14話 知らない間に ◆オンライン◆
「今日のユウト、格好良かったね!」
満面の笑みでそう言ってきたのはエルフの少女、ユーノだ。
ここはノインヴェルトの世界。
首都ディニスの郊外にある、農村地帯。
リアルでの球技大会一日目を終えた俺達は、今晩もノインヴェルトで会う約束をしていたのだ。
前回のプレイ時にフレンド登録をしておいたので、彼女がログインするとすぐに通知がくるようになった。
なので、もう待ち合わせで苦労することはない。
俺達は前回ログアウトしたイビルバットの狩り場近くで落ち合うと、そのまま麦畑が広がる、こののどかな風景の場所まで移動してきた。
それも彼女が「ちょっと雑談したいよね」と言うので、モンスターに襲われ難そうな場所までやってきたという訳だ。
俺達は金色の穂が風になびく畦道に、並んで腰掛けながら会話する。
「ユーノまで、クラスのみんなみたいな事を言うなよ。なんだか、むず痒いし」
「だって本当のことだもん。みんなも驚いてたよ」
「それも全てこのゲームの力みたいなもんだけどな」
皮肉めいたことを口にすると彼女は首を横に振る。
「そんなことないよ。その力はユウトだからこそ神様が与えてくれた、ユウトの自身の力だよ。だって、他にそんな事できる人、見たこと無いし」
「……」
確かにそんな事が出来る奴がホイホイいたら、とんでもない世の中になっちゃうしな。
「誇っていいと思うよ」
「いやいや、誇っちゃマズいだろ。こんな力が使えることがバレたらテレビやらマスコミやら、世間が黙っちゃいない」
「じゃあテレビが駄目なら動画配信でいいんじゃない?」
「へ?」
「『魔法で不良の頭、燃やしてみた!』とかやったら再生数、爆上がりだよ?」
「さらりと恐ろしいこと言ったな!?」
時々、とんでもない事を言うよな……この子。
リアルの名雪さんからは想像も付かない発言だ。
「あとは『スキルで千円ガチャの闇を暴いてみた!』とかは? 透視スキルとかで」
「そういうのはいいから! あと、透視スキルは持ってないから!」
何故に動画ネタに片寄り始めた!?
「まあ……ともかく、せっかく手に入れた力だ。自分の首を絞めない程度に有効活用させてもらうよ」
「そうだね」
彼女はニッコリ笑って肯定だけしてくれた。
「それはそうとユーノの方はどうだったのさ」
「何の話?」
「球技大会。何に出場してたんだ?」
「ああ……」
彼女は浮かない声を上げた。
そういえば名雪さんが運動をしている姿が全然想像出来ないんだが……。
「私はバレーボール」
「ほう」
意外だな。
ていうか、どの種目でも意外だが。
「で、結果は?」
「負けた……と思う」
「思う?」
すると彼女は恥ずかしそうに頬を染めて俯いた。
「私……試合開始早々、顔面にボール直撃で保健室行きだったから……」
「ああ……なるほど……」
そこは想像通りの彼女だった。
ちなみに怪我は大したことなかったそうだ。
しかし、彼女は今の話で意気消沈してしまった様子。
なんだか余計なことを聞いてしまったかな?
そう思った俺は、気分転換に話を振ってみた。
「何かクエストでも受けに行かないか?」
「え……ああ、うん! いいね」
すぐにいつもの笑顔に戻る。
「じゃあ、一旦町に戻ろうか」
「了解」
クエストはNPCに話しかけることで発生するものもあるが、冒険者ギルドで受けられるものの方が確実で手っ取り早い。
「と、その前にゴメン。アイテムだけ整理させてくれ」
「いいよ」
先のイビルバット狩りで大量のアイテムがドロップしていた。
それをそのままにしてログアウトしてしまったものだから、アイテムボックスがグチャグチャだ。
どうせ町へ行くなら、いらない物は売っておきたいし、今のうちに整理しておこうと思ったのだ。
そんな訳でコンソール画面からアイテムボックスを開こうとした時だ。
その際に何気なく自分のステータスが目に入った。
それだけなら、なんてことはないのだが……、
そこに表示されていたのは、俺が知っているステータスとは違うものだったのだ。
[ステータス]
名前:ユウト 種族:ヒューマン
LV:7 職業:魔法使い
HP:370/370 MP:560/560
物理攻撃:210 物理防御:225
魔法攻撃:480 魔法防御:405
敏捷:239 器用:257
知識:364
[魔法]
ファイア〈火属性〉 Lv.4
クロスファイア〈火属性 全体攻撃〉LV.2
ヘルファイア〈火属性 グループ全体攻撃〉Lv.1
アイススピア〈氷属性〉Lv.2
サンダー〈雷属性〉Lv.2
ロックバイト〈土属性〉Lv.1
アースクエイク〈土属性 全体攻撃〉Lv.1
[スキル]
鈍化 Lv.3
駿足 Lv.2
不可視 Lv.1
隠密 Lv.1
ファストスペル Lv.2
知らない間にレベルアップしてるぞ!?
しかも魔法やスキルがめちゃくちゃ増えてる!
確か、前回のログアウト時はレベル6だったはず。
それから一度もプレイしていないのに……勝手にレベルが上がっている。
これは……どういう事だ??
【お願い】
ここまでお読み頂きありがとうございます!
少しでも「面白かった」「続きが読みたい」と思って下さった方は、ブックマークと評価をお願いいたします。作者の執筆へのモチベーションがアップします!
評価は各話ページ下部にある☆☆☆☆☆を★★★★★に変えるだけの簡単な作業です。
ブックマークはページ上部と下部にそれぞれございます。
恐れ入りますが、どうぞよろしくお願いいたします!!




