罪悪感
「その、ガルドさんはアレス君と知り合いなんですか?」
「ん?知り合いっつーか、兄貴分だな。俺もあいつと同じ村の出身なんだよ。」
なるほど、この人もあの麓の村の生まれだったのか。
「ところで嬢ちゃん、確かショーコって名前だったよな。俺としてはあんたとアレスがどういう関係か知りたいね。」
とニヤニヤしながら訪ねてきた。誤魔化す理由もないので、旅の途中に遭難して村にたどり着き、一晩泊めてくれる代わりに熱を出して寝込んだアレス君の妹に薬を作ってあげたら、この町までの護衛を引き受けてくれたことを告げた。遭難の部分は嘘だが死霊術師なのがバレて王都から逃げ出したなんて言えない。しかし言い終えた後に、ガルドさんはくくく、と笑い出した。何か、まずい事でも言ってしまったか?
「いや、随分豪快な迷い方してるな。この町に向かってたってことは王都から来たんだろ?なのにあの村に着いたってことは山を突っ切ってるじゃねえか。」
「え、ええ…」
「山はイビルベアの縄張りだ。並の腕利きなら五人がかりで挑んでやっと勝機が見える化け物、出くわしたら嬢ちゃんなんて丸吞みさ。あんたよっぽど運がいいんだな。」
「…そうですか。」
モーリスも似たようなことを言ってたのを思い出した。兵士と同じようにあっさり支配出来たから私の中では強い印象はない、使役霊が居ればの話だが。そもそも私一人だと魔物じゃない普通のクマにも勝てない。これ以上この話を続けるといつ嘘を見破られても可笑しくない、話を変えないと。
「ところで、王都への依頼がダメって言ってましたけど、何かあったんですか?」
私の魔導書を奪って直ぐに逃げたので、その後どうなったのかは分からない。追手は来ると思うので出来れば王都が今どうなっているのか知りたいが、問題があるそうだ。ならせめてその問題が知りたい。
「あー、そのことなんだがな、見ての通りここは鳥文屋だ。カラスを使って町や村に手紙を運ぶ仕事だが、まあ知ってるだろ?」
「その、今まで入ったことが無かったので、知りませんでした。」
「お、初めてだったか。じゃあ、あいつ等を見てビックリしたか?」
「はい…ちょっと不気味でした。」
「ま、皆初めはそう言うんだ。だがこいつ等は飼えば懐くし頭もいい。お願いすればちゃんと手紙を届けて戻ってくる。しかも真っ黒だから見えやすい。だから手紙はカラスで飛ばすのさ。」
カラスは頭がいいのは姫乃ちゃんからも聞いたことがある。しかし手紙を運ばせるのは聞いたことが無い。魔力や魔物にも、この世界と元居た世界は違いが大きい。
「あんまり色んな場所を覚えさせるのは良くないから、基本一羽に一か所届ける場所を覚えさせるんだ。王都で勇者が召喚されると聞いたもんで依頼が多くてさ、王都へ飛べる二羽を飛ばしていたんだが、そいつ等が戻ってきてないのさ。」
「…」
「なんかあったんだと思うが、流石にここじゃ分からん。だからあいつ等が返ってくるか、別のやつに場所を覚えさせるまでは王都への依頼が出来ねえのさ。一応聞くが嬢ちゃん、何があったか分かるか?」
「…その…ごめんなさい…」
「いや、悪かったな変なこと聞いて。そりゃ分かるわけねえか。」
ガルドさんは私の謝罪を「知らなくてごめんなさい。」と受け取ったのだろうが、真相は「私のせいでごめんなさい。」だ。魔導書を取り戻す為の本命として、私は二羽のカラスを使った。そう、二羽のカラスだ。どこにでもいる鳥、ゾンビにしても問題ないと当時の私は思った。でもここでカラスが帰ってこないって事は…
知らなかったの!カラスにそんな役目があったなんて!




