第34話 企み
「で、父さんは、この帝国の前皇太子ってのは分かったけど……」
「そうだレオ。間違いなくお前は私の甥っ子……」
「その……皇太子って確か……結婚して半年で、
罪を犯した皇太子妃と共に、失踪したとか……
皇太子妃って、俺の母さんて事だよね?……
そう言えば、ばあちゃんその辺は、
歴史の勉強してても、詳しく話してくれなかったね?」
「あんたの母親エリカが、側妃だったロベルトの母親に嵌められてね……
投獄されていたのを、クリスト……あんたの父親が助け出し……」
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「父上!しっかりして下さい!今、医者を呼びましたから!」
建国祭のパーティーの乾杯で、突然、口から血を吐き、倒れてしまった前皇帝。
懸命の治療にも拘わらず、息を引き取ってしまう。
「何故、エリカが疑われるんだ!?
エリカには父上を殺す理由が全くないだろ!」
「ワインに毒は入っていなかったからね?
だとすれば、毒はワインカップ塗られていたと言う事になる。
ワインカップを保管していた部屋に入っていたのは、
エリカだけだそうじゃないか?
気分が悪いからと言って、あの部屋で休んでいたんだろ?」
「エリカは、悪阻で気分が悪くて、
パーティーをしていたホールの、控え室で休んでいただけだろ?
そもそも、どのカップを父上が使うかなんて、分からないじゃないか?」
「壇上には陛下1人だけ……
あの人の使うワインカップは、それだけ別のワゴンに置いてあったのさ」
「あんたは……」
「母親に向かって、あんたとは」
「あんたが母親?俺の母は、あんたに殺されたあの人だけだ。
何で、おやじまで殺した?」
「人聞きの悪いことを言うんじゃないよ。
何を証拠に?証拠は全てエリカがやったと言っている」
「やったと言っている証拠は、全部あんただと言っているじゃないか?
カップが別だった?なんでそんな事を知っている」
「もう良い!これ以上話しても、時間の無駄。
エリカを捕えなさい!地下牢に閉じ込めるんだよ」
「ふざけるな!そんな事はさせない。父亡き今は、俺がこの国のトップだ」
「良いから捕らえよ!」
「待て!皆んなどうしたんだ?誰か何とか言ってくれ」
「残念ですが、貴方に付いている者は、もうおりません……クリスト様……」
〝ガシャン!ドスン!グワシャン!〟
「済まん!お前達を殺したくない。手を引いてくれ!
俺たちはこの国を出る。それで良いだろ?頼む!道を開けてくれ!」
流石は剣神の弟子。一千の兵と戦って、一歩も引けを取っていない。
しかしエリカを守りながらでは、徐々に部が悪くなる。
一本、又一本、クリストに矢が刺さる。
流石の剣神の弟子も遂に片膝をついてしまう。
これまでかと思った時に、大きな風が吹き、
土煙で辺り一面、視界がなくなる。気付けば2人の姿は消えていた。
「もう1週間経つ。まだ居場所はわからないのか?」
「……申し訳ありません。全く足跡が掴めません……」
「どう言う事だ?……それに母上の事故は、本当にあの2人と関係ないのか?」
2人が消えた翌日、ロベルトの母は、これで邪魔者は居なくなったとばかり酒に酔い、
誤って階段を踏み外し、命を落としていた。
「ロベルト。2人を探すな。2人はもう、お前達の前に現れる事はないと言っている。
これ以上あの2人に関わるのは止めるのじゃ」
「あ、貴方は剣神様……しかし母も死に……それもあの2人の仕業では?」
「それは違う。エリカは、事故があった日、我々と1日一緒だった。
関わるなと言う理由の一つは……
エリカは魔女だと言われ、国でもひどい扱いを受けていたが、
本当は女神の祝福を受けた聖女なんじゃ。
あの子を虐げていたあの国が、
あの子がいなくなった途端に、どうなったか知っておるで有ろう?
この帝国も、これ以上あの子を虐げれば、同じ道を歩むぞ?
お前の母も、もしかすると、神の罰なのではないか?……
この程度で済めば、幸いと思わねば……
一つ間違えば、カンスターク王国同様、この帝国も滅ぶに違いない……
もう一つ。辞めぬと言うならば、我ら2人がこの帝国を滅ぼす……
あの2人を助けたのは誰なのか分かるであろう?
あんな事が出来るのは大賢者と言われるメリーアンしかおらんじゃろ?」
「貴方方は、何故あの2人を庇うのですか?」
「あの2人が何も悪くないからじゃ。分からんのか?
お前が目を覚まさぬのなら、我らはお前の……帝国の敵となろう……
もう一度言う。2人を探すな……
クリストは、既に大怪我を負い瀕死……そう長くは持たないじゃろう。
そっとしておいてやれ」
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「レオ、お前が戻れば、火種になりかねんと思ってな。
隠しておった。悪かったな」
「ぜんぜん?自分の出生を、それ程知りたいとは思ってなかったよ?
じいちゃんとばあちゃんに育てられ、
毎日が楽しくて幸せだったからね」
「レオ……そう言ってくれて嬉しいよ……
おお、それと、お前の生まれなんじゃが、ダグラス王国ではないぞ」
「え?そうなの?」
「お前はこの国で生まれたんじゃよ?
お前の父、クリストが、瀕死で遠くに連れて行く事が出来んで、
この国で暫く匿ったんじゃよ。
オースティン帝国発祥の地、オースティン村が、お前の出身地じゃよ。
お前が勘違いしているようだったから、いや、勘違いというより、
生まれた場所を聞いてなかったんじゃろ。
この国の事は、なるべく触れん方が良いじゃろうと思い、黙っておった。
それともう一つ、生まれた時に、父はもう亡くなっていたと思っておるようじゃが、
お前に一目会いたいと、レオが生まれるまで懸命に命を繋いでおった。
驚くべき精神力じゃったよ……
ベッドで、生まれたばかりのお前を抱きしめて、
嬉しそうに涙を流しながら……そして息を引き取った。
お前に〝レオナルド〟と名付けた後にな……
お前の誕生日と、クリストの命日は一緒なんだ……」
「俺の名付けの親は父さんだったんだね……
俺、父さんに会ったことあったんだ……」
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