魔法少女の憂鬱
「シーニーだ!」
「シーニーがんばれー!」
小さい女の子たちが応援してくれると、不思議と負ける気がしません。私はミーラヤ・シーニー。中学生でありながら悪の秘密結社オッソロスと戦っています。友達のローザブイとビエリーも仲間ですけど、今日は都合が悪くてここにいません。一応言っておきますが、三人とも本名は別にあります。
「ボストーク・スマッシュ!」
今日の敵さんは強くなかったです。
「やったー!」
かわいいギャラリーもご満悦の様子です。一人の女の子が、私に寄ってきました。
「ねえねえシーニー! わたし、ちゃんと毎日お片付けしてるよ!」
このような子に、私はいつも微笑みつつ頭を撫でてあげるようにしています。
「あら、それは偉いですね。これからも続けてください」
「わーい、シーニーにほめられたー!」
「いいなー! わたしもー!」
小さい子は素直で可愛いものです。
——以前、ビエリーがこんなことを言っていました。
「別にオッソロスと戦うのはいいけど、そんなファンサービスみたいなのしなくてもよくない?」
実はビエリーは、遅刻の常習犯だったり宿題のサボり魔だったりします。オッソロスと戦うと決めたとき、妖精さんたちから『子供に優しくするように』『日頃から生活態度を良くするように』と言われたのです。
リーダーで元気印のローザブイが言いました。
「大切だよ。だって、こういうのって小さい子たちの憧れの存在でしょ? 私たちみたいになりたかったら私たちみたいにマジメにしてなさいって、小さい子のお母さんたちが言いやすくなるじゃん」
私たちがこのような会話をしていると小さい子たちが知ったら、がっかりされてしまうかもしれません。
妖精さんたちの真意はわかりませんが、私はとりあえず言われた通りにしています。つまらなくても真面目なのは私の長所だと思っていますし。ただ、こうやって子供たちの頭を撫でているときは、完全無欠の神様のようなものを演じている気がして、なんだかとてもモヤモヤします。たくさん撫でられて満足した子供たちは帰っていきました。
「……私も部屋の掃除、しないといけませんね」