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27話 優しい? 甘い?

 「この子達がやったと白状したわ。 一年生の二ノ宮親衛隊だそうよ 」


 もう犯人を見つけたのかよ! 風紀委員…… というか吹石副会長怖ぇ。 理由を聞けばやはりターゲットは俺一人で、二ノ宮会長に壁ドンをした時の目撃者だったらしい。 あの時から俺が気に食わず、この星院祭でどさくさに紛れて復讐するつもりだったという。


 「だからってアンタ達のしたことは犯罪だよ? わかってるの? 」


 怒りが収まらないのは藍の方だった。 二人のうち、ずっと俺を睨み付けている気の強そうな方に掴み掛かりそうになる藍を慌てて止める。


 「手を出すなって! 」


 「なんでよ!? こんなことされて星院祭楽しめなくなって、アンタだって悔しいでしょ!? 」


 衣装がなくなってホールスタッフをやらなくて済むし、裏方に回れば菜のはと模擬店も回れる…… とは言えなくなってしまった。


 「確かにめっちゃ悔しいさ。 君達だって俺が気に食わないんだろうけど、二ノ宮親衛隊の他の人の事も考えなきゃ。 君達が問題を起こすと他の隊員の責任にも繋がっていくんだ、それは分かるよね? 」


 二人は何も言わず俯いたまま。 親衛隊と誇張するのだから、連帯責任というものがあることを知って欲しかったんだけど…… まぁいいや。


 「これで気が済んだ? 」


 犯人の二人に呆れ顔で聞いてみると、もう一人の後輩が泣き始めてしまった。 気の強そうな方も目を逸らし、ブツブツと何かを呟いている。


 「あったま来た! 燈馬が許してやるって言うのに謝ろうともしないんだなお前ら! 」


 「だからやめろって! 」


 殴りそうな勢いの藍を後ろから羽交い絞めにする。 ため息をついた吹石副会長は、もういいわと指宿先輩に彼女達を連れていくよう指示した。


 「本当にこれだけで良かったの? 燈馬君 」


 「いいですよ。 元はと言えば俺の行動が招いた結果ですし、大騒ぎにしたくないですから 」


 ここで罰してしまえば気も晴れるけど、その噂はきっと保護者の耳にも入る。 今後の星院祭の開催そのものが怪しくなっても嫌だ。


 「わかった、彼女達の処分は私達に任せてもらうわ。 大人な対応ね燈馬君…… でも一つ忠告するのだけど 」


 「忠告…… ですか? 」


 「女の子に優しいのと甘いのを履き違えないでね。 女は甘やかすと怖いわよ? 」


 フフッと笑う吹石副会長だったが、目は笑っていない。 ゾクゾクっと背中に悪寒を感じながら、俺達は生徒会室を後にした。


 「燈馬は何も悪くない 」


 藍は面白くないらしい。 一緒になって悔しがってくれるのは嬉しい事だけど、後輩にナメられるのが気に食わないのかずっと怒りっぱなしだ。


 「もう放っておけよ。 もう手を出してくることはないだろうし 」


 「違う、楓って子が腹立つの! アンタ掻き回されっぱなしなのに、礼の一つすらないんでしょ!? 」


 そっちかい。 いや、俺自身もう関わりたくないだけなんだけど。


 「楓の事は別にもういいんだよ。 今も復帰に向けてリハビリ頑張ってるって聞いたし、俺が会いに行ってないだけだから 」


 「居場所、知ってるんだ 」


 キッと睨み付けてくる藍に白々しく知らないと言うと、『嘘だ』と全力否定されてしまった。


 「連れてけ 」


 「やだよ、めんどくさい 」


 「連・れ・て・け! 」


 胸ぐらを掴まれてグイっと引き寄せられ、キスしそうな距離で凄まれる。 ち…… 近いですよ藍さん? 


 「い…… 行ってどうするんだよ? 」


 「土下座させて謝らせる! 」


 それこそ面倒なことになりかねない。 仕方なく俺は藍に二ノ宮会長越しに楓が会いたいと言っていることと、この学校に編入するかもしれない事を話した。


 「俺に会いたいなら頑張って歩けるようになって、自分から会いに来いって思うから敢えて行かないんだよ。 そうすればリハビリにも気合入るだろ? 」


 「そこまで面倒見ることないじゃん。 会って謝らせて二度と近づくな! でいいじゃん 」


 「それはそれで冷たい気もするんだけどな 」


 友達がいない…… アイツ自身が言っていた事を思い出す。 二ノ宮会長を追いかけてこの学校に編入できたとしても、ただそれだけの学校生活はきっと寂しい。


 「みどり先輩に甘いって言われたばっかりなのに…… アンタがそれでいいならいいんだけど 」


 胸をトンと叩かれてやっと解放してくれた。 楓か…… 今も二ノ宮クリニックで必死にリハビリしているんだろう。 根性のある奴だから、来年あたり本当に編入してくるのかもしれない。


 「おっ、燈馬! やっと戻ってきたか! 」


 自分のクラスに戻ってきた俺達を待っていたのは、大量のビラを抱えた青葉だった。


 「配りに行くぞ、付き合えよ 」


 俺の返事を聞かずに青葉はビラの半分を俺に渡してくる。


 「俺ホールスタッフなんだけど? 裏方のお前の仕事だろこれ 」


 「固いこと言うなって。 タキシードなくしたお前はもう裏方の一員なんだよ 」


 そりゃまぁそうか。 妙に納得して青葉に付き合ってくると藍と別れる。 配るビラはメニュー表を載せたもので、数か所に配置してご自由にお取りくださいというものだ。 昨日決まったふわとろオムライスもしっかりメニュー表に載せ、二つの看板メニューとして勝負する。


 「なぁなぁ、明日は菜のはちゃんも連れてくるのか? 」


 「ああ、菜のはも楽しみにしてるからな。 お前には預けないぞ? 」


 そりゃないぜー! と青葉はオーバーリアクションで泣き崩れた。 割と本気で言ったが、俺や藍が手を離せない時には菜のはを青葉に預けてボディガードさせた方が安全かもしれない。 その時は頼むよ相棒! 本番は明日…… 俺にとっては、佐伯に想いを伝える本番でもある。 妙に緊張しながら、本番に向けて準備を進めるのだった。 






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