8-6:ある金曜日
〇ある金曜日
金曜日に集金のようにやって来るのは、彼女が事務的だからか。
彼女は朝ごはんを大量に食べてからここに来ただとか、再び賭け事をしに来ただとか世間話をしてきた。事務的なマニュアルの会話方法なのだろうか?
「わたし、あなたと戦うのがたのしいです」
「そんな杓子定規なことを無機質に淡々と話されても」
互いに金属物のような硬い話し方。
「でも、本当です」
「それを認めてくれるのはいいんだけど、どうして俺も賭け事をしないといけないの?」
「私が賭け事したいからです」
「そこは嘘でも俺のためとは言わないのか」
「そうです。誠実なのが大切だと思いまして」
真面目というか、硬いというか。
「誠実な人間が賭け事なんかするかね」
「たまにはいいじゃなにですか」
「会うといつもしていると思うが」
金がないからいつも同じことをしている前の俺の状況と変わらない
「ところで、どうですか今回の勝負は」
「いや、普通だよ。2人神経衰弱、って普通だよ」
「2人でやるからこその楽しみは?」
「いや、ないよ。神経衰弱は変わらないよ。今までのと違って2人ならではの面白さがあるというわけだはないよ。何すごく特殊みたいな言い方をしているの。とても普通の神経衰弱だよ」
「なぜなんだろう」
疑問に思っているが。
「たぶん手札が関係ないからだ」
「どういうことです?」
機械的に聞いてきた。
「ババ抜きとかは、手札を持つじゃないですか。そうなってくると、ペアがたくさん出来たり、相手のカードがなにか分かったり、妙に手持ちが多くなったり、いつもの違うことが起きて新鮮なのです」
「そうですね」
「ところが、神経衰弱だと、手札を持たないので、結局大人数でやるのと変わらない状況になるのです」
「そういうものですか」
「実際そうじゃないですか?普通の神経衰弱と変わらないじゃないですか」
「じゃあ、普通の賭け事として楽しみましょう」
「そうですね……って、俺は楽しんでいない!」
勝手に2人の意見を合金させられかけた。
「そうなのですか?」
「だから、俺は賭け事が苦手というか、興味がないのだ」
「では、純粋にカードゲームとして」
「そもそも、カードゲームもそんなに好きではない」
「では何が好きなのです?」
「特にないね。しいていうなら、ユーチューブを見ることくらいかな」
俺は金属が電流を通すように話を流そうと思った。
「そっか。では、ユーチューブで賭け事関係を見ますか」
「どうしてそうなるの?」
アルマイト加工にぶつかった電流ぐらい話が止まった。
「いや、賭け事に興味を持ってもらいたくて」
「それはあんたの都合だろ?ほっといてくれ」
「賭け事に興味がない、お金に興味がない。今時の若者ってところですか」
「そうですね」
「そんなに覇気がないから、食欲もないのですね」
マクスウェルが電気と磁力をを結合させたこと以上の無理矢理な結びつけ方。
「そうかもしれないですが」
「だから、きちんとご飯を食べましょう」
「なんですか?そのとってつけてような催促は?」
「さっさと食べて、賭け事しましょう」
「そればっかりだな」
賭け事に対する欲が強すぎて食欲がどうでもよくなっていないか?




