第44話 これでどう?
「うわ〜〜すごい人だな……
このコロシアム、15万人収容出来るって聞いたけど、超満員じゃないか」
「坊主、そりゃそうだろ?剣神様が出場するって言うんだからな。
王族や貴族連中も、いつもの比較にならない位来てるだろ?」
「あの豪華なバルコニー観覧席に、陣取っているのが王族?」
「おおよ。王だけにな?ブワハハ……」
「……寒っ……で、あそこで騒いでるのは何なの?」
「あれは、剣神様の信者だな?
剣神様と、その他全員との戦いになっちまうに決まってる、
こんなルール卑怯すぎだと、抗議してるんだろ?
だからだろ?開始時間が遅れているのは……
入国検査場で、騒ぎを起こした連中もいて、皆んなピリピリしてるから、
これ以上騒ぎが大きくなって、中止にでもなんなきゃ良いが」
「えっ?中止?そりゃ不味い……ちょっと、行ってくるか……」
「ねえ、おじさん。おじさん達のグループのリーダーはどの人?」
「なんだ?お前は?グランド男爵に何か用か?」
「グランド男爵?抗議している人達のリーダーは、男爵なの?
へ〜……腐った貴族の中にもそんな人が居るんだ?
サウザーは、俺のじいちゃんなんだ。俺は、じいちゃんを迎えに来たんだよ。
これ以上、騒がれて中止にでもなったら、じいちゃん出てこないんだろ?
そうなると会えなくなって困るんだよ」
「なんだと?サウザーって、まさか剣神様?
お前が剣神様の孫だと?嘘じゃねえだろな?」
「おい、何騒いでる?ちゃんと抗議に参加しないか」
「あっ、グランドさん。こいつが剣神様の孫だって言いやがって……
リーダーは誰だって聞いてきてるんですが……」
「君が?剣神様の孫?本当か?証明できるか?」
「ああ……そうだな……これでどう?」
「〝これでどう?〟何が?」
「貴方の胸のボタン……」
「ん?俺のボタン?な……ボ、ボタンが……真っ二つ……い、いつの間に……」
「どう?証明になる?俺の事、信じた?」
「あ、ああ……で、何か俺に用か?俺がリーダーのグランドだ」
「グランドさんか……俺、この国に行ったっきり、
音沙汰がなくなっちゃった、じいちゃんを探して、
連れ帰るために来たんだ。
だから、中止にでもなったら、困るんだよ。
じいちゃんには、闘技場に出てきてもらわないと……
頼むから、一旦抗議をやめてもらえないかな?」
「剣神様が、出てこられたとして、
この厳重な警備、それに99人いる、残りの決勝進出剣士の中、
どうやって助けるつもりなんだ?あいつら全部、敵だぞ?」
「俺、転移魔法使えるから、問題ないよ?」
「転移出来るのか?それなら敵が何人居ようと、救出可能だな……
分かった。お前に協力する。
おい!皆んな。抗議は一旦中止だ!」
「ねえ、グランドさん。貴方はどう言う人?男爵さんだと聞いたけど?」
「まあ……一応貴族だ……末端のな……小さいが領地経営が仕事だな。
いつも、国に逆らう様なことばかりしているから、王族、貴族からは爪弾きものだよ」
「変だよね?この国……戦う事を強要して、
戦えない人は、食べる物にも困ってるみたいでしょ?」
「やはりそう思うか?次から次へと、戦う毎日。
毎週末に試合が有り、強さの順位、階級を決めて行く……
目的は強さを求めるのみ。なんの生産性も無い……」
「皆んなはそれをどう思っているんだろ?」
「昔はいざ知らず、今は不満に思う者も多いと思うが、
口には出せない……俺たちみたいに、声を上げるのは少数だな」
「生産性が無いって言ってたけど……
だったら、この国の人達は、どうやって生活してるの?」
「強くて戦える者は、毎週行われる、試合、大会の賞金だな。
良い生活してるのは、一握りの少数だよ」
「不思議だな……賞金は、どこから出ているの?」
「税金だよ。戦うことのできない者は、生産職につく。
但し、税金を80%も取られるから、食っていくのが精一杯……」
「なんだか理解し難い制度の国だね。
強くなる事だけが、唯一の目的……なんなのそれ?」
「昔から、そう言う世界で育ち、生きてきたから、
それが当たり前だと思っていたんだろうな」
「今は少し違う?」
「ああ、俺は、旅の途中、船が漂流して、外の世界を見る機会があってな。
余りの……なんだ?カルチャーショックだっけ?
これじゃあ不味いと思って……
他にも似た様な経験をした奴もいてな……
少しずつではあるが、そう言う話が広まっていったんだよ」
「じゃあ、なぜこの国は変わらないのかな?」
「これの制度で潤ってる奴ら、戦うのが好きで、変えたくない奴ら……
そう言う連中が、この国を牛耳ってるからだよ。
王族、貴族……俺も貴族の端くれではあるが、そいつらだな。
ただ、少しずつではあるが、変化もしてる。
そのせいで、剣神様には、迷惑をおかけしてしまった。
申し訳ないと思ってるよ」
「どう言う事?」
「特に最近…… 俺たちの活動もあって、国への不満から……
国民の中には、剣神様を崇拝する者も少なくない。
だから、剣神様を見せしめにしようと、企んだんじゃないかな?」
「見せしめか……そう言えば、昨日もそんな話聞いたな……」
「俺達が、こんな活動をしなければ、
剣神様に、害が及ぶ事はなかった筈だからな……
巻き込んでしまって申し訳ない……」
「グランドさんのせいじゃないと思うけどね?
いずれ、じいちゃんは、放っておけなかったと思うよ?」
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