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決断

前回から間が開いてしまって申し訳ありません。

これからはなるべく週一で上げれるようにしたいと思いますが、また遅れたりするかもしれません。

「あれ、ショーコさんですか?」


ドアを叩くと、アレス君の返事が返ってくる。隣の部屋にいるとは言っていたが、部屋を出かけていなくて良かった。


「はい。少しお話がしたいので、中に入ってもいいですか?」


「ええ!?」


何故か驚かれてしまった。今は都合が悪いのだろうか?そうなら時間を空けないといけない。今がダメなら後に話そう、と言おうとするが


「えっと、だ、大丈夫です。今ドアを開けますね!」


と言ってアレス君がドアを開けてくれるので、部屋の中にお邪魔させてもらう。あの悪霊が路地裏にいたのは人目に付かない方がいいと理解していたからだと思う。外は雨が降ってはいるが、日はまだ落ちていないので悪霊は動いてはいないはずだ。倒すにしても、無視するにしても、動き出す前に会話を済ましておきたい。


「ショーコさん、椅子に座ってください。」


アレス君は部屋にある椅子を私へ差し出そうとする。ここの宿は道中の村にあった物と比べ、値段が高い。その代わりなのか、部屋にはベッドの他に椅子と机があった。ただし一人部屋なので、椅子は一つしかない。ここはアレス君の部屋なので、椅子は彼が使うべきだ。


「椅子はアレス君が使ってください、私はベッドの上に座りますので。」


そう言いつつベッドの椅子に近いところに腰を下す。高さはベッドが少し低いが床の上に座るよりは見上げなくて済む。


「っ、…その、話したいことがあるんですよね?」


少し戸惑ってからアレス君が椅子に座る。何かおかしかったのだろうか?気にしないことにする。


「ええ、ひとまずは、私をここまで連れてきてくれて、本当にありがとうございます。」



「それは、前にも言ったじゃないですか、父に送り届けるまで帰ってくるなって言われましたし、妹の為の薬も作ってもらいましたし。」


「薬に関しては、一晩泊めてもらっただけで十分でした。むしろ私は貰いすぎです。タニアさんから貰った調合本も、貴重な物ですよね?それにアレス君、むしろ自分から進んで私の護衛を引き受けたんじゃないんですか?」


ずっと思っていた疑問を口に出す。一晩泊めてくれるだけで私は良かった。村も裕福には見えなかったからそれ以上は期待していなかったし、追い出されても仕方ないと諦めたと思う。だけど私はそれ以上を貰ってしまった。最初はタニアさんに頼まれて、と思っていたが、その働きぶりから、そうは思えなくなった。


「それは、俺も町に行く予定があったし、丁度良かったから…」


「今すぐに、というものじゃないですよね。タニアさんが村に戻ってきたばかりでしたし、アレス君も狩人としてのお仕事がありますよね?」


町に行く予定があったとしても本当ならずっと後のはず。町までの一週間、アレス君にはとても世話になった。ここで別れるのを、惜しむくらいには。だからこそ、私は知りたくなってしまった。彼がここまで私を助ける理由を。


「アレス君、どうして貴方は、私を助けてくれるんですか?」


「…ショーコさんって、危機感が足りないと思います。」


え?危機感?


「私、がですか?」


「そうですよ!最初に村に来たときは信じられませんでしたよ!イビルベアが住む山をを通ってくるなんて。ここまでの道中も、魔除けから離れて採取もしたましたし、戻ってきたときにショーコさんが居なくてビックリしたんですよ!?」


「ご、ごめんなさい!」


急に声を上げたアレス君にビックリして反射的に謝る。


「危機感が足りないと思います。ショーコさんが幸運じゃなかったら死んじゃってもおかしくなかったですよ!それに、今も男の部屋に上がりこんでいますよね?」


アレス君が立ち上がって私の前まで歩いてきた。いつもと違って私に睨むような視線を送っている。


「は、はい。確かにここはアレス君の部屋ですよね。それが何か?」


だけど最後の一言はどういうことなのだろう?私がこの部屋に来ちゃ駄目だったのだろうか?でも隣にいるって言ってたはず。そう考えているとアレス君が頭を抱えてため息を吐いた。同時に、部屋の片隅に私についてきたモーリスが『主、それは…』言いと苦虫を嚙み潰したような顔をしていた。つーはただぷかぷか浮いてる。…もしかして私が悪いの?


「ショーコさん、俺が悪い人だったら酷い目にあってましたよ?」


アレス君は椅子に戻らずに私の横、同じベッドの上に座った。その視線は、いつも私に向ける視線に戻っていた。


「それは、アレス君もですよね?私が悪い人間でしたら、酷いことになってたかもしれませんよ?」


「人を見る目はあります。ショーコさんはいい人です。」


私が逆に聞いてみたら、彼はすぐに否定してきた。だけど、私は決して善人じゃない。少なくともこの国では許さない存在だ。


「私は、貴方が思うような人間じゃありません。」


気が付いたら、そう言葉を口にしていた。何故言ったのかは分からないが、誤魔化してはいけないと思った。彼は私とは違って、善人なのだから。そう思っていたら、アレス君が真剣な顔をして私に近づいた。


「…だとしても、俺は、貴方を放っておけません。ショーコさん、俺が一緒に付いていくと言ったら、どうしますか?」


「アレス君は家族が村にいますよね?勝手に私なんかについていっちゃ駄目ですよ。気持ちだけ、受け取っておきます。」


「…」


アレス君がは黙った。私がそう答えると思っていたのだろう。確かに彼が付いて来てくれれば、私の旅は楽にはなる。だけど彼は善人で、私が死霊術師だという事を知らない。だから私は、アレス君を私に巻き込ませては駄目だと思った。


「優しいんですね、アレス君は。だからこそ、貴方を巻き込むことはできません。最後にこうやって話せてよかったです。」


「最後って…」


『モーリス、取り付け』


言い終わる前に、モーリスに命令する。後ろから憑りつかれたアレス君は、ビクッと体を震わして、ベッドの上に倒れこむ。モーリスが意識を奪ったようだ。


『決めました、あの悪霊を倒します。そうしたらそのままこの町を出ます。彼を巻き込みたくはありませんから。』


悪霊を無視すれば、アレス君にも被害が及ぶかもしれない。それは嫌だ。そして、ここで私がいなくなれば、彼に私の正体を知られずに済む。


『御意。』

『!!』


モーリスが言葉で、つーが首を縦に振って私に賛同する。アレス君を部屋に残したまま、私は自分の荷物を纏め、宿の中では外してたローブを被りなおす。そのまま私は繰り出た宿の外に出て、雨が降り注ぐサルヴィラの町を歩きだした。


主人公は子供の頃から死霊術を学んでいたせいで、恋愛経験が全くありません。よって男性の部屋に上がりこむ事の意味も一切分かりません。

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