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5 嘘

 まずは不倫女から相手をしてもらおう。状況がわかっているのかわかっていないのか……どちらかしら。


「リーシャ様、私が誰だかおわかりですか?」

「はぁ!? 権力を使ってレオンと無理矢理結婚した他所の国の女でしょ!」


(ん? 初っ端からなんかおかしな話が出てきたぞ)


 単純に権力の差を見せつけて、ビビらせてからゴメンナサイしてもらおうと思っていたのだが、私の方が権力が上にあることは理解しているようだ。


「その話、詳しくお伺いしても?」

「白々しい! あんたは大きな国の姫様で、レオンと結婚できなきゃこの国を攻めるって脅したんでしょ! このクソ女! 私と結婚するはずだったレオンを無理やり奪いやがって!」


 そうして一呼吸置いて、さらに声を大にして主張した。


「本当の王太子妃は私よ! 未来の王妃は私なのよ!!!」


 おお~! そこまで宣言するとはある意味清々しい。多分レオンがそんな感じの言葉を枕元で言ってたんだろうな。

 今度は王だけではなく王妃も何か言いたそうだぞ。だがグッと堪えている。ユリウスが目を光らせているからだ。


「では今のお話について殿下、ご訂正くださいませ」

「はっ! 訂正することなどない!」

 

 などと強気に発言しているが目は泳いでいる。


「では私が」


 まあこの場で事実を知らないのはリーシャだけだろうが。


「結婚の申し込みは3年前、そちらの国から……陛下自らお手紙までいただきました。それもかなり切望されていたと記憶しています」


 多くの国が私の祖国と縁を持ちたいが為に、それはもうたくさんの縁談の話があった。そもそも恋愛優位の国で私の両親も恋愛結婚だ。母は隣国の大商人の娘だった。その為、各国の有力者が私や他の兄弟に見初められようと遊学に来ていた。


「ですから、私から結婚を申し込んだと言うのは間違いです。そもそも3日前の式で初めてお会いしましたし」


 レオンの顔は送られてきた肖像画で知っていたが、だいたいどの肖像画も本人の8割増しくらいイケメンに描かれることが多いので、あくまで雰囲気の確認だけ、いつの世も重加工は大事なのだ。


「たくさん舞い込んだ縁談の中から両親がこの国を選んだのは、私の幸せを願ってのことです」


 実際は私も一緒に選んだのだが、ちょっぴりしおらしく、初夜に不倫をされた可哀想なお姫様を気取ってみる。いや、実際そうなんだけどね。


「小さいですが活気にあふれ、国民は勤勉で王は誠実に国を治めているこの国なら、私が心穏やかに過ごせるだろうと思ったのです」


(あと、この国のお隣の国と最近取引きが増えてるからこの国通る時の関税安くしてほしいからです)


 まあ実際、リーシャの言うことはあながち間違いではない。この国が私の国の意にそぐわない事をすれば、祖国はこの国を攻めて滅ぼすことはできる。


(面倒だしそんなことしないだろうけど)


 物理的に攻めたりはしないが、外交や経済的なダメージを与えてこの国を痛めつけるのはより簡単だ。だから王や王妃、家臣も含め焦っているのだ。国を守る為にプライドを捨て私のような小娘に何度も頭を下げたりもする。


「この結婚自体も3年前に決まっておりましたが、お二人の出会いはいつですの?」


 まあこれも事前の調べで1年半程前とは聞いているが。そもそも王子婚約のニュースくらい国内に流れているだろうに。

 リーシャの顔色が悪くなる。いったいレオンからなんと言われていたのやら。


「嘘よ!」

「何がですか?」

「全部よ! 全部!!!」


 リーシャは髪を振り乱しながら一生懸命否定する。自分に都合が悪すぎる事実なので信じたくないから、否定だけする。話にならないパターンか。


「信じる信じないは貴方様のご自由に」


 こいつから謝罪を引き出すのは難しそうだ。すでに一発顔に入れたし、どうやらレオンの言葉をそのまま信じていただけのようだ。信じていた人に裏切られる気分は私にもわかる。贅沢な暮らしも今日には終わるだろうし、この辺でいいかな。むしろこれからの暮らしに彼女が耐えられるのか。


「レオン! ねぇ! 嘘よね!?」


 涙目のリーシャと目を合わせないようにレオンは他所を向いている。本当にどうしようもない愚図だな。誠実のカケラもない。


「嘘ではない!!!」


 あら! 今度は王妃様だわ。さっきからプルプル怒りで震えていたもんな~。

 ユリウスが確認するようにこちらを見たが、首を横に振る。吐き出すだけ吐き出してもらおう。


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