地を統べる
▶にげる
四方八方から飛んでくる剣を避けながらラグナは確実にライムの本体を切断していたが全く効いている気配はなかった。
「死角からの攻撃程度で俺を倒せるわけないだろ?何が狙いだ」
「......そうね。強さだけなら既にミラとアルラウネ以外には勝てるわよ。でもねラグナ。戦いは常に搦め手や切り札を持っておくことも大切だよ......まぁ、あなたの切り札を使われたら私は負けね、あればっかりは防ぎようが無いもの」
無数のライムを切り裂いて焼き払い、何重もの包囲を抜け、確かにラグナの手はライムの首を掴み、その頭に剣を突き刺す。
「うぅ。私が溶かせないからって乱暴してさぁ」
ライムの首を抉り飛ばした瞬間、周囲のライムの動きが鈍り隙ができたためすぐに空へと駆け上がり離脱する。
空中から落ちる首は変形して少女になって近くの剣と混じり体勢を立て直す。
空を見上げた時には空は曇り、無数に落雷や魔力の弾丸が降り注ぎ、無数の核が撃ち抜かれ魔力が行き渡らなくなってただのスライムに戻り地面に激しく激突する。
「うぐぁっ......。流石に雲より上は......しょうがない」
行き先がわからなく、一度連絡を取るために転移魔法で本体だけ魔王城へ帰還し、いつもの大部屋の席に座る。
そこにはただシロが左腕と一体化しているバイオリンのような、ビーム砲のような、よくわからない機械を鼻歌混じりに磨いていた。
「ふんふんふーん」
「相変わらずねぇ」
ライムに気付いたのか磨く事をやめてライムを少し見つめるとため息をついて首を振った。
「......逃がしたんだ」
「いやぁ、強い、ただ純粋に強いのよ。有効手段無いからさ」
笑いながら喋るライムにシロは黙って左腕から白色の細いビームを発射してライムを撃ち抜き、そのまま城やその背後のドラゴンや大地さえも貫通する。
「......四肢を切り落としても持って帰ってさえ来れば私のこの機械で治せるの。ふざけてるの?」
静かな少女から一転して冷徹な支配者のような冷たく重い声に殺気を乗せるシロにライムはそれでなお笑いながら答える。
「それは実質あなたの新しいボディでじゃないじゃない。ねぇ......過去の超大国にいた天才少女発明家『シロナ・レーヴァ』?」
「......うるさい」
「そうね、発明だけに生かされていた貴女に初めて恋心と家族の暖かみを貰ったラグナは......ね」
「......そう、もういいわ。私が行く」
ライムの言い分に言い返さずシロはバックパックから白金色の主翼とジェットエンジンを展開し、一斉に点火し、大窓を割って飛行する。
「いやぁ、恋する乙女は強いな」
シロの飛んでいった空を見ながらワインを片手に飲んでいる魔王がそっと呟く。
「魔王様?」
「いやなに、俺も勇者だった頃はいっつも魔法使いの幼馴染みに引っ張られてな、あのときのあいつの言葉を思い出しただけだ」
「......。まだ人間だった頃の記憶残っていたのですか」
魔王は自分の席に座り、隣の床に突き立てられていた巨大な剣を見ながら話す。
「あぁ、まだ朧気だがな......。勇者、魔剣士、エンチャンター、大魔道士。なにも知らなかった無知な俺たちが必死こいてお前らをやり過ごしながら魔王を倒してこの様になったことぐらいな」
「......。魔王様」
「こんな姿になっても人の暖かさだけは忘れたくない。忘れるぐらいなら死にたい。死なせてくれ......」
「当時は伝説の勇者だったあなたも随分と弱りましたね」
「ははは。その気になれば一人で俺たち全員を倒せたお前が言うか」
「ふふ。そうですね」
一方上空ではギネヴィアが次の目的地への進路を決めていた。
「取り敢えずこの地図が正しいなら砂漠の国が一番近いわね。皆は......って、居ないし」
ギネヴィアをよそに屋敷の地下にあった小さな石造りの部屋で三人は宝石や皮、砂なんかを集め、宝石に張り付けていた。
「うーん。もう少し大きいボディがほしいなぁ」
「そうは言ってもこれ以上は流石に」
泥人形を採寸するポルとヒルデ、ラグナは在庫から次々と材料を持ってきては泥人形に装飾し、魔方陣を書き続ける。
「......現状手にはいる物資じゃこれが限界かぁ。しょうがない、じゃあやろう」
「あーはいはい。ほいっと」
雑に泥人形に魔力を流して気軽に人体錬成を成功させ、泥人形はただの魂のない人間になり、人形に憑いていたポルが入り込み、ゆっくりと目を開ける。
「......おー。ぷにぷに」
何回か手鏡で自分の頬をつねったり、動き回り、椅子に座る。
「ちょっと小さいけどボディできた!!」
「小さくてもいいじゃねぇか」
どや顔のポルに対してラグナは雑に感想を言って蹴り飛ばされる。
「私はもっとこう大きいのがいいのよ!!」
「蹴るこたぁねぇだろ」
ボディ(小)を手にいれた!!




