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3 話し合い

 王の呼び出しは謝罪のためだと察しがついたので、体調不良を理由に断った。今後全て、向こうの都合に合わせる気はない。


「マリア、例の女の件だけど」

「お任せください。調べは進んでおります」


 マリアは私の侍女だ。商家出身で賢く、大変気が利く。私にとってこの世界で裏切られたら1番辛い相手が彼女だ。


「アイリス様、徹底的にやりましょう」

「あら! そのやる気、いいわねぇ」

「当たり前です! 我々、昨夜は怒りに震えて眠れませんでした!」


 我々とは私が連れてきた者達だろう。故郷を捨ててまで一緒に付いてきてくれ、その上私の不運を悲しんでくれたとは。


(しっかりやり返さないとね!)


 だいたい私が舐められたら、連れてきた家臣達も舐められかねない。私がしっかりしなければ。


 それから3日、部屋でダラダラと過ごした。表向きはショックで寝込んでいることにして。その間こちらの機嫌を取ろうと様々な物が贈られてきたので、全部随行してくれた侍女や使用人や護衛にあげた。


「張本人の王子が一度も謝罪にこないとはどう言うことですか!」

「まあまあユリウス落ち着いて」


 血圧が上がるわよ。


「我が国の王も王妃もお怒りです!」

「もう連絡が来たの!?」

「当たり前です!!!」

「それで?」

「……思う存分にやれとのことです」


 よかった。両親や生まれ故郷に迷惑をかける可能性だけが気になっていたのだ。一応相手は王子で、こちらは姫だ。お互いそれなりの立場にいる。これで本当に思いっきりやれる。


「それじゃあお話ししましょって王に伝えてくれる? 関係者全員を呼んでねって」

「承知しました」


 さあ、どんな感じになるかな。


◇◇◇


「この度は愚息が大変申し訳ないことをした……!」


 開口一番、頭を下げて謝罪してくれたのはやっぱり王だった。


(頭下げる経験なんて滅多にないだろうに、こんな小娘相手に大変だな~)


 これが大国と小国との力関係だ。おそらく父からドぎつい手紙が彼にも届いたのだろう。顔色が悪い。


「陛下からの謝罪は結構です」


 国王は自分達の立場がしっかりわかっているようだし、私側のようだから許す。


「レオン!」


 王に促された不倫男は最初に舌打ちをした後で謝罪した。


「君のプライドを傷つけてしまい申し訳ない」

「レオン!!!」


 私やユリウス、その他こちら側の家臣の氷のような表情を見て王は焦っている。


「何故ですか父上! あの女は美しいリーシャに嫉妬して彼女を傷つけたのですよ! 本来罰する必要があるのはあの女の方ではないですか!」

「いい加減にしないか!!!」


 あーあーあーあー。ダメだこりゃ。


「それで?」


 ダメ王子は無視して女の方に話を振る。まだ腫れている鼻を隠し、こちらを睨みつけている。


「我が娘をこんな目にあわせたのはそこの女か!」


(勘弁してよ~)


 その瞬間、私の側に控えていた騎士が、女の父親を取り押さえ地面に組み伏せた。


「パパ!」


 リーシャが叫び声をあげる。


「貴様ァ! 何をしているのかわかってるのか!」


 男爵は取り押さえられているというのに強気だ。自分がなぜこんな目にあっているか理解していないらしい。


(なーにがパパじゃ! こちとら大国の姫で王子の妃だっつーの)


「いかがいたしましょう?」


 暴れる男爵など全く意に介さないように騎士が私に尋ねる。


「ユリウス、我が祖国では私にあのような口を利いた者はどうなりますか?」

「通常は王族にあのような暴言は死罪です」


 男爵を見下ろしながらユリウスが淡々と答えた。


「な、何を言っている!?」


 この男爵、別に何か功績をあげて爵位を得たのではない。王子レオンとリーシャの手切れ金代わりに、王が与えたらしい。


『俺と離れ離れになったリーシャが心配だ!』


 そう言って渋る王に頼み込んだそうだ。一介の飲み屋の店主が、ある日いきなり貴族の仲間入りをして勘違いしているのだろう。


「はぁ。話が進みませんわね」


 私はわざとらしくため息をついた。

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