第15話 めんどくさいからほっとこ?
「くっ……くそっ!お前、魔法使って身体強化しているな?
剣の戦いで、身体強化だろうと、魔法を使うのは反則だ!」
「ん?僕?身体強化なんてしてないよ?それをするとこんな感じ……」
腰をかがめるレオナルド。だが直ぐに頭をティアナに抑えられる。
(やりすぎちゃダメよ……)
(え?校舎の屋上まで、一瞬で飛ぼうと思ったのに……)
「何コソコソ話してんだよ?」
「ああ、そうそう……テイラー君だっけ?君こそ身体強化してたよ?」
「そんな訳あるか。俺は学園入ってから、初めて正式に魔法の勉強を始めたんだ。
それ迄は剣の修行だけで、
魔法は入学試験の課題を、1年間、先生について練習したんだ。
身体強化の魔法なんて、教わった事もない。俺に出来る訳ないだろ」
「だったら無意識に身体強化してたんじゃない?
必死に剣に精進してたから、自然に身体強化が使える様になってたんじゃないかな?
こうするとね……」
人差し指でテイラーの眉間に触れると、ぼんやり身体から蒼い光が浮き出る。
「見える?それがテイラー君の魔力だよ?高速で横に動いてみて」
「ひ、光ってるな……これが俺の魔力?横に動けって?こうか?」
蹴り込む右足に光が集中する。
「ほらね?魔力使ってるでしょ?可視化しなくても僕には見えていたよ?」
「お前は使ってないのか?それであのスピード……」
自信を砕かれ、項垂れるテイラー。その時遠くで、何やら大きな声がした。
「あの声、父上か?あっ……やべっ……今日は学園の視察日だったか……」
「おいっ!テイラー。お前試合に負けたって本当か?サルザル公爵家の恥だ!」
「あれ?おじさんこの前の人?」
「何だお前は?話に入ってくるんじゃない……ん?あっ!お前は……」
「レオナルド。お前、俺の父上に会ったことあるのか?」
「ここが城下1番のレストラン?すごくおしゃれな建物だね」
「料理も、とっても美味しいのよ?」
「こんな高そうな店良いの?ロバートおじさん」
「ああ、レオの合格祝いだ。好きなものを食べなさい」
「ぐわ〜ははは!そうか?そんなにか?」
どこからか、下品な笑い声が聞こえる。店で大声を出している男が居るようだ。
「1番の店っていう割には、なんか騒がしいね?」
「あの下品な声は……サルザル公爵か?
顔を合わせたくないな……食事が不味くなる」
「又、あのいやらしい目で息子の嫁に……とか言われそう……」
「……だな……少し離れた個室にしてもらおう」
「そうか?それほどでも……あるか〜?ぐわ〜ははは!」
「本当ですよ。貴方が史上最強の剣士ではないかともっぱらの噂です」
「サルザル公爵閣下は、あの伝説のサウザー剣神様よりお強いのですか?それは凄い」
「いやそもそもサウザー剣神と言うのは、
話に尾鰭が付いて、大物扱いされているだけなんじゃないか?
本当の力実が、どれ程のものだったか分かったものじゃない」
「大きな声だな……レオ、気にしなくて良いぞ?」
「うん、全然。じいちゃんが今の話聞いてたとしても、
気にも留めないと思うよ」
「おお、レオは大人だな?」
「ちょっとサルザル公爵様?聞き捨てならないんですけど?」
大人気ない少女が1人いた。
「あちゃ〜ティアナだ〜」
「ん?何だ?クリスティー公爵のところの、お嬢ちゃんじゃないか?
今日は息子は来ていないぞ?」
「息子?テイラー様ですか?それがどうかしました?
私は貴方がサウザー剣神様の事を馬鹿にしてる……
その事の話をしているのですが?」
「ん?お嬢ちゃん、少し無礼ではないかね?」
「無礼なのは貴方です。サルザル公爵様。
剣神サウザー様の孫の前で……」
「はあ?剣神サウザーの孫だ?誰がだね?」
ちょこんと小さく手を挙げるレオナルド。
「あの小僧が?おや、クリスティー公爵ご夫妻もいらしていたのですか?
お嬢さんの躾を、少し間違えておりませんかな?目上のものへ、無礼が過ぎますぞ?」
「……無礼なのは貴方の方なのでは?
サウザー・キャンベル大公爵への、聞き捨てならない発言」
「いやそんな……過去の人物に……そう目くじらをたてられても……」
「あの……2人とも生きていますよ?」
「ん?生きておられる?」
「はい、至って元気……元気もりもり……です」
「ほう、それは失礼した。君は剣神様に剣を習っているのかな?」
「はい……」
「あまり強そうには見えんが?うちの息子の方が、はるかに強いんじゃないか?」
「はい……多分……そうですね……」
「ちょっとレオ!」
(めんどくさいからほっとこ?)
(でも……)
「何をコソコソ?そうだ坊や。勉強の為に、少し私の剣をお見せしようか?」
「いえ、結構です……」
「なに、遠慮はいらん」
「いえ、本当に結構です……」
(勉強になるどころか悪いイメージがつきそうだよ……勘弁してくれ……)
「ん?何んだ?聞こえんが……」
「ですから、遠慮しますと…… サルザル公爵様?でしたっけ?貴方、酔ってますよね?」
「まあ、見ていなさい」
聞く耳持たず、鞘から剣を抜くサルザル。
「いらないって!酔った上に、そんなぷよぷよの腹で、
まともに剣が振れるわけないじゃない」
「何だと?無礼な!」
〝シャキ〜ン!〟
レオナルドの目の前、ギリギリを狙い剣を振り下ろすサルザル。
その瞬間、亜空から剣を出しサルザルの剣に、合わせるレオナルド。
「な、いつの間に剣を……貴様今何をした?」
「サルザル公爵、その辺でおやめなさい。サウザー剣神様への不敬。
今回だけは見逃しておこう。
それと、自分の二枚刃にされた剣をよく見てみる事だ」
振り下ろす剣に合わせ剣を振り上げ、
相手の剣を縦二枚刃に切り裂く等、神業としか思えない。
その事実に気付くと、腰を抜かしてしまうサルザル公爵だった。
数ある作品の中から見つけ出し、お読みいただき、ありがとうございます。