第32話 其方のその顔……
「おお、ティアナ。よくぞ無事で……
一報を聞いた時は、肝を冷やしたぞ。居ても立っても居られなかった……
そちらは確かダグラスのスフィア姫……だったかな?姫も無事で何より」
(ティアナ、あの人、オースティン帝国のロベルト帝王だよな?
何でお前とこんなに親しげ?)
「あのクソ共……タダでは済まさん……我が無二の親友の娘であり、
我が子同然のティアナを……」
(あ、そう言う事……ご説明ありがとう帝王……)
ロベルト帝王とティアナの父ロバートは、
ロバートがオースティン帝国へ留学した際、
気が合い、お互いを兄弟と呼び合う程、親しくなっていた。
「それにしても良くここまで無事来れたものだ……本当に良かった」
「そこの彼が、10000人以上の兵から守ってくれました」
「……そうか……私からも礼を言う。ありがとう」
「お言葉を?」
「うむ、勿論だ」
「お礼の言葉、勿体のうございます……」
「それにしても、何故10000もの兵で?お前達はせいぜい30人ほどの護衛だろ?」
「多分、彼……レオを警戒しての事だと」
「其方は……見たところ無傷で……その若さで、一体君は何者なのだ?
その格好は、騎士団ではあるまい?年も未だティアナと同じ位に見えるが?
騎士団に入る年でもなさそうだな?幾つになるのだ?」
「16歳です」
「そうか、若いな……未だ学園高等部に入学したばかりの年ではないか……」
「彼は……父から聞いていませんか?こう見えて38万人の領民が居る領地を持つ伯爵です」
「おお、そう言う事か?其方がティアナの……
その方、下を向いていないで顔を見せてくれんか?」
「ハッ」
静かに顔を上げるレオナルド。
「な!……其方のその顔……」
「私の顔がどうかなされましたか?」
「き、君はどこの出身だ?君の両親の名は?」
「叔父様。彼の名はレオナルド。本人の名前を聞く前に、両親の名前を聞くのですか?
如何されたのです?随分驚いている様ですが?」
「陛下!大変でございます!」
「何事だ?」
「ご歓談の所申し訳ございません。あれをご覧下さい!又、ファイアドラゴンの襲撃です!」
窓の外を指差しローガン宰相が叫んだ。
「慌てるなローガン。いつもの様に魔法騎士団が対応しておるではないか」
「あ……あの……宜しいでしょうか陛下?」
「何だ?あ〜レオナルド君だったか?」
「はい。陛下、あれは只のファイアドラゴンではない様に見えます。
あれは多分、虹色に光る燐を纏ったファイアドラゴンの亜種、
レインボードラゴンではないでしょうか?
あれは、ダグラス王国にしか居ないはずですが……
私の故郷、サンドラの火山の特殊な魔鉱石が、生きて行くのに必要な筈。
もしかすると、あの馬鹿どもが、あれも仕向けていたのかもしれません」
「あの馬鹿とは、ダグラスの第2王子の事かな?」
「ええ、そうです。もしかするとリンドヴルムは、帝国も狙っていたのでは?」
「かもしれんな?まあ、心配するな。魔法騎士団が、なんとかするだろう」
「だと良いんですが……奴らは防御力がとても高いですよ。
あの輝く鱗に弾かれ物理攻撃もですが、魔法攻撃も余り効果は有りません……」
「確かに虹色に輝いておるな。レインボードラゴンとやらには魔法攻撃も効かないのか?
だとすれば、まずいな。宰相、直ぐに団長に連絡を!」
攻撃魔法は全て弾かれ、地上に被害が出始めていた。
「あ、叔父様、魔法騎士団も気付いた様ですよ?
障壁の防御魔法に切り替えた様です。ドラゴンのファイアを防いています」
「防御するだけでは……騎士団も向かわせますか?」
「あの高さ、矢すらも届かんだろう?
攻撃に疲れ帰ってくれるかもしれん。今はあの戦い方しか出来まい」
「陛下。私が向かっても宜しいでしょうか?
そう都合良く帰ってくれるとは思えません。
このままだといずれ魔法騎士団の魔力の方が先に切れるのではありませんか?」
「魔力切れか?それはドラゴンも同じではないのか?」
「レインボードラゴンの魔力量は少なくありません。
それに、とても頭がいいですよ?足での物理攻撃に切り替えている様です。
こちらの障壁が破られるのは時間の問題かと」
「其方はティアナを守り、疲れているのではないか?……戦えるのか?」
「問題ございません。ほとんど戦ってはおりませんので……
デモンストレーションして脅しただけです。それだけで逃げ帰りましたから……」
「デモンストレーション?もしや、昨日、月を破壊したのは……」
「月は後で元に戻しておきました。このままでは、この城も危険です。
ティアナ達を守る為にも、私にお任せ下さい」
「しかし、あの高さにいるドラゴン。魔法が効かぬと言うならどうやって戦うつもりだ?」
「飛んでいきます。そして私の魔剣で首を落として参ります」
「飛ぶ?空をか?舞空魔法を使えたのは、大賢者様だけでは?
今それを使える者は居らんのじゃないか?
しかもあのドラゴンの首は太さが5〜6mは有るぞ?どうやって剣で?」
「魔剣は纏った魔力が伸びます。そして硬い鱗であれなんであれ、
切れないものはございません。普通に切って参ります。
奴等とは、子供の頃から、何度も戦っておりますので」
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