第29話 魔王
「ひっ……」
「ひっ?」
「ひっ、姫様!姫様なのですね?」
「はあ?姫?どっから見ても、婆さんじゃないか?
姫っていうのはもっとこう……若くて……」
〝パコーン!〟
メリーアンに、頭を思いっきり叩かれるレオナルド。
〝いって〜!〟
「誰が婆さんだい!」
「ばあちゃん、どっから見ても婆さんじゃないか」
「まあ……否定は出来ないね」
「だろ?そう言えばさっき、カンスタークの出身だとは聞いていたけど、姫って何さ?」
「レオナルド様、このお方、メリーアン大賢者様は、カンスタークの王族です」
「まあ、大昔のことさね……
勝手に国を飛び出したんだから、
私には、姫なんて呼ばれる資格はないね」
「マジか?俺のばあちゃんが、王族で姫?
でも何で王族の姫だったのに、国を出ていったんだ?」
「ほら、私は魔力量が、桁違いに多いだろ?
まあ、あんた程じゃないけどさ。
妬みも含めて、魔族との混血の魔女じゃないかとか……
誰が言い出したんだか……多分私に王位を取られるんじゃないかと、
そう考えた奴ら……異母兄弟の誰か?いや、その側近あたりかね?
何だかめんどくさくなってね……」
「ん?ばあちゃんは魔女じゃないよね?大賢者って呼ばれてるけど、
元々は、聖女だったんでしょ?」
「あんたどこでそれを!?」
「なんか古い本……女神の加護を貰って、
女神とも何度か会った事あるんじゃなかったっけ?」
「そ……そ……それは、私の黒歴史を綴ったわたしの日記だよ?
恥ずかしくて燃やそうと思ったんだけど、
どこにも見当たらなくて……それを、どこにやったんだい?」
「さあ?覚えてないや。古い本だとばっかり思っていたから、
どこかの本棚に紛れてるんじゃない?」
「どうだった?クリス」
「うん、窓は何とか足りそうだよ?それとドアも。
トイレの便器は、簡易な物で良ければ用意出来るって話だよ。
問題はキッチンかな?元々ホテルにしようとしてた建物だから、
各部屋にキッチンってのは想定外なんだよね。
風呂,トイレにしか配管を設置してないから、どうしようかって」
「キッチンは無くても良いよ?取り敢えず食料は配給すれば良いし」
「とにかく、他の工事は一旦ストップさせて、
職人総出で、まずは窓の取り付けだね。それで何とか、雨風は防げるかな。
全部で10棟、1800室。5人位ずつ入って貰えば、どうにか収容出来るかな?
でも、受け入れるのなら、ゆくゆくちゃんとした住居を用意しないと」
「受け入れるつもりはないよ?」
「何でだい?大賢者様の故郷の人達だから助けなきゃって言ってたよね?」
「うん、助けるよ?でもこの地に受け入れるつもりはないんだ。
あの人達の街を、魔族から取り戻すよ。
もうテイラーと、攻める計画は打ち合わせ済み。
暫くの間、保護しててもらえれば大丈夫だから」
〝ドン!ドドドドドドドドドドドド……〟
魔族の潜む街の周りに、円を描く様に魔法を撃つレオナルド。
「もう一回」
〝ドン!ドドドドドドドドドドドド……〟
「未だか?」
〝ドン!ドン!ドドドドドドドドドドド……〟
「こんなもんか?」
〝ゴオオオオ〜〜〜〜〟
出来たお堀に、今度は水を浸していく。
「お〜い!隠れている魔族達〜!1時間だけやる。ここから立ち去るんだ!」
圧倒的なレオナルドの、魔法火力量を目の前にし、
魔族に抵抗する気力は残っていなかった。
我先に逃げる魔族。
その中には変装したレオナルドが、何食わぬ顔で混じっていた。
頭にダミーのツノをつけている。
(こんな所に縦穴が有ったのか……
岩山に囲まれて……これじゃあ、簡単に見つけられる訳ないな……
お〜これは、昇降機か?結構進んだ科学技術だな……)
魔族に混じり、昇降機で地下に降りるレオナルド。
暫くして、レオナルドが乗った昇降機が止まる。
(結構時間が掛かったな。こんなに深かったのか)
地下2000m程あろうか。昇降機のドアが開くと、
そこは地上かと勘違いする程明るかった。
(へ〜人工太陽?やっぱり、進んだ科学だな。
そして、一際大きく立派な建物……あれが魔王城?)
(ここが、魔王の部屋なのか?思ったより質素だな……)
魔王付きであろうメイドを見つけ、後をつけた。
メイドが部屋を出ていったのを確認すると、こっそり入っていく。
「あれ?誰もいない?魔王は留守か?」
「貴方誰?魔族じゃないの?ツノが落ちそうよ?」
12〜3歳の可愛い女の子がそう声をかけてきた」
「うわっ……驚いた。居たんだ?誰も居ないかと思った。
ツノが落ちそう?あっ、本当だ。変装のツノが落ちそう……
ねえ、お嬢さん、何もしないから騒がないでくれる?
ここって魔王の部屋じゃなかったの?」
「ここ、魔王の部屋よ?」
「君はもしかして魔王の娘さん?メイドさんじゃないよね?
綺麗なドレス着ているし、年齢もメイドって歳じゃないし……」
「誰だ貴様は!部屋から妙な魔力反応があったと思えば……」
「あれ?もう見つかっちゃった……」
「ねえ、そこの太ったハゲの人。あんたが魔王?」
「わしは、魔王様の側近ゲルドだ!」
「魔王……様?はどこかな?」
〝チョイチョイ〟
女の子が指でレオナルドを突く。
「あ、ちょっと待っててね?あのハゲのおじさんに聞きたい事あるから。
お前達が占領していた地上の街は、俺が奪還……」
〝チョイチョイ〟
「あっ……だからちょっと待っててくれる?」
〝チョイチョイ〟
「私が魔王よ?」
「へ?どゆこと?」
「魔王様……そいつは危険です。のんびり話などせず離れて下さい!」
「へっ?まじ?君が魔王?」
「私は魔王のマリエルよ。1年前、父様母様が事故で亡くなって、
私が魔王になったの」
「だから黙ってろ!……黙ってて下さい……」
「ああ……それであいつが、君や魔族の国をいい様に……って事かな?
ご両親の……事故とか言うのも怪しいな」
「貴方は人族よね?」
「そうだよ。ここの真上の人間の街を占領されて、俺の領地にまで続く穴を掘られて、
密かに侵入されそうになって……
だから、やめさせる為の話し合いに来たんだよ」
数ある作品の中から見つけ出し、お読みいただき、ありがとうございます。




