2-1:月曜日1
2:月曜日
彼女は橙色のミディアムに、白のニットと赤いフレアスカート、丸顔にふくよかな体型、太陽のような雰囲気の女性だった。
しかし、たまに見せる影のある表情は月のようだった。
「おっす。あんたがポンコツさんか」
「あなたは?」
「おっす。僕はあんたに興味を持ってもらいたいんだ」
快活。
「興味をですか?」
「そうだ。あんた、物事に興味がないんだろ?」
「そうですね。あなたにも興味がない」
「え?ぼく?」
彼女は真顔になった。
顔が太陽のように真っ赤になった。
「違う。断じて違う」
熱烈に否定してきた。
「何が違うのです?」
「ぼ、僕は君に好かれようとしているのではないのだ」
「それは残念だ」
俺はニヤリとした。
「あ、あんた、からかったな」
「ああ、そうだ。一泡吹かせたくなってな」
「そうか。あんたにも欲望があって嬉しいぞ」
彼女は月夜のような笑み。
「どういうことだ?」
「僕はいろいろなものが欲しい。それをあんたにもわかってほしいのだ」
彼女は月を引き込むかのごとく両手を広げて言う。
「何を言っているのだ?」
「僕はなんでも欲しい。周りからは物欲の塊と言われているが、知ったことか。女性はもっとおしとやかである時代は終わったんだ」
ハイカラさんじゃあるまいし。
「意外とがめついのですね」
「そうだ。物欲は大切だ。強欲なくらいがちょうどいい。それが人の生きる活力だ」
夜中に光る月のように輝いていた。
「そんなものですかね?」
「どういうことだ?」
「俺は思うのです。『1つの物欲は多くの苦労によって帳消しされる』と」
彼女は、ほー、という顔。
「それは面白い考え方だ。ぜひご教授おねがいしたい」
彼女は知識欲で目を月光のようにキラキラさせた。
「俺の考えに興味があるのか?」
「なんでもほしい性分なのだ」
「それは珍しい人だ」
「珍しいものはなんでも欲しいのだ」
かつての月の石も欲しいのかな?
「それはすごいと思うが、俺の考え方は別に珍しくもないしすごくもない」
「珍しいかどうかは僕が決める。あんたは話せばいいのだ」
知識欲がぐいっとくる。
「モノが欲しいという欲望を持ったら、それを手に入れるためにいろいろとする必要がある。お金や人や技術が必要だ。一方で我慢するにも大変だ。むしろ、我慢することの方が大変かも知れない。それだけだ」
「つまらぬ」
バッサリとナタで切られた気分だ。
「え?」
「取るに足らぬ考え方だ。よくそんな考え方を僕の前で言おうとしたな」
「いや、あなたが言えと言ったのだろ?」
「人のせいにするな」
こいつ、なんだよ。
「そもそも、そんなこと当たり前だろ」
「当たり前と言われても」
「そういうものは、今まで努力してこなかった者が言うことだ」
俺は耳が痛かった。
「自分なりにはしてきたつもりだが」
「そう言うやつに限って大した努力はしていない」
心が痛かった。
「あんたは努力してきたのか?」
「してきたが、それがどうした」
「では、なにをどう努力したのか見せてもらってもいいですか?」
「では、高校の勉強を教えよう」
あいたたた。