道程:続き
筋肉痛に苛まれながらも、村から村へ、町までの旅は続く。
ただし村から村への距離はそう遠くない。麓の村が特別に遠いだけで、本来村から村までは半日もあれば到達できるらしい。その気になれば途中による村の数を減らして進むことも出来るみたいだ。何故そう出来なかったとアレス君に聞いたら理由は単純、
お金が無いからだ。
麓の村は町から遠すぎて、商人が来ないらしい。つまり買い売りする機会が村にはなく、必然的にお金の存在が不要になっている。宿が無かったのも、誰かがここまで訪れる事が殆どなかったからしい。麓の村が貧しそうに見えたのは、全てが自給自足で、見栄えが二の次みたいな環境だからだった。実際の所、家の中の作りはしっかりしてたし、見た目よりかは良い場所だった。
ただしほかの村には、きちんと通貨が使われている。それは買い物が出来るということだが、逆に言えばお金がなければならないという事。アレス君はお金を持っていないし、私も兵士から奪ったお金は底を尽きている。じゃあどうするのかと聞いたら
「ホーンラビットの毛皮と角を売ります。そこそこ価値があるので、一晩なら泊まれます。」
と言ってた。ホーンラビットは様々な場所に生息していて、危険度も低いし人懐っこいのでとても狩りやすい。だが一応魔物なので魔力を多めに宿しているので村で一泊する分なら足りるらしい。毛皮は普通の獣の物より丈夫で、角は安価な武器の材料になるのだと。ただこの先何度も村に泊まるし、町だと宿も高いので一匹二匹では足りないとの事。
つまり、もっと稼がないといけないのだ。別の村に向かう最中も、アレス君は近くの森に入って狩りの準備をする。荷物を降ろして、矢の予備を取り出す彼に一度「またホーンラビットを狩るんですか?」と聞いたら
「ホーンラビットは狩りやすいですが、仲間がやられて危険だと理解すればと流石に逃げます。一度逃げ出すと、俺では追えないので、ほかの獣も狩りますよ。」
と彼は返した。最低でも一匹は狩られるホーンラビット。肉は美味しくて、毛皮も角も売れる、どこにでもいて、オマケにあちらから寄ってきて仲間が狩られるまで逃げない。狩人にとっては美味しい獲物なのだろう。つーを見て、この世界中で毎日狩られ続けていることを思うと…
ホーンラビット達に、憐憫を抱かずにはいられなかった。つーはちゃんと愛でてあげよう、撫でる振りをして喜ぶつーを見て密かに決意した。
アレス君が狩りをする時は、私は置いてけぼりになる。そんな時は、タニアさんから貰った調合の本を開く。ただ読むだけじゃなく、本に書かれてある薬草の特徴を見て薬草を集めたりして、薬師の振りをする為の材料を集めている。アレス君は毎回「俺が戻ってくるまで、ここにいてください。絶対ですよ?」と言っているが、無視してちょっとだけ離れて薬草を探す。
そうして薬草を探す最中、何度か森に棲む魔物と遭遇してしまう。ホーンラビットも見かけるが、他に1m程の大きさのミミズや、緑色の肌をした人型のような魔物もいる。ホーンラビットと違って、他の魔物は私を見るなり敵意をもって襲いかかってくる。
だが私は無力な女の子じゃない、戦う術を持つ死霊術師だ。モーリスに憑依させて身動きを取れなくさせてから、つーを宿したナイフを飛ばして止めを刺す。人はともかく魔物、それも此方を襲ってくるなら容赦はしない。何度か襲われるが、全て返り討ちにする。たとえ群れて掛かってきても、憑依させた魔物で同士討ちさせれば苦もなく終わる。
アレス君が戻ってくるまでに薬草探しを程々にして、元の待機場所に戻る。モーリスを上空に浮遊させ探索すれば場所を見失うことも魔物に奇襲されることもない。戻る頃には、そこそこの量の薬草が手に入った。彼が荷物を置いた場所にいると、魔物は現れない。モーリスから見ると、荷物の周辺に魔物がくると避けて迂回していると教えてくれた。多分、アレス君が私と置いて行ってる荷物の中に、魔物を除けさせる何かが入っているのだと思う。
アレス君は、狩った獲物を解体してから戻ってくる。成果はホーンラビットのほかに日によって鳥や猪、シカだったりと色々。毛皮や羽から魔力をあまり感じないので、ホーンラビット以外は魔物じゃなくて普通の動物のようだ。私が探しても魔物じゃない動物は見つからなかったので、実際に言うと勝手に動き回ったとバレてしまうので流石は狩人、と心の中でアレス君を褒めた。
また森を出て、次の村に向かう。
道程は次が最後です。緑色の肌の人型はゴブリンですが、ファンタジー作品を読まない死霊術師には分かりません。




