行動
相変わらずの更新頻度ですが、無理なく続けられるように頑張ります。
「クシュン!」
雨の冷たさに体が震えてくしゃみが出る。身に着けたローブは雨を弾いてくれているが、戦闘の最中でフードが外れたので、ローブの内側に入る雨を防げず、濡れた服や髪が体に張り付いて気持ち悪い。
「え?あ!大丈夫ですか!ショーコさん!?」
「は、はい。もう、大丈夫です。」
このまま放っておくと風邪を引きそう。だけど感じた悪寒が、泣き終わって立ち呆けていた私に理性を戻してくれた。
「それより、そろそろ動きましょう。多分この町にはアレス君が見た二人の他にも追手が居ます、多数か少数か分かりませんがここにいるだけではいずれ囲まれます。」
寒さに耐えながらアレス君に告げる。泣き出してからどれ程時間が経ったかあまり分からないが、ここで暖を取る余裕は無いはず。今から行動しなければまたあの聖術師、ゲルダに見つかる。そうなれば、次も逃げられる保証は無い。
「それは、今から町の外に逃げるって事ですか?」
「ええ、町に追手が居るので、これ以上は留まれません。」
「でしたら早くしないと、この町は夜になると壁の門が閉まっちゃいます。もう夕暮れですからこのままでは間に合わなくなります!」
門が閉まる、確かにそれはまずい。入るときに見たがあの大きさの門が閉じたら開けさせるには死霊術で操っても時間が掛かりそうだ。そうなれば逃げるにはかなり厳しくなる。
「私を逃がさないために、門がもう閉まっている可能性は?」
「それは…ないと思います。入るときに並んだのを覚えてますよね?ここは大きい街ですから人の出入りが多いんです。特に商人何かは朝から門が閉まるまで引っ切り無しに出たり入ったりするとガルドさんに聞きました。だから今ならまだ空いているはずです。」
良かった、どうやら既に門が下りている最悪の状況は無いそうだ。だけど私そのまま門を通ろうとしても止められるのは目に見えている、王城を襲った時のように、やるしかないようだ。その前に…最後に一回だけアレス君に問い詰める。
「アレス君、ここで私に協力すれば、もう引き返せませんよ?本当にいいんですか?」
「ええ、ショーコさんを守るって決めましたから。」
そんな私の問いを彼は躊躇いなく返してくれた。
「…分かりました、アレス君は今から、私の共犯者です。」
背負っている鞄から魔導書を取り出す。雨に濡れてしますが、仕方がない。丈夫だし後で拭いておけば大丈夫、のはず…
「きょ、共犯者って…ってなんですかそれ!?」
どうやらアレス君は共犯者というのが不服そうだが、それより私が取り出した魔導書で驚いたみたいだ。例え一目で材料が分からなくても、見るだけで他者を不快にする代物。もし何で出来ているか言ってしまうと彼の意志が揺らいでしまうかもしれないので黙っておこう。
「これは、魔導書です。襲われていた時は取り出す隙がなくて使えませんでしたが…」
あそこでこの魔導書を取り出すのは無理だったし、例え最初から出してあっても魔導書を使っての術は私は詠唱無しでは使えないのでゲルダにその隙を突かれていたと思う。だけど、今なら真価を発揮できる。閉じたままの魔導書、死饗祭典に周囲の魔力を注ぎ込む。
『死の世界の王、冥府の守り人に代わり、我、東雲聖子が彷徨える死者に命を下す。汝らは我が手、我が足にして我が声、疾く我に従え!』
詠唱を終えると同時に勢い良く死饗祭典が開き、込められて増幅した魔力が赤い光を発しながら一気に拡散する。
「うわっ!」
突然の光に驚くアレス君。光そのものは眩しくは無かったが死者の言葉が聞こえない彼からすると前触れもなく光ったような物だ。私の手の上にある魔導書は、今も開かれたページの血文字が仄かに赤く光っている。
「あ、ごめんなさい、アレス君。」
「え、ええ…それより、今の光は?」
この世界では直接契約でつながった使役霊、モーリスやつーは何かに宿ってなければ私から50メートルの範囲から離離れられない。直接支配した死霊も50メートル以上離れると制御が曖昧になり、100メートルを超えると支配下から完全に外れる。それが私が死霊を知覚できる範囲の限界。だけどそれは独力の話…
「魔導書を使って死霊を従えました。今この町に存在する死霊は、全て私の支配下です。」
死饗祭典を使えば、町一つの範囲なら無理なく支配出来る。さて、行動開始だ。




