追放物を書こうとした底辺作者が書いたものをみてくれ
「あんたをこのパーティーから追放するわ」
一方的に言い放つと、少女は仲間であったはずの少年に冷たい視線を送る。
場所は酒場。冒険者ギルドの中につくられた酒場だった。ギルドマスターがつくる料理が絶品だと繁盛していた。
「理由はなんだ?」
少年も負けじと少女を睨み返す。
ギルドマスターはできあがった料理を受付嬢たちに配膳を頼む。いいにおいをまきちらす料理がならび、少年と少女と同じテーブルにつくものたちは喜びの声をあげる。
「あんたとはやっていけない。性格があわない同士で組むパーティーは大成しないっていうからね」
運ばれた酒を手にみんなで乾杯をする。いい料理にいい酒、それだけで人間は幸せになれる。
「あんたとは昔から性格が正反対だった。冒険者になって、しょうがなくパーティーを組んだだけ」
「オレだって、そりがあわなくていらいらしっぱなしだったよ」
「ふぅん、そんな風に思ってたんだ」
少女はいら立ちをぶつけるようにフォークを突き刺して焼きたての肉を口に運ぶ
「熱っ!?」
「なにしてんだよ。すいませーん、おしぼりくださーい」
少女は渡されたおしぼりで口元をぬぐい、よく冷ました肉を少年から渡される。
そんな二人の様子を見ながら、同じテーブルにつく一人がつぶやく。
「おまえら、ほんとに仲いいよなぁ」
「「そんなわけない!!」」
二人の叫び声がまったく同じタイミングで響く。
「あんただって知ってるでしょ。わたしは前衛、こいつは後衛。こいつったら前衛のことなんて気にせず魔術を打ち込んでくるんだから!」
「あなただって知っていますよね。ボクが魔術を打ち込むのを邪魔する場所にこいつがいつも割り込んでくるのを!」
彼はパーティーメンバーの一人だった。倒してきた魔物は数知れず、竜退治にも参加していた。そんな彼がどうしてこのパーティーに在籍しているかというと『なんとなく』という理由だった。
そんな彼からして、二人の連携への評価は―――抜群。普通なら危なくてできないことも平然とやっていたが、二人にとっては当たり前のことだった。
「性格の不一致だっていうなら、お互いのどこが嫌いなんだ?」
二人に左右から大声でわめかれ、彼は眉間に皺をよせながら質問する。
「とにかくこいつはだらしないんですよ。この前のパーティーの休みの日、待ち合わせしてたんですよ。そしたら、こいつ何時に来たと思います? 二時間後に来たんですよ。これが個人的なものだったからよかったんですけど、依頼をうけたときだったら怒鳴り散らしてるところですよ!」
「おまえら休日も一緒なのか……」
少年のいらついた顔から少女の方に視線を移す。待ってましたとばかりに話し出す。
「その後、ずーーーーーっと機嫌悪いんだよ。しょうがなく、わたしが盛り上げてあげたら機嫌直してきてさ。楽しそうな顔しちゃってさぁ」
「やっぱり仲いいだろ、おまえら」
「「いや、悪いって」」
またもお互いの声がはもる。
面倒だとも思いながら、男の口の端は浮かび上がる。
「おまえらは将来の設計図とかあるのか?」
最初に答えたのは少女の方だった。
「わたしはね。やっぱり冒険者よね。この前、一緒になったSランクの冒険者に才能あるっていわれたのよ。わたしだったら間違いなく歴史に残る英雄になるはずね」
「はぁぁぁぁぁ? おまえ、ほんとにバカだな」
「なによ」
「英雄とか本気でいってるのかよ。おまえにどんな要素があるんだよ、いいとこ街を救った冒険者どまりだろうが」
「う、うるさいわね。夢をいっただけじゃない!」
顔を真っ赤にする少女に呆れた顔をする少年。今度は彼に話を振った。
「ボクの夢ですか? 失礼とは思いますが、冒険者を長く続けるつもりはありません。稼いだお金を元手に店を開きたいと思っています」
「何が、店主よ。あんたなんて下働きにも勝てないわ。いいとこ、店主にこきつかわれる番頭ってところね」
馬鹿にした少女の顔を、ぐぬぬと見返す少年。そんな二人を見ながら、お互いに認め合ってるなぁと思うだけだった。
「もう我慢ならないわ。あんたとはこれっきりよ!」
「あー、いいよ。もう魚の小骨とってあげないからな~」
「別にいいし、肉たべればいいから」
「鳥の皮たべられないくせによくいうよ」
「皮ぐらい、あんたが食べなさいよ!」
「やだね、絶対やだね」
ヒートアップした二人は遠慮のない言葉をぶつけ合う。
「じゃあ、今年の冬はマフラー編んであげないから」
「おまえ、ふざけんなよ。今年の冬どうやって過ごせばいいんだよ!」
今日はこんなものかと杯を傾ける。男の前で、二人のやりとりはいっそう白熱していく。
「やろうっていうのかよ。クソチビが」
「急にでかくなって追い抜いただけで調子づかないでよ!」
立ち上がった二人は息荒く組み合う。
周囲はそんな二人は見ながら、変わりなく料理と酒を楽しむ。一人、テーブルに残された男に周りの冒険者たちが話しかけた。
「なあ、あいつらがいつくっつくかって賭けは誰の勝ちになりそうだ?」
「一週間や一ヶ月のやつの掛け金は没収で。残っているのは『一生無理』と『十年』ってやつだけだ」
「そいつは気の長い話だなぁ」
ぐびりと酒を口に含みながら男は楽しげに二人を見るのであった。