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道程:始まり

次の目的地である街までの道程は険しい…なんて事はなかった。


私は最初、街までの一週間はずっと野宿で過ごすのかと思ったが、野宿をしたのは最初の一日だけだった。何故ならそれ以降は別の村で宿をとって夜を越したからだ。アレス君曰く、サルヴィラの街へ真っ直ぐ向かうと凶悪な魔物や山賊の住処などがあって危険なので、他の村をに回り道しながら進むのだと。距離は遠くなるが、真っ直ぐ進むより遥かに安全とも言っていた。


考えてみたら納得した。別にあの麓の村が唯一の村の訳がない。村は他の場所にもあるし、街までの距離が遠ければその間に別の村がある事もある。だったらそのまま無理して街へ向かうより、間の村へ寄り道しながらの方が理に叶っている。息を止めて一度で泳ぎ切るより、何度も息継ぎしながら泳ぐのと同じ理屈だ。


同時に、タニアさんが三日で街から村まで行ける理由も分かった。あの人は急ぐ時にその危険な真っ直ぐの道を突っ切って進むのだ。恐らくそうやって真っ直ぐ進む事を「走って行く」と表したんだ。あの人並外れた腕力があるなら、多少の危険はどうにでもなるのだろう。少なくとも人が馬並みの速度で走り続けるよりかはずっと理解出来る。


初日の野宿は、単に出発した時間が遅かったからだ。日が暮れ出し、アレス君が日没までに村にはたどり着かないと判断、その場で一日を過ごすことになった。その後の彼の手際は見事な物だった。かき集めた枯れ枝で焚き火を作り、私にその場に待っててと言って弓と矢を持って離れた。しばらくして、何かを肩に背負って戻ってきた。近くでホーンラビットを狩ってそうだが、私が見たのはすでに解体されてあるお肉だった。そのまま調理し始め、日が沈むまでには、二人分のうさぎのスープの出来上がり。


素朴ながら美味しくて、すごいですねと褒めたら狩人の職業があるから当然だと言ってた。もしかしたら鑑定石に出てくる職業は、その分野に関して何らかの補助があるのかもしれない。食べ終わったら、そのまま仮眠と見張りを交代しながら夜を過ごしたが、一人での野宿よりずっと快適だった。村の中ではちょっと頼りなさそうだったが、その印象は私の中では覆った。もっとも一人旅なら死霊術を気にせず使えたのだが。


日が昇って、移動を再開した。とはいえ、本来なら朝に麓の村を出ればその日の内ににたどり着く距離だったらしく、太陽が真上に登る前に村にたどり着いた。この日ははここで宿を取ったので、これ以上は進まなかったが、それでも体に疲れが溜まっていたのかいつの間にか宿の部屋で熟睡し、気がついたらすでに夕暮れだった。


起き上がって部屋を出ると、踊り場にアレス君がいて、私に挨拶をしてきた。


「目が覚めたんですね、ショーコさん。具合はどうですか?」


「…体が、痛いです…」


アレス君は何かを察したような目で筋肉痛に苛まれる私を見て苦笑いした。


想定よりも楽な旅路のはずだが、それでも私には結構大変だと身を以て理解した。

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