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仲間

ガタン、ガタン、と荷車が私とアレス君を載せて走る。


あの後、死霊ですべての兵士を気絶させてから私たちは荷車を奪って町を出た。


荷車を引くカバのような魔物は、つーを憑りかせて操っている。確か、オーダルって魔物だとアレス君が言ってたと思う。荷車の乗り心地は良くないが、本来は人が乗るような物じゃないので諦める。


一緒に気絶させた本来の持ち主のことを考えると心が痛むが、移動手段があるに越したことは無い。


既に町から離れ、日は完全に沈んだ。雨も、今は止んでいる。モーリスに後方を確認させているが、追手らしき存在は確認できないと言っていた。


「もうしばらくしたら、止めますので、そこで野営しましょう」


「追手とかは、大丈夫なんですか?」


「ええ、周囲に見当たりませんし、使役霊に見張りをさせれば早めに探せますのでしばらくは安全のはずです」


霊の視界は視力に依存しないので星明りしかない夜間でも問題ない。飛び上がって見渡せば不意を撃たれることは無いはずだ。


「…色々出来るんですね、ショーコさん」


「そうでもないですよ、私は死者に出来ることを任せてるだけですから。むしろ、アレス君こそ色々出来るじゃないですか」


彼の弓も、狩人の業も私には無い物だ。弓を射る所を微かに見たが正確で素早い狙いだった。


「いえ、俺ができるのは、親父から教わった狩人のやり方だけです。それすらも未熟ですし、自分で守るなんて言っておきながら、結局ショーコさんを危険な目に合わせてますから…」


だけども彼はあまり自身が無さげだった。結局私が結界を消すことになって、自身の力不足を嘆いているようだ。


「危険だったのは一緒です。それに、アレス君がいなければ、私は逃げ切れませんでした。今日だけでも二回、貴方に助けられています」


ゲルダと佐々木さんから逃げるのに一回、そして門の結界壊しに一回。両方とも、一人だけでは切り抜けられなかった。父と扱う術に比べれば私の術は未熟で、ゲルダのような格上の魔術師には敵わない。死霊術師への対策を押し破れるほどの強さも無い。沢山の敵がいる死霊術師わたしがたった一人で帰る手段を探すなんて、最初から無理な話だった。


「私には足りないものが多いです。だから、これからも頼りにしていいですか?」


私がそう問いかけるとアレス君は少し悩んだ後、弱々しく呟いた。


「その、一つだけ、いいですか?」


「はい、何でしょうか?」


アレス君は何か私に問いかけたいことがあるみたいだ。一体なんだろうか?


「仲間、じゃ駄目ですか?」


「…え?」


質問の意味が分からず、硬直してしまう。


「その、ショーコさんは、共犯者って言いましたけれど…俺は、仲間って呼ばれる方が…すみませんっ!変な事言っちゃって!」


俯きながら話すアレス君。そういえば、確かにそんな事を言った、アレス君は私の共犯者だと。それは、死霊術師ネクロマンサーである私を助けようとする彼も、悪人になると思ったからだ。


実際、私は疑いようもない悪人だろう。魔導書を取り戻す時にも死者が出た事を佐々木さんが言っていた。町から逃げる時も、きっと何人か死んでいるだろう。悪霊の存在は離れて確認できないが、悪霊によって被害が出ると分かっていながら、自身の逃走の為にむしろ悪霊を援助した。だから私は自他共に認める悪人だ。


でも、アレス君は違う。誰が何と言っても、私がいい人であると信じて疑わないのだろう。アレス君はただ私を助けただけだ。誰かに心身になって助けようとする人が悪人のはずがない。共犯者と言うのは間違いだ。悪いのは私一人で、彼はいい人なのだから。



「分かりました、ではアレス君は私の仲間ですね」


そういうと、途端にアレス君の顔が上がる。さっきまで暗かった彼の表情は打って変わって嬉しそうだ。確かに共犯者よりも仲間も方が聞こえがいいし、アレス君が仲間の方がいいというなら彼に合わせよう。


「よろしくお願いしますね、アレス君?」


自然と、アレス君に微笑みかける。


「っ!」


だけど彼は直ぐに視線を横に逸らしてしまった。あれ?もしかして何か、間違えてしまったのだろうか?



『主よ、その…わざとやってる、訳ではないんですね…』


『えっと、モーリス?私何か間違えましたか?』


モーリスに問いかけてみるが彼はため息を吐くだけで答えは返ってこず、かと言ってアレス君に何が悪かったのかも言えず、しばらくの間つーが夜道を駆ける足音と、回る車輪の音だけが響いていた。



次の投稿は久しぶりの姫乃視点です。

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