幽霊さん
RPG定番の仲間集め!!
折角だから癖のある子を仲間にしたいよね
馬車の車輪の音を聞きながらゆっくりゆっくりと道を進む。
二人はのんびりとしながらも最低限の警戒をしていると急に馬車の速度が上がり一瞬体勢を崩す。
「あぁ、あんちゃんたち初めてかい?ここの森は最近おっかなくてね、すぐ向こうがこうやって一気に抜けるのさ」
そういいながら馬を走らせる人に二人は少し驚きながらも質問をする。
「おっかない?魔物でもいるのですか?」
「倒せれば楽なものさ。......何をやっても倒せない幽霊だよ、人に取り憑き人を殺しまくる......な」
そういいながら森を走っていると急に馬車が止まり、向かいに座っていたヒルデで飛んでラグナにぶつかる。
「あだぁっ」
「わっ......大丈夫?」
「平気」
ラグナが剣を持って馬車を出ると御者が頭を抱えながら震えていた。
「で、でた。奴だぁ!!」
その尋常じゃない怯え方に不思議そうに思ったがラグナは剣を持って前の馬車に向かうと一人の護衛の兵士が剣を持って別の護衛の兵士を斬り、逆に冒険者たちの攻撃を食らっても一切怯むことなく反撃をしていた。
「......ねぇラグナ。肌でわかる。あの兵士は操られている、明らかに気迫と本体の強さが見合っていない」
「あぁ......取りあえずあの兵士は死んだ」
狂った兵士に苦戦する冒険者達の間を抜け一瞬で懐に入り込んでラグナはその兵士の腕を斬り飛ばす。
すると兵士は糸が斬れたように倒れ、霧のような何かが集まり、少女の姿になる。
「......」
無言で少女の容姿は凄くボロボロな服で薄い赤い髪が雑に延びていて、ラグナを見つめた後、小さく呟く
「外に出たい」
その声と同時に霧になってラグナを包んだ瞬間にラグナはバックステップで避け、冒険者達のところまで下がる。
「大丈夫か?あの霧に兵士が捕らわれて急に暴れだしたんだ」
「......あの霧、恐らく亡霊だ、それも生半可なものじゃない」
「そうか。なら除霊で」
そう言いながら構えた瞬間少女は消え、静寂が包んだ。
その事に唖然としたラグナと冒険者だが取りあえず馬車を進めさえ、ラグナは後ろを警戒しながら考え事をしていた。
『外に出たい』そう言った少女の小さな言葉にラグナは考えた。
どうやって少女を倒すかではなく、外に出すか。
よくある日の光に当てられて消滅すると思ったが彼女は幽霊体の時はちょうど光の差すところに立っていて消滅する訳でもなく、人に取り憑いた事から人として外に出たいとは理解しているが、方法が思いつかなかった。
そのまま馬車の列はシャルルの町につき、冒険者達は馬車から降り、数日の滞在をしたあと再びホルストに戻ると告げられた。
ラグナは取りあえず近くの花園のベンチに座って考え出す。
「......。どうしたものかなぁ。倒さないと絶対犠牲が増えるが見た感じ倒せるわけがないし、外に出すにしても死体ではなく生きた体かぁ......」
何一つ思い付かないラグナの隣にヒルデが座る。
「......ひとつだけ......方法があるよ、中身にない実体を作り出す方法」
「ヒルデ?何か知ってるのか?」
「私が作られた時代......遥か過去にはそういう実験もあったの、そもそも私がその成功例の派生品だから......。魂の無い肉体の作り方を知ってるよ」
その言葉にラグナは顔色を変えてヒルデの手を握る。
「今すぐ教えてくれないか?」
「......。ただこれを作る方法は知らない。......私の記録はそれだけだから、でも存在はするの」
「......。そうか......考えても仕方ないし取りあえずあの幽霊ともう一回会ってみるか」
そう言ってラグナは少し準備を整えた後、ヒルデと二人で森の中に入る。
少し歩くとすぐに目の前に霧が集まり、少女になる。
「帰ってきてくれたんだ......うれしい」
「外に出たいだけなんだろ?......君」
ラグナが問いかけると少女は小さくうなずき、ラグナを霧になって包み、入り込もうとする。
しかしラグナはワンテンポ遅れてバックステップで避けると同時にその場に一つの小さな人形を投げ捨てた。
「やっぱりか」
「......え?」
それは小さな手のひらサイズの綿のかわいい少女の人形であり、反応できなかった幽霊はその人形に取り憑いて人形が浮遊する。
「......悪いな。俺は目的のためにこの肉体をあげられないんだ。でも、人体錬成の魔法をどうにか再現するからそれまではそれで許してほしい」
「......へぇ。今の時代の人が人体錬成なんて禁術知っているんだ......」
急に声色が変わり、生気に満ちた声で人形をまとう霧が喋り出す。
「?」
「あぁ失礼。私......いや、私たちが正解だな。私達は一言で言えば亡霊だ。ただ昔ここにあったこの町のほぼ全ての住民の......。私はもう名前も記憶ーも忘れ、ただ一研究者であったことしか知らない存在だが......うん。そうか、なら潮時だ。最近は私に存在よりこの少女の呪いが強くなってきてね、私の理性も消えかけているんだ、急がないと本当にただ人に取り憑いて虐殺するだけの怨霊になってしまう。......この森を北に進めば私の最後の研究成果がある、それを持って行くといい、君の探している『人体錬成』の方法とそこの後ろにいる兵器に秘密の手がかりぐらいはあるさ」
「は?」
勝手に喋り出すその何かに理解する時間もないが取りあえずラグナは北へ走る。
そしてヒルデと人形の二人だけになったとき、人形の霧は少しずつ小さくなり、人形に収まる。
「......本当にお姉さんたちが私に体をくれるの?」
再び声色に違う、少女の声に対し、ヒルデはその人形を手に持って、それを頭の上に乗せる。
「もちろん。とは言っても、人体錬成は普通の手段じゃ絶対に無理だから当分後になるけど保証する」
「......わかった。信じるよ私!!」
人形が空中を飛び回りながら周辺の物体を魔法か何かで浮かせ、小さな椅子にしてそこに座る。
余程気に入ったのかご満悦な人形は少し気になった事があった。
「そういえば私の名前ってなんだっけ?」
「......ポル。とかどう?」
「ポル?......うん!それいこう!!よろしくねお姉ちゃん♪」
「よろしくねポル」
少しするとラグナが一枚の古びたメモ帳を持って戻ってくる。
ポルは帰ってきたラグナの内ポケットに入りってボタンを閉める
「?」
「私はポル。よろしくねラグナ!!」
「????......あ、うん。よろしく」
軽く挨拶を済ませ、夜になら無い内に三人(?)は近場の宿に泊まり、ラグナはベッドに倒れ込む。
そのままラグナはポケットからメモを取り出し、内容を読む。
内容は全て人体錬成の材料と方法を細かく記載されていてヒルデという事前の情報がなければ笑って捨てる程雑であったが、それを信じた。
「......どう、ラグナ?できる?」
「不可能に等しいけど、等しいだけで出来ないわけではないね......取りあえずあの人の家にあった君の骨が一本あるけどこれを基に蘇生魔法と特殊な黒魔術が必須で......それもこれ、相当難易度が高いよ......」
「しょうがないなぁ...じゃあ私が適当な僧侶を乗っ取って蘇生魔法はどうにかするよ」
「......たぶんこれ、蘇生魔法の方も最上位だから厳しいよ」
「うげぇ。面倒くさいなぁ、でも、自分の体ぁ......」
「とりあえず今用意できものを集めよ」
「そうだね......ねぇラグナ。一応これから仲間ってことになるし、私の強さを見せてあげるよ」
「......乗っとるだけじゃないのか?」
「し、失礼なっ。それは奥の手で普通に瓦礫とか魔物とかも吹っ飛ばせるわよ!!」
「いまいち強さがわからんな」
「じゃあ少し体貸して、私の魔力の使い方を教えてあげるから......伊達に一万年ほど怨霊で生きてないわよ」
そう言ってふわっと霧がラグナを包み込んで取り憑くとふわっとラグナ本人はなにもしてないのに浮き上がり、空を舞う。
「!?」
「ハッハハハハハ軽い!!凄い軽いよこの体!!......少し飛ばすわよ!!」
そう言うと魔力を放出し凄まじい速度で遠く見えていた山に着地する。
そこはゴブリンの基地だったのか無数のゴブリンが棍棒を持って、ラグナに警戒していた。
「ラグナ。魔力ってね、炎や水以外にもそれその物で出来るのよ......例えばねっ!!」
右腕を振り上げると指先から小さい魔力の糸のような線が現れ、ゴブリンの肉体を貫通し、入り込む。
「こうやって細く鋭くすると......鉄だって斬れるの」
少し指を動かすと魔力の糸はゴブリンの住かを一瞬でバラバラに切断し、無数の糸がゴブリンに入り込む。
「後はこうやってお人形遊びもできるよ♪」
腕を振った瞬間に釣られるように無数のゴブリンの死体が引っ張られ、糸で操れた人形のように少し歪に動く。
しかしラグナは一切反応をせず、ただ黙り込んでいた。
「......寝てる。まさか魔力を引き出して数日なの!?......しょうがないなぁ」
疲労で眠っていたラグナを仕方なく操って空を飛びながら宿に戻って夜を過ごす。
▼ポルちゃんが仲間になった!
▼冒険の書に記録しますね