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49話 作戦会議?

 「えぇ!? 襲われた!? 」


 週明け、休み時間に奇声を上げた藍の声に教室中が静まり返った。


 「ちょっと声が大きいよ! 」


 紫苑が藍をなだめていたが、時既に遅し…… 保木や伊藤が駆け寄り、クラスの皆が紫苑を中心に輪を作る。 紫苑とは二人の秘密にしておこうということになったけど、隣のクラスの藍の友達がナンパされていた紫苑を見ていたらしい。 その話の流れで暴露してしまった、というわけだ。


 「お前が冷静なところを見ると、佐伯が襲われたのは知っていたんだな? 」


 輪に混じらなかった遠藤が、自分の席で様子を見ていた俺を不思議に思ったらしい。


 「お前の推察力は蒼仁先輩並だな 」


 「あの人とは比べるな。 それより、怪我はなかったのか? 」


 遠藤の頭の中は、もう俺が紫苑を助けたことになっているらしい。 スルーしても後で追及されるのがオチだろうな……


 「まあな。 逃げ切れたから良かったものの、ちょっとヤバい連中だったよ。 何人かでターゲット囲んで無理矢理連れてく、みたいな 」


 「佐伯が狙われたところにお前が居合わせたのか。 勇者だな 」


 「妹のおかげだよ。 買ったDVDを忘れてくれたからあの場所に居合わせたんだからな 」


 「フム…… 騒ぎにはならなかったのか? 」


 「大声は出したけど、見てる余裕なんてなかったよ。 ってお前、まさかアイツらを捕まえようとしてるんじゃないよな? 」


 遠藤は眼鏡を中指で直しながら少しイラついた表情で俺を見下ろしていた。


 「察しがいいな。 直接力でねじ伏せることは出来ないが、今のご時世には個人の撮影動画や監視カメラという便利なものがあるんだ。 これを使わない手はない 」


 静かな怒りとでも言うんだろうか。 蒼仁先輩といい遠藤といい、この家系は怒らせると怖いかもしれない。


 「…… なんでお前が怒ってるんだよ? 」


 「当然だろう? 友人に手を出されて黙ってる方がおかしい 」


 今までそんなに絡みはなかったと思ったんだけど、遠藤は俺を友達だと思っていてくれたらしい。


 「でも放っておけよ。 少なくてもしばらくはアイツらも警戒して…… 」


 「自信があるサルほど躍起になって行動を広げるものだ。 このまま被害が拡大しても黙って見ていられるか? 」


「いや、見過ごす気はないけど…… 」


 「お前の妹が狙われるかもしれないぞ? 」


 「そんなふざけた奴がいたならフルボッコにしてやるよ 」


 遠藤がニヤっと口元を吊り上げた。 あ…… のせられた……


 「決まりだな。 叔父に警察関係者がいるから、その方面は任せてくれ 」


 「お、おぅ…… 」


 なんだか大ごとになってきたような気がする。 まぁ警察が動いてくれるなら心配することもないけど、監視カメラや撮影動画なんかで捕まえられるものなのか?


 「面白そうな話をしてるじゃない。 ウチも混ぜてよ! 」


 後ろから藍に首を絞められた。 少し鼻息が荒い…… こいつがこんな表情をするのは相当頭にきてる時だ。


 「混ぜてって…… 」


 藍の後ろには苦笑いの紫苑が立っていた。


 「あはは…… ゴメンね橙馬君、藍に全部吐いちゃった…… 」


 



 昼休みに職員室に出向き、昨日あった事を生徒指導の先生に話すと、しばらくは商店街中心部には近付かないよう通達するとの回答を貰えた。 


 「えー! やられっぱなしじゃ腹立つじゃん 」


 放課後、生徒会室に集まった役員の中には、当事者である紫苑と、はらわたが煮えくり返っている藍まで混じっていた。


 「いや、でも一般の高校生が警察に協力出来ることはないだろ 」


 話の流れで、警察がアイツらの犯行を押さえて身元を特定するまでには時間がかかるという結論に至った。 それであれば自分が囮になってアイツらを誘い出し、現場を警察押させてもらうというのが藍の案だ。


 「それに、お前を囮に使うのは俺は嫌だからな。 怪我でもしたらどうするんだよ 」


 「僕も貝塚に賛成だ。 助ける側の初動が遅れて、楠木が本当に襲われたら目も当てられない 」


 遠藤が賛同してくれる。 伊藤も遠藤の肩に手を置いて、これでもかというくらい頷いていた。


 「じゃあアタシが囮になる 」


 ソファでずっと黙って聞いていた楓が口を挟んできた。


 「論外だ。 逃げるのもままならないのに、どうやって抵抗するんだよ? 」


 楓は反抗せずに下を向く。 なんでそこで寂しそうな顔をするんだよ…… 


 「そもそもは私が襲われたんだから、私が囮を…… 」


 「却下! 紫苑は顔が割れてるんだから尚危ないじゃない 」


 藍の言い分はもっともだ。 次に顔を合わせたらそれこそ何をされるか分からない。


 「それなら適任がいるのだが 」


 ノックもせずに突然入ってきた蒼仁先輩は、会長席に座っていた俺の後ろにスッと回り込んできた。


 「…… 情報早いですね。 っていうか立ち聞きしてたんですか? 」


 「堅いこと言いっこなしだよ橙馬。 君と僕の仲じゃないか 」


 蒼仁先輩が生徒会室内を見回して軽く首を捻る。


 「おや? 三千院君の姿がないようだが 」


 「校外の見回りに行きましたよ。 ナンパ男の話を聞いて、学校周辺を見回るそうです 」


 『意味ないなぁ』と答えた蒼仁先輩が俺の肩に手を置いた。 うわっ! また体から力が抜けていく!


 「それはそうと、みどりがその囮作戦にとても乗り気でね、ダメだと言っても聞かないんだ 」


 「いやいや! 乗り気って、会長はそれでいいんですか!? 」


 「会長は君だよ橙馬。 まぁ僕は構わないよ、でないと僕が彼女の相手をしなければならないからねぇ 」


 意味わからん! 俺のツボをつくのも耳元で囁くのも意味わからん!!


 「というか、もう彼女はウキウキで現地に向かってしまったよ。 僕の仕事は君を説得する事、拒否権はないけどね 」


 クスクスと笑う蒼仁先輩の吐息が耳にくすぐったい。


 「さあ、早く了承してくれないと君も僕も大変な事になるよ? 」


 うわぁ! おっぱい揉むなぁ! ちょちょ! 股間に手が!?


 「たす…… 助け…… !? 」


 遠藤は眼鏡を直しつつ見て見ぬふり。 紫苑と藍と伊藤は真っ赤な顔で行く末を見守り、楓は蒼仁先輩に釘付けになっていた。


 「だ、ダメです! そんなの了承できましぇん! 」


 「強情だね君も。 それじゃ失礼して…… 」


 あ゛あ゛ー! ベルト緩めて手を入れちゃらめぇー!


  


 

   

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