月
月の魔力に導かれ、
狼がアオーンと吠えている。
強くなりたい強さをおくれ、
牙を光らせ今宵も獲物をかる。
その銀色の瞳、猛々しく、
野を走る姿はなお美しい。
月の魅力にあてられて、
あたしは今夜もメイクを決める。
良い男に出会えそう、
恋の予感に胸がドキドキ。
カラコンを入れた青い瞳は、
どんなイケメン社長も医者でも、
ハートをどっきゅん、射抜き夢中にさせる。
あたしを抱きたい?
なら、もっと求めなさい。
月の重力に持ち上げられて、
海水が陸地へと流れ込む。
まるで地球が涙を流しているようで、
月よ月よ、ああ月よ。
あなたはどうして麗しい。
あなたに接吻したいのに、
届かぬ距離に、胸が張り裂けそう。
もしも願いが叶うなら、
月の気持ちを聞かせて欲しい。
月明かりに照らされて、
今夜も一つの恋が幕を下ろした。
これが最後の恋でありますように。
彼と結婚できますように。
そんな祈りははかなくも、
闇夜に散って、淡い霧となる。
どうしてどうして、
ねえ、お月様。
私に幸せになる権利はないの?
月は答えない。
ただ毅然と、空に浮かんでいるだけ。
数多の願いを吸いながら、
夜を駆ける、黄色い円形。
魅惑的で謎めいたその存在。
今夜も地球に魔力を放つ。
狼は吠え、
男女は美をまとい、
地球は恋煩い、
あの子は過去の後悔に泣いている。
月が告げることはただ一つ。
さあ、
今日も熱い夜の始まりよ。