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第34話 企み

「で、父さんは、この帝国の前皇太子ってのは分かったけど……」

「そうだレオ。間違いなくお前は私の甥っ子……」

「その……皇太子って確か……結婚して半年で、

 罪を犯した皇太子妃と共に、失踪したとか……

 皇太子妃って、俺の母さんて事だよね?……

 そう言えば、ばあちゃんその辺は、

 歴史の勉強してても、詳しく話してくれなかったね?」

「あんたの母親エリカが、側妃だったロベルトの母親に()められてね……

 投獄されていたのを、クリスト……あんたの父親が助け出し……」



 *************************


「父上!しっかりして下さい!今、医者を呼びましたから!」

 建国祭のパーティーの乾杯で、突然、口から血を吐き、倒れてしまった前皇帝。

 懸命の治療にも拘わらず、息を引き取ってしまう。


「何故、エリカが疑われるんだ!?

 エリカには父上を殺す理由が全くないだろ!」

「ワインに毒は入っていなかったからね?

 だとすれば、毒はワインカップ塗られていたと言う事になる。

 ワインカップを保管していた部屋に入っていたのは、

 エリカだけだそうじゃないか?

 気分が悪いからと言って、あの部屋で休んでいたんだろ?」

「エリカは、悪阻(つわり)で気分が悪くて、

 パーティーをしていたホールの、控え室で休んでいただけだろ?

 そもそも、どのカップを父上が使うかなんて、分からないじゃないか?」

「壇上には陛下1人だけ……

 あの人の使うワインカップは、それだけ別のワゴンに置いてあったのさ」

「あんたは……」

「母親に向かって、あんたとは」

「あんたが母親?俺の母は、あんたに殺されたあの人だけだ。

 何で、おやじまで殺した?」

「人聞きの悪いことを言うんじゃないよ。

 何を証拠に?証拠は全てエリカがやったと言っている」

「やったと言っている証拠は、全部あんただと言っているじゃないか?

 カップが別だった?なんでそんな事を知っている」

「もう良い!これ以上話しても、時間の無駄。

 エリカを捕えなさい!地下牢に閉じ込めるんだよ」

「ふざけるな!そんな事はさせない。父亡き今は、俺がこの国のトップだ」

「良いから捕らえよ!」

「待て!皆んなどうしたんだ?誰か何とか言ってくれ」

「残念ですが、貴方に付いている者は、もうおりません……クリスト様……」



 〝ガシャン!ドスン!グワシャン!〟

「済まん!お前達を殺したくない。手を引いてくれ!

 俺たちはこの国を出る。それで良いだろ?頼む!道を開けてくれ!」

 流石は剣神の弟子。一千の兵と戦って、一歩も引けを取っていない。

 しかしエリカを守りながらでは、徐々に部が悪くなる。

 一本、又一本、クリストに矢が刺さる。

 流石の剣神の弟子も遂に片膝をついてしまう。

 これまでかと思った時に、大きな風が吹き、

 土煙で辺り一面、視界がなくなる。気付けば2人の姿は消えていた。


「もう1週間経つ。まだ居場所はわからないのか?」

「……申し訳ありません。全く足跡が掴めません……」

「どう言う事だ?……それに母上の事故は、本当にあの2人と関係ないのか?」

 2人が消えた翌日、ロベルトの母は、これで邪魔者は居なくなったとばかり酒に酔い、

 誤って階段を踏み外し、命を落としていた。


「ロベルト。2人を探すな。2人はもう、お前達の前に現れる事はないと言っている。

 これ以上あの2人に関わるのは止めるのじゃ」

「あ、貴方は剣神様……しかし母も死に……それもあの2人の仕業では?」

「それは違う。エリカは、事故があった日、我々と1日一緒だった。

 関わるなと言う理由の一つは……

 エリカは魔女だと言われ、国でもひどい扱いを受けていたが、

 本当は女神の祝福を受けた聖女なんじゃ。

 あの子を(しいた)げていたあの国が、

 あの子がいなくなった途端に、どうなったか知っておるで有ろう?

 この帝国も、これ以上あの子を虐げれば、同じ道を歩むぞ?

 お前の母も、もしかすると、神の罰なのではないか?……

 この程度で済めば、幸いと思わねば……

 一つ間違えば、カンスターク王国同様、この帝国も滅ぶに違いない……

 もう一つ。辞めぬと言うならば、我ら2人がこの帝国を滅ぼす……

 あの2人を助けたのは誰なのか分かるであろう?

 あんな事が出来るのは大賢者と言われるメリーアンしかおらんじゃろ?」

「貴方方は、何故あの2人を庇うのですか?」

「あの2人が何も悪くないからじゃ。分からんのか?

 お前が目を覚まさぬのなら、我らはお前の……帝国の敵となろう……

 もう一度言う。2人を探すな……

 クリストは、既に大怪我を負い瀕死……そう長くは持たないじゃろう。

 そっとしておいてやれ」


 *************************


「レオ、お前が戻れば、火種になりかねんと思ってな。

 隠しておった。悪かったな」

「ぜんぜん?自分の出生を、それ程知りたいとは思ってなかったよ?

 じいちゃんとばあちゃんに育てられ、

 毎日が楽しくて幸せだったからね」

「レオ……そう言ってくれて嬉しいよ……

 おお、それと、お前の生まれなんじゃが、ダグラス王国ではないぞ」

「え?そうなの?」

「お前はこの国で生まれたんじゃよ?

 お前の父、クリストが、瀕死で遠くに連れて行く事が出来んで、

 この国で暫く(かくま)ったんじゃよ。

 オースティン帝国発祥の地、オースティン村が、お前の出身地じゃよ。

 お前が勘違いしているようだったから、いや、勘違いというより、

 生まれた場所を聞いてなかったんじゃろ。

 この国の事は、なるべく触れん方が良いじゃろうと思い、黙っておった。

 それともう一つ、生まれた時に、父はもう亡くなっていたと思っておるようじゃが、

 お前に一目会いたいと、レオが生まれるまで懸命に命を繋いでおった。

 驚くべき精神力じゃったよ……

 ベッドで、生まれたばかりのお前を抱きしめて、

 嬉しそうに涙を流しながら……そして息を引き取った。

 お前に〝レオナルド〟と名付けた後にな……

 お前の誕生日と、クリストの命日は一緒なんだ……」

「俺の名付けの親は父さんだったんだね……

 俺、父さんに会ったことあったんだ……」

数ある作品の中から見つけ出し、お読みいただき、ありがとうございます。

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