8-2:ある月曜日
・ある月曜日
月曜日にやってくる彼女は、来て欲しくなかった。
それはボクっ娘だからというわけではなく、物欲が強いからでもなかった。勉強が嫌だっただけだ。
「あんた、僕の言ったこと聞いている?」
「聞いてますよ」
「じゃあ、なぜ二次方程式の実数解があるかどうかがわからないのだ」
シャーペンで問題を刺されたが。
「いや、解の公式を忘れたので」
「だから言っただろ。これは二次関数の頂点とx軸との関係だから、わからなくなったらとりあえず図を書くようにと」
先生のような威圧感。
「それがわからないんだよ」
「なぜわからないの?頂点の座標を求めたらいいの。2時間数のグラフが広がっているのが上か下かを見たらいいの。二次関数のグラフがx軸と交わるか確認したらいいだけなの」
「そんなに一度に言うなよ」
「じゃあ、まずは二次関数の頂点の座標を求めて」
俺は三日月のようなグラフを書いて少し考えた。
「……それはどうやるんだ?」
「そこから?!」
「だーかーら、最上級だからtheをつけるわけではないのだ」
「でも、そう習った」
「そう習ったかもしれないけど、それは違う」
学校批判か?
「じゃあ、どうするんだよ?」
「そもそも、theは名詞にしかつかないの。特定化された名刺だけ」
「でも、最上級のときは」
「それは、名詞があるのだろ?省略されている時もあるが、名刺があるの。それが最上級表現で特定化されるの。だからtheがつくの」
ノリノリで教えてくれるが。
「そんな説明、わからないよ」
「だから……」
「この国語の問題は……」
……
「くはぁ、お前、暇人か?」
俺は月を見上げるように小休憩。
「どうしてそんなことを聞くのだ?」
「だって、俺に勉強ばかり教えて」
「暇じゃないぞ。ただ、そうしたいだけ」
宇宙飛行士になりたい理由みたいなやつだな
「どうして?」
「いろいろな知識を得たはいいが、使うところがないのだ。それがもったいないから、今それを使っている状況が楽しいのだ」
「そんなものですか?」
「そうだ。物欲が強すぎて周りから孤立してしまった今だからこそ思うのだ。仲の良い話し相手は欲しい、と」
「……俺は別に仲良くはな……」
「仲いいだろ」
太陽と地球の間に割り込んだ月のような割り込み方。
「……いや、だから……」
「うん?」
「……仲いいです」
「よろしい」
否定を無視して無理やり認めさせてきやがる。こいつ、強欲だな。




