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29話 模擬店対抗バトルの罠

 校内放送での二ノ宮会長の星院祭開催宣言で校門が開け放たれ、一般客が一気になだれ込む。 地域を巻き込んでの学校祭の為、来場数は生徒を除いて毎年1000人を超えるほどの盛況だ。


 「ヨネクラ2! ふわとろ1! 注文入りましたー! 」


 まだ9時過ぎだというのに、我が2年A組の<メイドのまかないオムライス>は満席で、廊下にも行列が出来ていた。 ホテル・ヨネクラが監修というキャッチフレーズと、500円であのオムライスが食べれるという口コミが広がっていたらしい。 注文数こそ少ないけれど、佐伯が担当するふわとろオムライスも好評で、厨房スタッフはずっとフル稼働で動いていた。


 「執事さーん! 写メお願いしまーす! 」


 俺はというと、本格的な燕尾服を珍しがるお客さんが写真を撮りたいと呼ばれたテーブルを回っている。 吹石副会長にお礼のメールを送ると、吹石家の執事長さんが実際に使っている物だと返信が来た。 執事()って、吹石家にはどんだけ執事がいるんだよ! と突っ込みはしないでおく。


 「燈馬、休憩入ってくれ。 ジャケットだけ置いていけよ! 」


 ローテーションを組んでホールスタッフは休憩を取る。 ジャケットだけというのは、特別製の上着を写メ用に残していけということだ。 集客を見込めると判断した阿笠が考えたことだが、大半は藍達メイドと写メを取りたい男連中なんだけどな。


 「凄いねお兄ちゃん、モテモテじゃん 」


 気付かなかったけど、どこからか菜のはが俺の仕事を見ていたらしい。 モテモテと言われれば気分はいいけど、目的は燕尾服であって俺じゃないし。


 「おにーさんおにーさん、二ノ宮生徒会長は何をしてるんですか? 」


 菜のはの友達二人はすっかり二ノ宮会長のファンになったようで、食い気より会長の影を探してずっとキョロキョロしていたと、菜のははため息をついていた。


 「ずっと思ってたけど、いまいちお兄ちゃんと生徒会長さんの接点が分からないんだよなぁ…… 何かしたの? 」


 「いやー…… 特に何も 」


 「嘘だね。 お兄ちゃん嘘下手だからすぐわかるもん 」


 鋭いな…… 適当に合わせておくか。


 「実はな、二ノ宮会長から…… 」


  ― 午前11時より、模擬店対抗競技を開催します。 出場予定の生徒はグラウンドに集合して下さい。 繰り返します。 午前11時より…… ―


 タイミングよく校内アナウンスがかかる。 忙しくて気付かなかったけど、もう二時間も経ってたんだな。


 「おーい藍! 遠藤! 行くぞー! 」


 入口に顔を突っ込んで二人の名前を呼ぶ。 裏方の遠藤は制服のままで、藍はメイド服でエプロンだけ取って参加するようだ。


 「頑張ってね、お兄ちゃん! 」


 「おう、任せとけ 」


 どんな競技が待っているか知らないけど、まぁ頑張りますか。




 吹奏楽部の演奏をバックミュージックに、模擬店対抗バトルが始まった。


 「ニューヨークに行きたいかー! 」


 「「おおー! 」」


 対抗バトルの司会の掛け声に、参加者は拳を振り上げて歓声を上げた。 このフリ、使っていいのか?


 「さぁ始まりました星院祭対抗バトル! 司会は私、放送部部長の柳原が務めさせて頂きます! よろしくお願いいたします! 」


 「「うおおぉぉ! 」」


 「「きゃああ! 」」


 グラウンドの一画に組まれた特設ステージの中央でフリフリの衣装を着て手を振っているのは、皆のアイドル的な存在の柳原先輩だ。 ステージ下ではうちわや応援幕を持った生徒達が黄色い声をあげ、中にはケミカルライトを振り回している集団もいた。 なんだか地下アイドルのライブを見ている気分だ。


 「ありがとー! さあ対抗バトルを公平に審査する方は、この学校の理事長以下10名の皆様でーす! 」


 「「わああぁぁ! 」」


 おぉ…… 強面の理事長までノリノリじゃねぇか。 でも理事長以下10名って簡単すぎる紹介だな。


 「今年は体育祭要素も含めた問題10問で競います。 早速第1問目! こちらをご覧下さい! 」


 柳原先輩がステージの後ろに手を振ると、真っ白な巨大スクリーンに数学の問題が投影された。


 「四角形ABCDにおいて、AB=5、BC=6、BC…… 四角形の面積Sを答えて下さい。 答えはフリップに書いて後ろのパイロンで区切られたコースを走り、ゴールの佐藤先生が採点します! よーい! スタートぉ! 」


 跳び跳ねて合図をした柳原先輩にステージ下のファンが歓声を上げる。


 「うえぇ!? めっちゃ難しいじゃん! 」


 「そりゃウチの学校は超進学校だからねぇ。 これくらい出来ますよって外部にアピールもしたいんじゃない? 」


 俺もさっぱり分からないけど、藍も諦めモードだ。 これって確実に上級生有利な問題……


 「ほら出来たぞ、走れ楠木! 」


 涼しい顔をした遠藤が眼鏡を光らせて藍にフリップを差し出した。


 「い!? 遠藤君あの問題解けたの? 」


 「いいから走れ! 他の模擬店はもうスタートしている! 」


 藍は奪い取るようにフリップを受け取って走り出した。 メイド服で全力疾走する藍は、歓声を受けながら一人を抜いて4位でゴールする。 スカートなのに相変わらず速ぇなアイツは…… メイドスカートもヒラヒラしないような工夫がされているみたいだ。


 「3位でゴールした1年C組の答えが不正解でしたので、2年A組が3位に繰り上がりでーす! 」


 「よっしゃ! 」


 遠藤とハイタッチすると、校舎の方からも歓声が聞こえてきた。 窓から聞こえるアナウンスと、放送部がテレビ中継しているらしい。 


 「続いて第2問! こちらをご覧下さい! 」


 スクリーンにはモナ・リザの絵が映し出された。 これで何を競うんだ?


 「お手元のフリップにこのモナさんを模写して下さい。 美術の佐藤先生と、観客の皆さんが採点します 」


 「えぇ!? ウチ絵は下手だよ! 」


 「俺もだけど…… 」


 藍と二人で遠藤に視線を移すと、眼鏡のフレームを中指で持ち上げて目すら合わせない。


 「出番だよ燈馬! 」


 バンと二人に背中を叩かれてフリップとペンを持たされる。


 「制限時間は5分でーす。 オモシロイ(・・・・・)モナさんをお願いします! 」


 オモシロイ? ってどういうことだ? と、そんなことを考えてる場合じゃない! 俺は一心不乱にモナさんを書き写した。



 「最優秀は1年A組! ユーモア賞は2年A組でしたー! 」


 結果発表と同時にスクリーンに映し出された素晴らしいモナ・リザに観客は拍手喝采、俺のモナ・リザに大爆笑する。


 「燈馬、あれはモアイだよぉ! 」


 藍も遠藤も笑いが止まらなかったが、校舎からは燈馬コールを貰えた。 そんな感じで対抗バトルは進み、早くも最終の10問目。


 「最後の問題です! 代表者一名でステージまでお越しくださーい! 」


 藍と遠藤が9問目でバテてしまった為、あまり出番のなかった俺がステージに上がる。


 「10問目の問題はこちら! 借り物競争です! 」


 ボックスからくじを引き、全員が引き終わってスタートの合図でくじを開いて、書かれている品目を持って戻ってくるという一般的な借り物競争だ。


 「用意はいいですかー? 皆さんも一緒にカウントダウン! スリー! 」


 結果はくじ運次第…… あまり役に立ってない分頑張ろう。


 「「ツー! ワン! スタート! 」」


 合図と同時にくじを開く。 勢い余って半分に破いてしまったが、繋ぎ合わせて上下を反転させる。


 「車椅子の女子高生…… 」


 は? 車椅子? 女子高生?


 嫌な予感がして、審査員席の二ノ宮会長を見る。 会長は爽やかな笑顔で明らかに俺を見て手を振っていた。 ハメられた…… 条件に合った人物は一人しか思い付かなかった。






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