10話 お墨付き ◆オンライン◆
「それで、何て?」
運営からの返信を読んで呆然としていた俺にユーノが尋ねてきた。
「あ……いや……仕様だから問題無いってさ……」
「本当に!? やったね!」
「ああ、まあ……うん」
彼女は喜んでくれていたが、俺は本当にそんなんでいいのか? ってな感じで、ちょっと戸惑い気味。
しかし――、
そもそもリアルとステータスが同期している時点で普通じゃないんだから、ゲーム内容の不備だなんて些細なことにしか思えなくなってきた。
運営に「ゲームと現実が同期してるんですけど?」って問い合わせても、世迷い言だと思われて相手にされないだろうしな。
ていうか、ユーノもあれから俺が現実で魔法を使った事について全然、聞いてくる様子がない。
普通に受け入れちゃってる感じだ。
俺もそれくらいのノリで行った方がいいのか?
公式にお墨付きを頂いた訳だから、気にせず安心してプレイ出来るわけだし……。
なら、楽しんでしまったもん勝ちじゃないだろうか?
うん、そうしよう。
となれば早速、今回のレベルアップで増えた魔法とスキルをチェックしておいた方がいいな。
今回増えた魔法は、クロスファイアとブリザード、サンダーの三つ。
クロスファイアはファイアが全体攻撃になっただけの魔法だ。
雑魚敵をまとめて葬るには便利な魔法だろう。
ブリザードとサンダーはその名前のままの魔法だ。
敵の属性に対応した魔法を使い分ければ有効的に威力を発揮するだろう。
どの魔法もレベルが上がる度に威力が増して行くはずだし、種類が増えたことで戦い方のバリエーションに幅が出来て立ち回り易くなった。
スキルの方で増えたのは駿足とファストスペル。
こっちは詳しく見ていこう。
[駿足]Lv.1
一定時間、自身の敏捷を10%上昇させる。戦闘時の回避率に影響。
フィールド上での移動速度も上昇する。
これは便利だな。防御力の低い魔法使いにはありがたい。
でも、これって盗賊しか修得出来ないスキルじゃなかったっけ?
足の速い魔法使いなんて絵面的にどうかと思うし。
ともあれ……次に行ってみよう。
[ファストスペル]Lv.1
一定時間、自身の魔法詠唱速度を20%上昇させる。
こっちは魔法使いらしいスキルだな。
効率良くレベ上げするには必須の魔法だし、今後、詠唱に時間がかかりそうな大魔法を使う時にも役に立ちそうだ。
どれもこれもなかなか良い感じの魔法とスキルだ。
この調子でどんどんレベルを上げて行こう。
「じゃあ、イビルバット狩りを再開しようか」
「うん、じゃあまた釣ってくるね」
そう言ってユーノは再び洞窟の奥へと向かう。
そんな彼女に俺は一言添えた。
「今度は一匹以上でもいいよ」
今の俺には覚え立てだが全体魔法のクロスファイアがある。
HPや防御力にも余裕があるし、複数の敵でも相手出来そうだ。
「分かったー。じゃあ三匹くらい連れてくねー」
「了解」
さっきは一匹倒しただけでレベルが上がった。
今度は三匹ともなれば、もっとレベルが上がるはずだ。
楽しみにしながら彼女を待っていると――、
「うわわわわっ!?」
洞窟の奥でユーノの悲鳴が上がった。
「どうした!?」
「ごめん! 逃げて!」
そんな叫び声と共に彼女が慌てて駆け戻ってくる。
その言葉の意味は見てすぐに分かった。
必死に走って来る彼女の背後を十匹以上のイビルバットが怒りモードで追いかけてきていたのだから。
恐らく、手前の数匹を釣ろうとして、奥にいた群れをリンクさせてしまったのだろう。
こんな時、さっき修得した駿足スキルを使えば逃げ切ることが出来るだろう。
でも、彼女を置いて俺だけ逃げるなんてことは出来ない。
どのみち死ぬなら、やれるだけやってみるか。
俺は向かってくるイビルバットの群れに対して杖を構える。
「ユウト!?」
逃げようとしない俺にユーノは驚いた顔を見せた。
そして、走ってくる彼女と入れ替わるように魔法を放つ。
「クロスファイア!」
途端、宙から噴き上がった炎が十字方向にオレンジ色の爆風を飛ばす。
「ギギィィィィィィッ……!!」
それだけで、あれだけいたイビルバットが一匹残らず消失していた。
「うお……」
予想外の高威力に唖然とし、声も出なかった。
またしても一撃で倒してしまったぞ……。
どんだけ強いんだよ……俺。
これには、さすがにユーノも呆然としていた。
でも、結果なんとかなって良かった。
それにこんだけの数を倒したんだ、レベルも凄いことになってるんじゃないか?
そう思ってステータスを確かめようとしたが……。
そういえば、レベルアップのファンファーレが鳴らなかったぞ?
どういうことだ??
恐る恐るステータスを確認してみると……、
経験値は相当入っているものの、レベルはそのままだった。
なんでだ!?
やっぱりどこかバグってるのか?
それとも必要経験値のバランスがおかしいのか……?
とにかく、普通じゃない事だけは確かだった。
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