表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/40

2-5:月曜日5

「先生」

「なんでしょう」

おれは英語の文章を読んで、気になったところを質問する。

「ここ、時と条件を表す副詞節のなかなのに未来形があります。間違っています」

「そうですね。しかし、あなたのその知識は高校英語の知識であって、例外はいくらでもあります」

「そうなのですか?」

「分かりました?」

「分かりました……じゃねぇー!」

おれはプリントを叩いた。

「どうした?」

「どうしてごっこ遊びしているんだ?」

「そのほうがはかどるかな、と思って」

「そうかいそうかい」

 俺は月の任務から還ってきた宇宙飛行士のように疲れていた。

「聞きたいことは終わりか?」

「それともう1つ」

 俺は月明かりでもう一つ発見したように。

「なんだ?」

「さっき習ったこと、意味ないじゃん」

「何がだ?」

「時と条件を表す副詞節の中の未来形は現在形で表す、に関することだよ。例外はいくらでもあるのなら、覚える必要ないだろ。この長い言葉を覚えてしまっただけじゃねぇか。変に語感がいいから覚えてしまったわ。アウストラロピテクスや墾田永年私財法みたいに癖が強いわ、この言葉」

「ほぉ、そこに気づくとは賢いではないか」

「うるさい」

「それよりも、次は国語だな」

「うぉい」

 月を掴むかのように届かない相手との距離感よ。


「なんだこれ?」

「引用だ」

おれは本を読みながらパソコンを打ち、文章を書いていた。

「違う。いや、違わないけど、違う」

「何が違うのだ?」

 月が急に上がったかのように顔を出した彼女。

「いや、その、国語なのこれ?パソコン使っているけど」

「要するに、論文書く練習」

「論文?そんな恐れ多い」

 かぐや姫に求婚するくらい恐れ多い。

「まぁ本格的には知らないけど、一応の触りだけ教える」

「いや、だからこれが国語なの?」

「まぁ、読み書きすれはどれも国語みたいなものだ」

そうなのか?

「それよりも、引用しっかり書かないと」

「そんなに大切なのか?」

「そうだ。むしろ一番大切だ。根拠の問題でも権利の問題でもそうだ。極論、論文は引用だけでもいいといわれるくらいだ」

「誰が言っていたんだ?」

「僕の指導教官だ」

たぶん、本当にそうなのだろう。

「それで、引用した文章と自分の意見を対比させるのだ」

説明続くけど。

「なぜこんなことしているんだ?」

おれは聞いた。

「あんたが勉強したいと」

「言ってないよ!」

俺は拒否した。

「言ってなかったか?」

「言ってない」

 クレーターのようにデコボコとした返答。

「そうか、でも、どうせなら」

ん?

「今までつけた知識を使って、『1つの物欲は多くの苦労によって帳消しされる』に関して研究しないか?」

「いやだ!」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ