変な男子高校生たち
「ああ、クソッ、外れねえ」
高校2年生、田嶋慎平は登校中、自分の右手首に着いて外れない赤色のリングを引っ張ったり叩いたりして外そうとしていた。
(なんでこんなもん拾っちまったんだろ)
慎平は昨日の学校からの帰り道、道端に落ちているこのリングを見つけた。綺麗だったので試しに手首に着けてみると外れなくなってしまった。翌朝になっても外れなかったため、仕方がないので、制服の袖を伸ばし、なんとか隠している状況である。
(こんなん着けてたら確実にあいつらに笑われる)
10分ほどの登下校路を歩き、慎平は学校に着く。そして、靴を履き替え、教室へと向かう。
慎平は8クラスあるクラスの中で、4組に属している。そしてこのクラスには、慎平が警戒している''あいつら''もいる。
彼らとは1年から同じクラスで去年から気が合い、今では親友と呼べる存在だ。
だが、それがおしゃれなリングをつけている慎平を笑わないということには繋がらない。確実に笑う。そういう奴らだ。気をつかわずに仲良くできるのはいいことなのだが今回にいたっては悪いことだと慎平は思う。
拾ったリングを着けたら外れなくなったなど言えるわけがない。
幸い、教室にはまだ''あいつら''は来ていなかった。ひとまず慎平は安心する。が、
「お、おはよう慎平!!」
そう言って慎平に挨拶をしながら教室に入ってきたのは中村閏、慎平の親友である''あいつら''の1人だった。
(げ、きやがった)
おはよう、と返しながら慎平は心の中で悪態をつく。
「ん? 何でお前、そんな襟立ててんの?」
閏はなぜか制服の襟を不自然にまで立てていた。
「え? いや何でもねえよ!! それよりお前こそ何でそんな右だけ袖を伸ばしてんだよ?」
「お、俺も、何でもねえよ!!」
リングを隠すために伸ばしていた袖について指摘され、慎平は焦る。
「おはよう。慎平、閏」
聞こえてきたもう1人の親友の声に2人は振り向き、挨拶を返す。
「「おはよう!!」」
食い気味に。
「なんか2人ともいつになく元気だね。どうしたの?」
この少年は、藤津玲。閏と同じく、慎平とは去年からの付き合いである。
「「何でもない!!」」
また食い気味に答える2人を普通なら奇妙に思うはずなのだが。
「ならいいけど」
そう言って自分の席へと向かう玲。しかし、
「「なんでそんな変な歩き方してんだ?」」
右足を左足で隠しながら歩くという奇妙な歩き方をしている玲に2人は問いかける。
「な、なんでもないよ!!」
今日は3人ともどこか変だった。