第11話 この世界の王になりたいか
「面を上げなさい。其方が帝国……いや……
サウザー剣神様と、メリーアン大賢者様のお孫さんであるか?」
「お言葉を?」
「許す」
「はい、正確には、剣神と賢者の……戸籍上は養子になります。
名は、レオナルド・キャンベルと申します。
2人は、第三者には、私を孫だと紹介しておりましたので、
自分も、その様に自己紹介しております……」
「……であるか。聞けば其方、50もの騎士を、ものの数分で殲滅。
更には帝級魔法を駆使出来ると聞く。誠か?」
「はい、騎士を殲滅したのは事実です。
帝級魔法の様な大きな魔法は、全力で放てば良いだけですから……
魔力コントロールが苦手な僕にも簡単です」
「そう言うものでもないと思うのだが……凄いな其方は……
未だ誰も使えた者のいない神級魔法ですら、いずれ使える様になるやもしれん」
「陛下!それが……出来たのです!」
「何が?出来たと?」
「ですから、神級魔法です!」
「詳しく聞かせてくれんか?」
「先日の試験会場は、学園の図書館でしたが、そこに〝神の書〟が有ったのです!
そこには何と、神級魔法についての記載があったのです!」
「まあ、〝神の書〟と言うのは写しがあちこちにあるからな……
しかし……わしも読んだ事があるが、神級魔法に付いては、
細かい発動の方法とかではなく、
ザックリ、こんなものがある……と言う程度の記載だったはずだが?」
「そうです、そうです!」
「それでどうやって、その魔法を理解するのだ?」
「ん?その光景を頭に浮かべ、イメージすれば良いのでは?」
「それで出来れば苦労はしないのだが……」
「出来ましたよ?神級魔法?8つある月の一つを、吹き飛ばす程の威力でした!」
「月をじゃと?先日、彗星が月に落ちて、一つの月が無くなった……その事か?
科学者達は彗星だと……そう言っていたが……
それは、おかしい。その月は、元に戻ったのだからな」
「あ、それですね?あれは僕です」
「何と?もう少し詳しく話してくれ」
「周りに影響を及ぼしてはいけませんので、空高く飛び、魔力を一気に解き放ちました」
〝メテオカタストロフィ〜!〟
「魔力の塊は尾を引き……」
「「「「あっ……それだ……」」」」
「彗星そっくりではないか?」
「僕も今そう思いました……そもそもメテオって、彗星の事でしたね……」
「それから、どうしたのだ?」
「ばあちゃん……賢者の祖母に報告に行ったら……」
「行ったら?」
「めちゃくちゃ怒られました。〝攻撃魔法は、禁止だと言っといたはずだよ!〟って」
「まあ、そうなるわな? で、レオナルドは……」
「レオで良いですよ?」
「ではレオは、その後、何かしなかったか?」
「はい!その後、試しに……」
「もう良い……何となく想像がついてしまった……」
「え〜聞いてくださいよ〜 〝リカバリー〟って……」
「なあレオよ、其方のその能力を、世に知れたらどうなると思う?」
「……どうなるのです?」
「国家間のバランスが崩れる」
「それ程ですか?」
「それ程だよ?月に放った魔法を、この地に放ったらどうなる?」
「山が二つ三つ吹き飛ぶ?」
「な、訳ないだろ?この星の形が変わるぞ?」
「いやでも、月は小さいから……あれ?小さく見えて、本当はかなり大きいんだっけ?」
「だろ?我らから見たら、それはもう、神の御業に等しい。
そんな者が、どこかの国に現れてみよ。立ち所に国同士のバランスが崩れ、大混乱となる」
「…………」
「レオは、この世界の王になりたいか?」
「この世界の王?」
「うむ、すべての国家を取りまとめ、一つにした国の王だ」
「なりたくない……です。すごく大変そうだし……今のまま、普通に暮らしたいです。
じいちゃんばあちゃんと暮らしてた様に……
クリスティー公爵家での今の暮らしの様に……」
「そうか。であれば、その能力を人から隠して欲しいのだよ。
其方の事が知れ渡れば、国内の貴族はおろか、
他国さえも、レオを取り込もうと、大変な事になるはずだ」
「そうかもしれませんね……分かりました。力を隠すのは、なかなか難しいのですが……」
「それを学園で学びなさい。普通とは逆なのだが……」
「出来ますかね?そおっと〝コツン〟としただけで気絶させるし、
魔法を小さく出すのは、本当に難しいのですが……」
「出来るさ。ティアナ嬢をエスコートする時に手を握るだろ?
その時、その手を潰してしまったか?」
「いえ……普通に握れますね?フローラおばさんに、むぎゅ〜とされた時、
息するために軽く押し返せます……」
「だろ?大切な事は、今迄も本能で加減出来ておるのだよ。
友人との付き合いの中で、それを普通に出来る様に学んだら良い」
「はい!理解しました」
「それと一つレオに頼みがあるのだが」
数ある作品の中から見つけ出し、お読みいただき、ありがとうございます。