4-4:水曜日4
「ふーん。むずかしいな」
「そうかもね。でも、最初は気にしなくていいと思うわ」
……
「ふー、書けた書けた」
俺は1pの小説を書いた。
「どうです、書いた感想は?」
「うーん、とりあえず、書けたー!かな」
「ふふっ、それは良かった」
何が良かったのか。
「俺、てっきり最初は完璧の出来だと勘違いすると思った」
「違うかったの?」
「あぁ、違った。全くダメだった。もう懲り懲りだ」
「それは残念ね」
「あぁ。てっきり実力不足の人間が勘違いするように自分のことをすごいと思うと思ったよ。でも全くダメだ」
俺は手を切れたゴールテープのようにダラーンとさせた。
「実は、あたくしもそうだったのよ」
彼女は手を休めていた。
「でも、俺よりはマシだろ?」
「いいえ、同じようなものよ。本当にダメだったのよ」
「では、どうして書き続けようと?」
「なぜかしらね。ふふっ、わからないわ」
微笑んでいた。
「なんか、ずーっと優しいですね。俺みたいなポンコツを相手にしていて腹立たないのですか?」
俺の質問にひとこと。
「わたくしは、怒りを小説で発散しているから、大丈夫よ」
彼女はおしとやかに言った。
『1つの怒りは多くの苦労で帳消しされる』と思ったが、その通りだった。




