……」
「もちろんかわしているぞ?見えんか?見えなくて当たり前。
目などで追わずに、全身で感じるんだ」
「〝感じる〟……その事は、分かっていたつもりだったのに……」
「まだまだだな……魔力との融合も未だ足りていないと見た」
「それは?」
「身体強化みたいなのはやってるんだろ?」
「ええ」
「俺は避けているって言ったよな?あの動き、お前に出来るか?」
「無理です」
「だろ?もっと完璧に……そして自然に融合出来れば、お前にも可能だぞ?」
「どうすれば良いのですか?」
「毎日俺と手合わせして、俺のスピードについてくる鍛錬をするしかないな。
少し動きを遅くして、徐々に上げていってやるか……」
「どれくらい鍛錬すれば?」
「まあ、普通なら早くて1000年?」
「それでは到底……」
「普通ならと言ったはずだ。お前、どう見ても普通じゃないだろ?
ただの人間が、剣の神と、手合わせ出来ると思うか?」
想像を絶する訓練が、連日続いた。
「お前、変態だろ?
〝汗と涙で顔を汚し、それでも歯を食いしばり……〟
って言う、きつ〜い訓練だぞ。何、笑ってんだよ?」
「……笑ってます?そうですね……楽しくて楽しくて……」
「やっぱ、変態じゃね〜か……」
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