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30話 感動の再会なわけがない!

 他の代表者がステージを飛び降りて行く中、俺はステージ上から楓の姿を探した。 二ノ宮会長のあの顔…… きっとこのイベントを利用して、俺と楓を会わせるつもりなんだ。 俺が『車椅子の女子高生』と書かれたくじを引いたのも初めから仕組まれてたこと。 まったく、余計な事をしてくれる。


 「どこだ…… 」


 闇雲に探し回ったって時間がかかるだけ…… 観客の間に隙間が空いていないか注意深く観察する。 菜のははすぐ見つけられるのに、楓はさっぱり見当たらない。 車椅子なら場所を取るから必ず観客の隙間が大きい筈だ。


 「いた! 」


 俺はステージから飛び降りて観客のど真ん中を突っ切る。 グラウンド入口のフェンス横に、先に楓のお母さんを見つけたのだ。


 「楓! ちょっと力を貸せ! 」


 「え? ちょっとあなた! 」


 ビックリするお母さんに失礼しますと断って、楓の車椅子を力任せに押す。


 「燈馬! なんなのよこれ! あぶっ! ちょっ! いやぁー!! 」


 ひじ掛けにしがみついて振り返る楓は鬼のような形相だ。


 「お前が借り物競争のお題なんだよ! 二ノ宮会長に聞いてんだろ! 」


 「聞いてないわよ! お……落ちる! まだ足にうまく力入んないんだからぁ! 」


 道を作ってくれる観客の間を抜け、ステージ前まで戻ってきた俺はくじを掲げて柳原先輩の顔を見る。 トップで戻ってきたんだから当然一位だろ!


 「それで一位を取ったつもりかい? 燈馬。 僕は認めないよ 」


 マイクを握った二ノ宮会長が頬杖をついて俺に微笑む。 は? なんで? 柳原先輩もマイクを構えたままどうしていいか分からないといった顔だ。


 「借りてきた商品はちゃんとステージまで運ばないと 」


 そういうことかよ! だけどステージにスロープが付いている筈がなく、車椅子ごと楓を持ち上げるのはさすがに無理な話だ。 くそ……


 「暴れるなよ? 今からお前を抱き上げるからな 」


 楓の返事を待たずに俺は楓の背中と膝裏に腕を滑り込ませた。


 「ちょっちょっ! ダメだって燈馬! 恥ずかしい! 」


 真っ赤な顔をしてバタバタ暴れる楓に構わず、お姫様だっこで階段を駆け上がる。 こいつメッチャ軽い…… 幽体の時に見た体つきじゃないことは、服の上からでもすぐにわかった。


 「これでどうですか! 会長! 」


 「うん、満点だね。 さすが僕の燈馬だ 」


 会場にドッと歓声が沸く。 校舎からも俺の名前を呼ぶ声がステージまで届いていた。


 「借り物競争のお題としてアンタに再開するとは思わなかったわ。 サイテー 」


 「仕方ねぇだろ。 多分二ノ宮会長が仕組んだ事で、俺もハメられたんだから 」


 お姫様抱っこしたまま審査員席を向くと、二ノ宮会長は『後はお好きに』とニコニコと俺達を眺めていた。 いつまでも楓を抱き上げているのも恥ずかしいのでその場に降ろそうとすると、俺の首に回していた楓の腕に力が入る。


 「ダメ! アタシまだ立てないのよ 」


 そっか、まだリハビリの途中だもんな。 真っ赤な顔をして俺を見つめる楓は、首にしがみついたまま

降りようとはしない。 ヤバ…… ウルウルした目で俺を見るなって!


 「疲れたんだよ。 おも…… 」


 照れ隠しに重いと言う前におでこを平手打ちされた。


 「勝手に抱き上げて重いとか言うな変態! お尻触らないでよ! 」


 歓声が徐々にざわざわとどよめく声に変わっていく。 おいおい、こんな大観衆に変態扱いされたらたまったもんじゃないぞ!


 「さ、触ってねーよ! 誰がお前の尻を好んで触るんだよ!? 」


 「はぁ!? アタシのパンツガン見してその目に焼き付けてたくせに! 」


 うわバカッ! それは誤解だし問題発言だぞ! 楓自身も言ってから真っ赤な顔をして、思わず俺達はステージ下に視線を向けた。


 「「あ…… 」」


 案の定観客はシーンと静まり返り、クククと二ノ宮会長の笑いを堪える声だけが響く。


 「お兄ちゃん…… 」


 唖然と俺を見る菜のはの目線は冷たく、回答席の藍や遠藤は開いた口が塞がらないといった様子。


 「ち…… 違うんだああぁ! 」


 俺はステージを駆け下り、楓を車椅子に放り投げるように座らせて、逃げるように車椅子を押してグラウンドから退散した。




 「うぅ…… もう終わりだ…… 」


 人気のない校舎裏の非常階段の影に逃げ込んだ俺は、座り込んでうなだれる。


 「なに情けない事言ってるのよ。 たかだか変態扱いされるだけのことじゃない 」


 「たかだか言うな。 菜のはにはあんな目をされるし、全校中継されてたんだぞ? 佐伯になんて思われたんだか…… 」


 告白しようと決めた当日にこんなハプニングがあるなんて、やっぱりこいつに関わるとロクなことがない。 恨みを込めて楓を睨むと、楓はフイっと顔を背けてアタシは知らないという素振りをしていた。


 「…… 皆の前でパンツは悪かったわよ。 弁解する時はアタシも手伝ってあげる 」


 「いらねーよ。 そんな暇があるならリハビリ頑張れ 」


 素っ気なく楓の厚意を断ると、楓は口を尖らせて俺に振り向いた。


 「頑張ってるわよ! 言っておくけどメチャメチャツラいんだからね! っていうか、なんでリハビリしてるの知ってるの? 」


 「二ノ宮会長から聞いたんだよ。 お前が俺に会いたがってたっていうのも聞いてるし、ここに編入しようとしてるのも聞いてる 」


 楓は重苦しいため息を一つ。


 「じゃあなんで顔見せてくれなかったのよ? 体に戻れたお礼を言いたかっただけなのに 」


 「別にお礼なんていらねーし。 言いたかったら自分の足で歩いて俺に会いに来い。 その方がリハビリも編入試験も頑張り甲斐あるだろ 」


 「なにその上から目線、バカじゃないの? アンタがカッコつけてもカッコよくないし、そういうセリフが似合うのは蒼仁先輩だけなんだから 」


 ハイハイ、そうでございましたね。 そもそも楓を救ったのは二ノ宮会長だし…… と考えていると、楓は頬杖をつきながら深呼吸をした。


 「じゃあお礼は歩けるようになったら言いに行くから、その時は逃げないでよね。 まったく…… お母さんに無理言ってここに連れて来てもらった意味がないじゃない 」


 つぶやきにも似た楓の文句には、何も言わず聞いているだけの方が良さそうだ。


 「せっかく蒼仁先輩にチャンスを与えてもらったのに。 感動の再会だと思ってドキドキしたアタシの気持ちはどうしてくれるのよ…… 」


 ドキドキ? なんでお前が俺にドキドキするんだ? 尚も楓はブツブツと独り言を続ける。 ほとんど聞こえないくらいだけど、収拾がつかなくなりそうなので話題を変えてみる。


 「リハビリは順調なのか? 」


 「…… 見に来れば? アタシが入院してる場所も知ってるんでしょ? 」


 可愛くねえぇ! 素っ気なく答える楓にイラっとしたけど、少し頬を赤くしながら言う様子に言い返すことは出来なかった。 まぁお互い様…… という事にしておこう。


 「それより戻らなくていいの? 結果発表始まってるみたいよ? 」


 楓の言葉に耳を澄ますと、柳原先輩のスピーカーの声に合わせて盛り上がる歓声が聞こえた。 そうだなと答えて車椅子のハンドルに手を掛けると、一人で戻るからとお断りを食らう。


 「早く戻りなさいよ。 アンタがいるとお母さんに説明するのいちいちめんどくさいし、アタシがいたら妹さんが警戒するでしょ? 」


 「んん…… んじゃ、気を付けて戻れよ。 悪かったな、競技に巻き込んで 」


 「アンタのせいじゃないでしょ 」


 ニコッと笑う楓に一瞬ドキッとした。 俺はくるっと楓に背を向け、手だけを軽く上げて会場へ走り出した。


  

  


 

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