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桜木姫乃:馬車

最近忙しくなって、気が付いたら一ヶ月近く経ってしまいました…

なるべく早く更新したいですが、そうも言ってられない現状、とりあえず次は半月までに書き上げたいです。

ドン!


「うぅ…」


小石に乗り上げたのか、馬車が大きく振動する。この感覚は何度目でも慣れないよ…馬車に乗るのは初めてだったけど、こんなにも辛いなんて思ってなかった。初めこそ「馬車なんて初めて!」なんて呑気に喜んでた私だけど、サスペンションは無いから揺れるし窓から見る景色に飽きたら途端に退屈になった…クッションがしっかりして、乗り心地は悪くはないのがせめての救いだ。


「桜木さん、大丈夫ですか?」


「う、うん…」


一緒に馬車に乗ってる坂木くんが安否を気遣ってきた。この四頭の馬が引っ張る立派な馬車の中には私達7人が向い合せで座っている。馬車に乗っているのは御者を除いて全員、この世界に勇者として呼ばれた同じクラスの生徒だ。


「…」


最初はもっと頻繁に話し合っていたが、流石にもう話のネタも尽きてしまった。何せ私たちが馬車に乗ってからもう三日も経っているから…





「よし、これで全員いるね?」


「全員?待ってください、まだ一人いませんが…」


ゲルダさんの言葉に一人反応した。私達のクラス人数は28人、そしてここにいるのは26人だ。ショウちゃんが居ないのを除いても27、確かに一人足りない。


その理由を、私は前もって聞かされている。


異世界に召喚された次の日、私達は王城の広間に集められた。そこで王宮魔術師、ゲルダさんが昨夜の夜にあった襲撃について話した。それは前もって私が医務室で聞かされた事と同じ内容だ。襲撃はショウちゃんが牢獄から抜け出し、魔導書を取り戻すため起こして、それによって勇者、クラスの一人が亡くなっていると。


クラスに一人死者が出た事は、私達に衝撃を与えたようだ。与えられた個室から出ている時に騒動に巻き込まれて死んでしまったのだと。叫んだり怒鳴ったりと阿鼻叫喚な有様。そうでない人たちも茫然としているか、青ざめた顔をしていた。


私も含め、殆どが異世界に連れてこられたのを真剣に考えていなかったのだと思う。元の世界に返してと叫ぶ人も何人かいた。だけどゲルダさんはそれは。無理だと告げた。送還には召喚に使った極大魔石が必要で、それが無ければ異なる世界と繋がらないと


今になってようやく皆理解したんだと思う、ここは平和は日本じゃなくて、危険が溢れる別の世界なのだと…


そしてその後に、ゲルダさんは昨日の襲撃の正体はショウちゃんがやった事だと告げ、またしてもクラスの皆がざわついた。更に国王は彼女の存在を大いに危険視し、私達勇者に彼女の討伐も命じると。





今、私達は三つの部隊に分かれている。


一つ目は当初の呼ばれた理由、魔王盗伐を目的とした部隊。ただし今も魔王盗伐討伐を続けたいと志願した人は少なく、全員で五人しかいない。でも彼等はぶっちゃけ現実を逃避して、今もゲーム気分でいるグループだ。その勇者パーティーの人数としては適切でもあまり期待できそうにない。


二つ目が私がゲルダさんに入れられたショウちゃんの討伐部隊今この馬車に乗っている七人だ。ゲルダさんが、「国王あいつは殺せと言っていたが、私ゃ殺るつもりは無いよ。まだ心根は腐ってないようだし、あの子には利用価値がある」と言っていた。少なくとも、私とゲルダさんはショウちゃんを殺すつもりはないようだ。


ショウちゃんが今私の事をどう思っているか分からない、もしかしたらもう私とは合わないつもりかもしれない。だけど、私は会って話がしたい。だからこそ、ゲルダさんに誘われるままショウちゃんを追う舞台にいる。


それに、会いたいのは私だけじゃない。ショウちゃんに好意を寄せている坂木恭弥、柊修斗、小林春樹の三馬鹿も一緒にいる。私がショウちゃんの事で誘ったら喜んで志願してくれた。その好意の在り方は全員微妙に違うようだが、ショウちゃんの味方なのは間違いない。ただしほかの三人は全員ショウちゃんを殺すつもりみたいだ。特に佐々木くんはショウちゃんの名前を出しただけで怒りが顔に出る。ある意味この部隊が一番複雑だ。


残りの15人の生徒は護衛部隊、王城の警護の部隊を志願した。警護と言えば聞こえはいいものの、実際は町の外に出れない、戦う事を拒否した人たちの部隊だ。ショウちゃんのやたらと敵視した王様だが他の私達には「無理に戦う道を選ばずともよい」と実質お城に引きこもることを許可した。危険は目にあいたくない、安全でいたい。そう考える人がいるのも分かる。私もショウちゃんの事がなかったら、彼等といっしょだったかもしれないから。



そんな訳で私達、通称第二部隊が馬車で向かっているのは、王都の南東、国の中央に位置する町、サルヴィラってなまえだっけ?。私がショウちゃんを感じる方角が南東だとゲルダさんに教えると、サルヴィラに向かっている可能性があると言った。馬車で三日掛かる距離だと言っていた。今日がその三日目だが、もうすぐお昼なのにまだ町に着く様子は無い。


暇を持て余して、馬車内部の中央にある台座、そこに置かれている玉に触る。


サクラギヒメノ、聖女、LV12 


出発の前に、私達は集められた魔物と戦わされた。ラージラットって名前の魔物で子犬程の大きさのネズミで気持ち悪かった。何でもこの世界では村の中であろうと街中であろうと魔力があるなら至る所に魔物が沸くのだ。これは今でもビックリしている。ゲームとかではイベントを除いて町の中とかは絶対敵が出ないが、現実はゲーム程甘くなかった。


だからこの世界の人たちは対策として敢えて街中に魔物が沸きやすい空間を作り、そこから出る前に駆除しているのだとか。私達が戦った魔物は、その駆除するはずの魔物を捕まえて集めたのだそうだ。最初は私含め皆殺すのを躊躇っていたが、最終的には作業みたいな感じになった。


兵士達の引率によるパワーレベリングは捗り、出発の前の日にレベルが二桁になった。確かに勇者はレベルが上がりやすいっと言ってたけど流石に早すぎとは思った。中にはもう20目前の人もいるくらいだ。だけど今鑑定席に映るステータスは前と見たステータスと全く同じだ。何せ馬車に乗り始めてから戦闘は付き添いの兵士任せで私たちはずっと馬車のなかにいて戦ってないのだから。せめてhpとかmpが見えればもっと見ごたえがあるのに…


「はぁ…」


何度目か分からないため息。ゴロゴロと、馬車の車輪が回る音と時折乗り上げる小石の音だけが、この退屈な馬車の旅に響いていた。


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