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1 結婚初日

 初夜を迎えるはずの寝室のベッドに、私の相手になる男と見たことのない女が裸で横たわっていた。

 女の方はシーツで胸元を隠しながら勝ち誇ったような笑顔でこちらを見ている。


「殿下、その方は?」

「悪いが君とは寝る気にもならないんでな。俺にはこの可愛いリーシャがいる」


 こちらは片方の口元だけを上げ、歪んだ顔で私を馬鹿にする。


(この顔、鏡で見せてやりたいわ~)


 なんとも底意地の悪い顔つきだ。


「で? その方はどこのどなたで?」


 金髪巻き毛のその女はわざとらしく酷い! と泣き始めた。どうやらどこぞの男爵令嬢らしい。


「身分だけの君とは違う! リーシャは身も心も美しい女性なんだ!」


(この綺麗な黒髪と大きなグレーの瞳が気に入らないって? センス悪っ!)


 自分で言うのもなんだが、私はそれなりの見た目である。ちょっと顔つきはキツいと言われるが、間違いなく美女の枠には入る。ついでに言うと、金と手間と時間もかかっている。


「そうですか」


 私は無表情のままベッドに近づき、リーシャと呼ばれる女の髪を鷲掴みにした。


「イタイイタイイタイイタイ!!!」

「な、何をして……!」


 そしてそのままその顔面に、思いっきり自分の膝をぶつける。


「ぎゃあああああああ!!!」


(痛っ~!)


 もちろん、鼻から大量の血を流し始めたリーシャの方が痛いだろう。叫び方にも可愛い子ぶる余裕がない。


「リーシャ!!!」


 この国の王子であるレオンが慌てふためいている。


「キャーーーーー!!! 誰か! 誰かきてー!!!」


 大声で助けを呼んだのがリーシャでなく私だったことにレオンは口をぽかーんと開けて驚いていた。


(頭が回るのが遅いわね~)


 この国はダメね。早くわかってよかった。


「アイリス様!!!」


 私が国から連れてきた護衛達が勢いよく扉を開けて入ってくる。同時に、真っ青になっている王子の護衛達もいる。


「こ! これはいったい!?」

「殿下の側に曲者がいたわ! 早く連れて行ってちょうだい! 早くっ!」


 裸の男と鼻血を流す裸の女と、夜着の新婦、誰がどう見ても修羅場であるこの寝室の中で、固まっていないのは私だけのようだった。


「私も手伝うわね!!!」


 先程のようにリーシャの髪の毛を掴み、ベッドから引き摺り下ろすと、そのまま扉の外へポーイ! と投げ捨てた。真っ裸だが知らん。


 その後はもう大騒動だ。王も王妃も出てきて息子を叱っている。


「あの娘とはもう会うなと言っただろう!」

「しかし父上! 私とリーシャは真実の愛で結ばれているのです! なのに無理矢理あのような恐ろしい娘と結婚させて!」


 恐ろしいとは失礼な。愛するリーシャを護りもせずワタワタしていただけのくせに。


「貴方は次期王になるのですよ! 何が1番大切か考えなさい!」

「ならばそれはリーシャだ!」


 話が通じない息子を見て、王も王妃も頭を抱えている。


「詳しくご説明いただきたいのですが」


 私の両親の代わりに残っていた父の側近ユリウスはそれはもうどこぞの魔王様よりも恐ろしい顔をしていた。


「眠いので寝ますね」

「アイリス様! どうかお赦しを!」


 今や義理の娘となった私に様付けをしてくる王が哀れではあったが、知ったことではない。


「赦しません」


 そう伝えて自室へ戻った。

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