桜木姫乃:見えざるの怪物との戦い
一ヶ月も間隔を空けてしまいましたが、何とか続きが出来ました。次もいつ書けるか分からないですが、せめてもう少し感覚を開けずに書きたいです
怪物が倒れている人に突き刺していた触手を引き抜いた。多少の擦り傷はあるものの、その人には大きな外傷は無かった。だけどもその人の顔には生気が無く、微かなうめき声を上げているのにとても生きているようには見えなかった。まるで、魂が抜かれたかのように…
怪物はそうなった人をよそに、中心にある口らしき所に触手の先端を運び、そこに持った何かを食べ始めた。怪物が口を開け何かを噛む度に、不協和音の聞くかのような不快な音が微かに聞こえる。
「待ちなさいよ!桜木さん…ってちょっと、そこの人はどうしたの?」
後ろから清水さんが私に追いついてきた。
「し、清水さん、あれ…」
私は目の前で何かを啜り食らう怪物を指さす。だけど…
「は?あれって何?」
「だから、目も前のあれ!」
「あれって何よ!?ところであんたの前に居る人はどうすんの?あんた人を直せるんでしょ?」
様子がおかしい。まさか清水さん…
「あの怪物が見えないの!?」
「怪物?」
私達と怪物の間は5メートルもない。なのに清水さんは目を細めて、まるで何もないところを見ているみたいだ。そうこうしている内に、怪物は一瞬動きを止める、まるで食べ終わったかのように。しかし、まだ足りないのか、新たな獲物を狙って触手を伸ばす。それは、私達の方へ向かってきた。
「避けて!」
「えっ?」
迫りくる触手が見えていた私は、身をかがめて躱すことは出来た。だけど、清水さんは咄嗟に動けず、触手の先端が清水さんの胸に突き刺さった。
「あ…ああ…」
清水さんの目が見開き、口から声が漏れ手足が痙攣する。ヤバい!すぐにあの触手を外さないと!そう思い清水さんに駆け寄る。だが彼女を触手から引き離すことは出来なかった。触手に触れて何かする前に引き抜こうとしても、触れられずに手がすり抜けていったのだ。
「そ、そんな!」
半透明で、触れない。つまりこの怪物は、幽霊なのだ。それに気づいても、私では打つ手が無い。私の職業、聖女が使える業は傷を治したり体を強化したりと自分や他人をサポートする業。直接触れられない幽霊に対して私じゃ打つ手が無い!
「ファイヤーアロー!」
だけどもそんな時、背後から炎の矢が幽霊に刺さって爆発する。人の物ではない悲鳴が聞こえ、それと同時に清水さんに突き刺さった触手が抜けた。
「っ、ゲホッゲホッ!はーっ、はーっ…」
「清水さん!?大丈夫!?」
激しく咳き込む清水さんの目は、ちゃんと生気がある。ギリギリ、魂が抜かれなかったらしい。今の攻撃は…
「坂木君?」
私達の後ろに杖を構えた坂木君と、三馬鹿の残りの二人、小林君と柊君の姿があった。外の騒ぎに気づいてここに来たみたいだ。
「桜木さん、清水さん、無事ですか!」
「うん、何とか。清水さんも、ギリギリで助かったみたい」
清水さんの身体から力が抜けてそのまま地面に倒れこむ。呼吸はしているから、気絶しただけのようだ。手遅れにならなくて良かった。でも、まだ終わってない。
「坂木君!アレまだ生きてる!」
私が坂木君に声をかけると彼は視線を私達からあの幽霊へと向けた。坂木君も、あの幽霊が見えるようだ。幽霊は焼ける痛みに悶えながらも、未だにその場にいる。直ぐに火は消え、一部が爛れていながら、それは私達の方を向いていた。
「二人とも構えて!」
坂木君が後ろの二人に呼びかけ、私も清水さんを降ろして立ち上がる。
ここからが、あの幽霊との戦いの本番だ。
姫乃視点は次が最後の予定で、その後から聖子視点にもどります




