第13話 全部聞こえてるよ?
「あいつがサウザー剣神様と、メリーアン大賢者様の孫って奴か?」
レオナルドの、今日が初めての登校の日だった。
「ちょっと、噂の的じゃない?どう言う事?めちゃバレバレよ?」
「……いきなり?何で?」
「君!レオナルド君かい?」
「はい、そうですが……貴方は?」
「ロジャー先生よ」
「そう、僕は学園の教師のロジャーだよ。
学園長がお呼びだ。悪いが来てくれるかい?」
「初めましてじゃな。わしが学園長のクロニカルじゃ」
優しそうな笑顔で、レオナルドの両肩をポンポン叩く学園長。
白い髭を蓄えた初老の男性で、魔法使いの様なローブを羽織っていた。
「初めまして。今日から登校させてもらいます、レオナルドです」
「レオナルド・キャンベルじゃろ?
貴族である事は、もう皆に知れ渡ってしまっておる様じゃ……」
「……やっぱりそうなんですね……でも何故?」
「サンチェス侯爵とのいざこざの際、クリスティー公爵が、
〝サウザー剣神様と、メリーアン大賢者様のお孫さんが〟って言ったんじゃろ?
その事が瞬く間に広がった様だ」
「いきなりか……陛下から秘密にしておく様に言われてたのに……」
「こうなったら仕方ないじゃろ?剣神様達の名誉の為にも、
ある程度の実力は見せるしかないと、陛下もそう仰っておる」
「ある程度……その加減って、むずいかも……」
「まあ、あまり思い詰めて考えなくても良いぞ。
常識的に、やり過ぎん様にすれば良い」
「園長先生、レオに常識は……」
「クロニカル園長、そろそろ全校集会の時間です」
「おおそうか、それでは行こうか」
大講堂の脇まで来ると、壇上に生徒が並んでいた。
「壇上に並んでいるのは?」
「今回の編入試験の合格者達じゃな。レオナルドを含め33人程おる」
「多くないですか?結構いますね?」
「厳正な試験の結果じゃよ。
今まで、優秀な者が埋もれてた……そう言うことかもしれんな?」
「あいつら、平民も多いらしいぞ?」
「正規の入学試験に合格出来なかった奴らだろ?」
「知見の浅い奴も居るらしいじゃないか?学園の品位が落ちないか?」
「あれだろ?剣神様の孫とか言ってる奴の提案だとか?
自分が普通に試験通らないからじゃないのか?」
大講堂に整列していた在校生から、コソコソ小声で、冷笑する声が聴こえてくる。
「…………と、言う訳で、これから一緒に学ぶ編入生じゃ。
差別する事なく、共に切磋琢磨する様に。
では代表でレオナルドに挨拶を頼もうかの」
「へ?聞いてないですけど……」
「思う事を話したら良い」
「只今、園長先生より紹介に預かりましたレオナルドと言います。
よろしくお願いします」
「ちょっと……凄く美形じゃない?」
「チッ。なんか澄まして……いけすかねえ……」
「〝あいつら、平民も多いらしいぞ?〟
〝入学試験に合格出来なかった奴らだろ?〟
〝知見の浅い奴も居るらしいじゃないか?学園の品位が落ちないか?〟
〝あれだろ?剣神様の孫とか言ってる奴の提案だとか?
自分が普通に試験通らないからじゃないのか?〟
耳が良いんで全部聞こえてるよ?」
「「「「………………」」」」
「まあ、色んな意見が有っても良いと思うけど……
色んな分野で才能のある者に、
最高の教育をしないのは、国の損失だと思うって言ったんだけど……
貴方達は、そう思わないのかな?
国王陛下も賛同して下さっての制度改革に、異議のある人は、
僕や壇上の皆んなに、コソコソ悪口言うんじゃなくて、
堂々と陛下に言ったら良いと思うよ?」
「「「「………………」」」」
「何年か後に、ここの人達や、来年再来年、
更にその後、この制度で入学した人達が、各分野で活躍する事を僕は信じてます。
余り偏見を持たず、長い目で見て下さい。
きっと良い友達になれると思います。以上です」
〝ハイッ!〟手を挙げる生徒がいた。
「何じゃな?」
「発表された筆記試験の成績は、本当なんですか?」
「ああ、もちろんじゃとも」
「どんな試験なんですか?簡単だったとか?
いくら何でも5教科満点とかあり得ません」
「それがあり得たんじゃよ。
因みに試験内容は、同日、君達がやった、各学年の実力試験と全く同じ物じゃよ?
合否の目安になると思っての事じゃったが……
掲示板に発表されていた通り5教科満点は、ここにおるレオナルドなのだが、
今後一緒に学べば、嘘か誠か自ずと分かるのではないか?
ちなみに一年生の平均は290点。
最高はティアナの455点じゃったかな?」
「は……はい」
「お前は、サルザル公爵家のテイラーじゃったかな?
お前も1年生……実力試験は何点じゃった?」
「あ……いえ……嘘だとは言いませんが……あの問題で?本当に同じ問題なのですか?」
「そうじゃよ?先程も言ったが、今後、同じ授業を受けていれば、
直ぐにレオナルドの実力は、分かるのではないか?」
「……そうですね……まあ、見ていきますよ。
それはそうと剣と魔法の実技試験までが満点とは……耳を疑います。
本当かどうか、園長先生がおっしゃっる様に、
今後確認出来るとは思いますが、今直ぐ確認する事も出来ますよね?
と言う事で、彼に剣の決闘を申し込みます」
数ある作品の中から見つけ出し、お読みいただき、ありがとうございます。